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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第四章 幻の都編
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第六十五羽. 流れゆく休息の刻


 「まだ、誰も戻ってきていないか。」


 蹄の塔(ホプレー)の攻略を終え、ハノイの塔正面に戻って来たセリア達を出迎えるものは、誰もいなかった。


 「何処の塔も同じ状況なら、セリアちゃんより早く戻ってくるのは不可能だよ。まぁ、あるとすればメルちゃんぐらいだろうね。」


 セリアが双子を降ろす姿を眺めながら答えるエルヴィン。


 「セリアさん、ところでメルさんもなんですけど、他のメンバーの方もどのくらい強いんですか。」


 「どのくらい、と言われても・・・多分、そんなかわからないと思うけど。」


 「そうなんですかぁ。」


 セリアの答えに頷いたミーアだが、内心では絶対に嘘だ、と強く思っていた。他のメンバーの戦闘は最初の頃に遠目で見ただけだったが、セリアの戦闘を目の当たりした今では何となくそう思えた。


 「それにしても、この双子ちゃん、ほんとよく寝てますね。」


 「起きるまでゆっくり寝かせておこう。」


 双子の頬を飽きずに突っつくミーアにエルヴィンがあまり構わないように注意する。


 「それにしても、誰も戻ってきませんね。ボス、次は誰が戻って来るとおもいますか。」


 「そぉだね。さっきも言ったけど、メルちゃんだと思うなぁ。」


 「何でですか。」


 「理由は幾つかあるけど、まずはセリアちゃんを抜かせば範囲殲滅が一番得意だということ。もう一つは、セリアちゃんと違って、戦闘を楽しむタイプではないから。すぐに終わらせると思うんだよねぇ。」


 「妾の事をそんなに理解しているとは・・・流石なのじゃっ。」


 その声にエルヴィンとミーアが振り向くと、そこにはメルディナを先頭にチーム・(ブラボー)がちょうど戻って来たところだった。


 「ボス、流石ですねっ。」


 「まぁねっ、伊達にユークリッド機関のトップは張ってないからねぇ。」


 「そなた達がいるという事は、セリアの方が先か。妾の方が早いと思っていたのじゃがなぁ。」


 「セリアさんなら向こうにいますよ。」


 ミーアがセリアのいる方を指さした時、ちょうどアヤメとアルジェントが帰還を果たす。


 「たっだいまぁっ。流石に一番乗りでは無かったか。」


 エルヴィンとミーアを視界に収めたアルジェントは丁寧にお辞儀をする。


 「皆様、お疲れ様です。おふたりがいらっしゃる、という事は既にセリア様は。」


 「はい、私達が一番最初にでした。」


 「そうですか。流石はセリア様です。」


 「なんだっ。俺達が最後かっ。」


 「ヴェイン達も魔物の群れに襲われた?」


 「あぁ、そうだが・・・それがどうかしたか。」


 「その割には帰ってくるのがはやいな、と思ってさっ。」


 「俺達もそれぐらいは出来るって事だ。どうやったかは秘密だがな。」


 「いいじゃん、それぐらい。」


 「機会があればな。」


 そんな雑談を交わしながらアルジェント達はミーアの案内でセリアの下に向かう。


 「セリアさん、皆さんが戻りましたよ。」


 「おかえりっ。全員無事なようなだな。」


 全員の視線は迎え入れたセリアではなく、その横でスヤスヤと寝ているふたりの子供に注がれる。


 「セリアねぇ、この子達は・・・。」


 「あぁ、この子達は・・・。」


 セリアはこの双子に出合った経緯をみんなに向かって話し始めた。


 「なるほどのぉ。それにしてもこのほっぺはとても気持ちいいのじゃ。」


 そう言いながら、メルディナは双子の頬を交互に突っついていた。そんなメルディナの横に座ってミーアも双子を突っつき始める。


 「メルちゃんも分かりますかっ、このほっぺの良さがぁ。」


 「おぉ、ミーアも分かるか。これは至高なのじゃっ。」


 「その辺にしないと、目を覚まして、泣かれるぞっ。」


 「何を行っておる。この可愛いさ100%で出来ている妾を見て泣くはずないのじゃ。そう言えば、セリアよ、この双子の名前は何て言うのじゃ。」


 「鑑定で表示されていないからな。」


 「無いという事か。」


 「おそらくは・・・。」


 「セリアねぇ、双子が目を覚ましたよ。」


 散らばっていた人員が全員揃った事で賑わいを見せているこの状況が、双子にとってとても騒がしかったのか目を覚ました。見知らぬ顔に囲まれ怖くてなったのかその場で泣き出し、辺りをきょろきょろと見渡し始める。


