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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第四章 幻の都編
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第六十四羽. 牙王ガルザヴァルグ


 Side:ヴェイン


 「・・・さぁて、これは、困ったな・・・。」


 テュラノスの演説が終了した直後、ヴェイン達の周囲を魔物の群れが取り囲む。


 「なぁ、ランスロットさんっ。」


 「ヴェイン殿、何度も言っているが、我に敬称は不要だ。それでこの状況下でなんですかな。」


 「いや、この魔物の群れを何とか出来るかな、と。」


 「出来なくはないが、広範囲を攻撃出来るような技を持ち合わせていない。時間がかかる可能性があるな。ヴェイン殿はどうなのだ。」


 「まぁ、基本的に、俺も似たようなもんかなぁ。だが、無くは無い。ところで、リアンさんはどうなんだいっ。」


 「私も以前は冒険者であったが、Bランク止まりだよ。流石に足手まといにしからない。仮にAランク冒険者だったとしても状況は変わらないだろうね。」


 ヴェインの視線が自分の方へと向くのを確認したジェロラモが自分もリアンと同等だと告げる。


 「聞かれる前に言いますが、私も冒険者ランクでいえばBランク相当です。足手まといにしかならいないでしょう。」


 「なるほど・・・。」


 ーーーやれやれ、俺が何とかするしかないわけか・・・。


 ヴェインは今まで持っていた短剣をストレージにしまうと、新たに刀身が光を吸うように沈む黒色をした二振りの短刀を取り出す。


 銘を宵闇。始原の迷宮プライモーディアル・ラビリンスの最下層でマリーチから譲り受けたこの短刀は二振りで一対。一見同じ様に見えるこの二振りの短刀は、描かれている刃文に差異がある。


 左手に持つ短刀には淡くたゆたう霞のような線状の波紋が流れるように描かれている。刃文の名を幽霞流紋(ゆうかりゅうもん)。そして右手は黒銀色の螺旋状の渦が連なって描かれている。刃文の名を静穢渦紋(せいえいかもん)。この静穢渦紋(せいえいかもん)は一見すると肉眼では刃文がないように見えるが、光の角度や魔力干渉により浮き上がるような仕掛けが施されている。


 刃文には明かに違いがあるが、”一見同じ様に見える”のには理由がある。この違いは持ち主しか分からない。そのはずであるが、何故かセリアの目にはその違いがはっきりと分かるらしい。以前ヴェインが宵闇を庭園(ガーデン)のみなに見せた際、刃紋の違いが分からなかった。そもそも刃紋なんて見えない、という声が口々にあがる中、セリアだけが正確に違いを見分けた。


 そして宵闇の最大の特徴は欺くである。嘗ての持ち主であるマリーチがそうであった様に、この二振りの短刀を持つ者は神々ですら欺く事が出来る。それは見えないでは無く、目の前にいても認識すら出来ない。


 斥候よりの能力を有しているヴェインにとってはとても有益な能力である。


 「ランスロットさん、後の事は頼みますっ。」


 そう言い残しヴェインが宵闇を構えると、ヴェインの姿がふっと消える。その瞬間、ヴェインの残像が魔物の群れの中に次々と出現する。そして残像を中心に半径20メートルほどの黒いドーム状の何かが出現する。黒いドームが消えた後には魔物の姿が跡形もなく消え失せる。


 断影連葬陣ファントム・セヴァー・ネクサス。それが今、ヴェインが使用した技。


 ヴェインには二つの範囲技がある。ひとつは、幻影奇襲ファントム・ブリッツ。これは残像を複数