 「・・・どこ、ママ?」


 目当ての人物がすぐに見つからず、さらに泣き始める双子。まさか泣かれるとは思っていなかったメルディナは落ち込みはじめ、その他もあたふたし始める。


 そんな中、双子は目的の人物をようやく見つける。


 「ママぁぁ。」


 ふたりはセリアに駆け寄ると、足にしがみ付き顔をうずめる双子。


 双子の”ママ”という言葉にここにおる誰もが仰天し、アルジェントに至っては普段の冷静さが皆無になっていた。


 「セリア様に子供が・・・、ま、まさか・・・そ、そんなぁ・・・。」


 虚ろな目をしたアルジェントが何かを呟きながら、膝から崩れ落ちる。そんなアルジェントの様子に目元を押さえ溜息をつくセリア。


 「アル、今話した通り、この子達は地下で保護しただけだ。」


 「ですが・・・ママと・・・。」


 「何でそう呼ぶのかは、分からないが。」


 「ぷっぁっあははっ、ミーアちゃんみたいな子がほかにいるなんてっ。」


 崩れ落ちているアルジェントの様子を見て笑い出すエルヴィン。


 「何が可笑しいのですか、エルヴィン様っ」


 「だってさ、よく考えればわかる事でしょ。セリアちゃんの事となると我を忘れる人が多いなと思ってね。ミーアちゃんの場合は天然なだけだけどね。」


 目の前で繰り広げられているカオスな状況を双子はセリアの後ろに隠れてじいっと眺めていた。


 「ここにいる人達はみんないい人だから、安心していいよ。」


 優しく声をかけるセリアの顔を見上げる双子は落ち着きを取り戻したが、それでも大勢の人に慣れていないためか、セリアにしがみついて離れようとしなかった。


 「こんにちは、僕の名前はアヤメっていうんだ。仲良くしよっ。」


 アヤメは双子に近づくとしゃがみ込み、視線を双子に合わせて話しかけ、手を差し出す。双子はアヤメの顔をじっと見つめると、次にセリアに顔を向ける。セリアが双子に頷くと、双子の顔がパッと明るくなり、笑顔でアヤメの手を取る。


 「ねぇ、名前はなんていうのかな?」


 「なまえ・・・?」


 ふたりは不思議そうな顔をしながら言葉を返す。


 「そう、ふたりの名前、お姉ちゃんの名前は、アヤメ。」


 「・・・?」


 アヤメの言っている事は分かるようで、それでも首を傾げる双子。


 「今までなんて呼ばれてきたの?」


 アヤメの質問にそろって首を横に振る双子。


 ーーー鑑定の通り、名前がないのか・・・。


 「それじゃ、私からの贈り物だ。ふたりに名前をつけようっ。」


 セリアもしゃがみ、双子の目を真直ぐに見る。


 「それじゃ、今日から君はリュカだ。」


 男の子を見ながら名前を告げた。


 「そして、君はフレイアだ。」


 次に女の子を見ながら名前を告げたセリア。


 「リュカ・・・。」


 「フレイア・・・。」


 「そうだ。それが今日からふたりの名前だ。」


 恥ずかしそうに自分の名を呟くふたりを抱きしめながら答えるセリア。


 「そして、私の名前はセリア。」


 「セ、リ、ア・・・。」


 「そう、セリアだ。」


 「ママ、じゃないの・・・。」


 「名前で呼んで欲しいな。」


 「ママが・・・いい。ママがいいっ。」


 そう言ってリュカとフレイアはセリアの胸に飛び込む。


 ーーーやっぱり、だめだったか・・・。


 ”ママ”呼びをどうにか止めさせようと試みたセリアだったが、敢え無く失敗した。


 「僕も、ママって呼ぼうかなぁ。」


 「ママって呼んでいいのは、僕たちのだけっ。」


 「私とリュカだけっ」


 リュカとフレイアの抗議の奥で、セリアと目が合うアヤメ。


 「ぼ、僕は今まで通り、セリアねぇって呼ぶよ・・・。」


 グ、グゥゥ


 その時、小さく音が鳴る。


 セリアがふたりを見ると。リュカとフレイアが顔を赤くして俯いていた。


 「お腹すいたか。」


 「・・・うん。」


 セリアの言葉に小さく頷いたリュカとフレイ。


 「じゃ、ご飯にしようか。出来るまでアヤメと遊んできな。」


 「リュカ、フレイヤ行こっ。」


 「セリアさん、手伝いますよ。」


 「ミーアちゃん、セリアちゃんの邪魔をしないようにね。僕は双子と遊んでくるからっ。」


 「邪魔なんてしませんっ。」


 「私もお手伝いします。セリア様。」


 状況を把握して立ち直ったアルジェントも手伝いを申し出る。



 ◇◇◇◇◇◇


 出来上がった料理がテーブルの上へと並ぶ。


 きつね色のパン粉を身に纏ったお肉に野菜とパンが重なり合い、お腹を鳴らすのに十分な匂いが自分達の目の前に並ぶ料理から漂う。


 「うっまぁっ。」


 各テーブルから感嘆の声があがる。今まで料理はそれぞれで用意していた事もあり、エルヴィンを含めユークリッド機関や獅子の心臓(ライオンズハート)、そしてノブツナもセリアの料理を口にするのは初めてとなる。


 「これは本当に美味しいな。これを知ったらもう自分達が持ち込んだ料理が食べられないな。」


 エルヴィンは真剣な顔で感想を漏らすと、またかぶりつく。


 「それにしても、セリアちゃんって何やらせても凄いね。不得意なものってあるの?」


 スープをすくいながらふっと浮かんだ疑問をそのまま口に出す。


 「さぁ、どおかな。今のところは出合ってないが。」


 「天は二物も三物もセリアちゃんに与えたわけか・・・これで音痴だったり裁縫下手とかだったらちょっとホッとしたのに。」


 「音痴かどうかは分かりませんが、セリア様は裁縫も得意です。なにせ服を作って頂いたことがあります。」


 「そう言えば・・・そんな事もあったな。」


 隣でヴェインが懐かしむような顔でアルジェントの言葉に同意する。


 「セリアちゃん、今や、子育てまでこなしてるしね。」


 ふたりの口の周りについたソースを拭っているセリアを見ながら揶揄うエルヴィン。


 「ママッ、とっても美味しいかったよっ。」


 「それはよかったっ。」


 「そぉだ、しばらく、アヤメと遊んでおいでっ。」


 「うん、わかったっ。」


 元気よく返事をすると椅子から降り、アヤメの手を取るリュカとフレイア。遠ざかるふたりの背中を見てるセリアに向かってメルディナが呟く。


 「そうしていると、本当の親子にしか見えんのじゃ。名を与え、連れ帰って、その後どうするのじゃ。」


 「どうする・・・とは。」


 「セリア、自分でも分かっておろぉ。こんな怪しげな空間にいた子供を連れ帰ったところで、ギルドや研究施設が、はいそうでか、と頷くと思うのか。ギルドは魔物の類と言い出しかねんのじゃ。ユークリッド機関というかターレスは何も手を出してこないと思うが、その他はそうとは限らんっ。人間とは自分達の理外にある物には極端に排他的になる。連れて帰ったところで二人が幸せに暮らせるかは分からんのじゃ。隠したとしても、人の口に戸は立てられん。何時かは知られるのじゃ。」


 「メル、その話は後にしよう。まずはここを出る事が最優先だ。この事は正式にギルドの答えが出てから考える。」


 「わかったのじゃ。ひとつ言っておくと、おぬしがどんな選択をしても責めはせんのじゃ。妾達、庭園(ガーデン)は常におぬしと一緒にある。」


 「ありがとうっ。」


 セリアはふっと笑い立ち上がると席を離れた。メルディナはそんなセリアの背中をじっと見つめていた。



 ◇◇◇◇◇◇


 休息を終えたセリア達は四本の塔を攻略するときと同様にハノイの塔正面に集まっていた。


 「リアンくん、僕には変わったようには見えないけど、どうやって入るんだい。」


 「確かに何も変わっていません。ハノイの塔へはここからは入れませんから。」


 「それじゃ、なんのために四本の塔を僕達に攻略させたんだい。」


 「まぁ、待って下さい。順番に説明しますから。ハノイの塔を攻略する上で四本の塔を先に攻略することが大事なのは確かです。それにハノイの塔の入り口はこの塔にはもともと存在しません。」


 「えっ、それじゃ・・・いったいどこに?」


 エルヴィンに質問を受けてリアンを下を指さす。リアンが指さす方を一斉に見る。リアンが指さす先には別空間に広がるシャングリの姿である。


 「まさか・・・。」


 「えぇ、そのまさかです。蹄の塔(ホプレー)翼の塔(プテリュクス)甲羅の塔(キュノドゥー)牙の塔(ケリュポス)の四本の塔を攻略する事で解放されるのは、ハノイの塔への入口ではなく、別区間への入り口です。」


 「テュラノスがいるのは、この塔なんだよね。別区間のハノイの塔からどおやって行くんだい。」


 「別空間のハノイの塔をシャドウ・ハノイと呼ぶらしいのですが、このシャドウ・ハノイに本来のハノイの塔へと繋がる道があるそおです。」


 「それで、そのシャドウ・ハノイには全員で行くのかな。」


 「非戦闘は今回ここにのこった方がよいと思っています。残されている記録や記憶に正確な情報がないのですが、どうやら試練という名の防御機構があるそうです。なので、数人で突入することが望ましいと思っています。」


 その後の話し合いでシャドウ・ハノイへの突入は庭園(ガーデン)とエルヴィンに決まり、ノブツナと獅子の心臓(ライオンズハート)は研究員達の護衛という事で落ち着いた。


 「それでは、シャドウ・ハノイへの道を開きます。」


 リアンが操作すると、ハノイの塔の正面に空間を切り裂き黒い穴が開く。


 「ここを通るとシャドウ・ハノイの正面へと移動します。そうしたら裏に回ってください。そこに・・・入り口があります。」


 リアンの説明に全員が頷くのを確認したセリアが先頭を切って発生した穴に入ろうとしたその時、幼く甲高い声が響く。


 「ママ、僕も行くぅっ!」


 「ママ、私も行くぅっ!」


 リュカとフレイアが駆け出し、セリアにしがみつく。休憩中にノブツナや獅子の心臓(ライオンズハート)とも楽しく遊んでいたので大丈夫だろう、とそう思っていた。大人しく待つ事にも頷いていた。


 「おいていっちゃ、いやだぁ。」


 リュカとフレイアの様子に困って頭を掻いていると、エルヴィンが双子に話しかける。


 「そんなに、セリアちゃんと一緒に行きたいのかな。とても危険で怖い場所だよ。」


 「それでも、行くっ。」


 リュカとフレイアは真剣な眼差しをエルヴィンに向けて声を揃えて返した。


 「そっか、じゃぁ、僕がセリアちゃんを説得するよ。」


 「ほんとうっ!」


 「あぁ、本当さ。僕に任せなさいっ。」


 「と、いう事でセリアちゃんどうだろうか。」


 「どうだろうかって、全然説得になってませんよ。」


 「それに、こんだけのメンツがいるんだ。従魔もいる事だし、きっと大丈夫だよ。もしかして守り切る自信がないのかなぁ、セリアちゃんは・・・。」


 「はぁぁ、仕方がない・・・。」


 「よかったね。ママの許可がおりたよっ」


 ”ママ”という言葉に反応してエルヴィンを睨むが、当の本人はどこ吹く風といった顔をしてる。


 「エルヴィン、ありがとうっ!」


 リュカとフレイアはエルヴィンに頭をさげると、嬉しさでセリアの周りを飛び跳ねる。


 「どういたしまして。」


 双子に答えたエルヴィンは、そんなリュカとフレイアを眺めているセリアに話しかける。


 「内心は置いて行くのが、心配だったんじゃないの。セリアちゃん。」


 「・・・・・・」


 「まぁ、緊張感は無くなったけど・・・いいムードだと僕は、思うよ。」


 「テトラ、イロハ、ラクス」


 セリアが名前を呼ぶと三匹の従魔が出現する。


 「これからの戦闘では、私の支援はしなくていい。最優先でリュカとフレイアを守ってくれっ」


 三匹の従魔は双子にも分かるように頷くとリュカとフレイアの傍に寄り添う。イロハは身体も大きいため、双子をイロハの背中に乗せて移動することになった。最初こそ怖がっていたが、数分動き回ると面白いのかリュカとフレイアはイロハの上ではしゃぎだす。


 「まるで遠足だなっ。」


 「セリア様、それで良いではないですか。みんさんもリュカ様とフレイア様を好きなご様子ですから。」


 「みんな、もうそろそろ行くぞ。」


 セリアの声に次々と黒く広がる穴に足を踏み入れていく。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。


【読者の皆様へのお願い】

作品を読み、少しでも「面白い」、「先が読みたいと」と感じた方は、ブックマークと評価をお願いします。

気合を入れて妄想に妄想を重ねて執筆する原動力になります。厨二病感満載の詠唱も考えて行きます。

改めてお願いします。

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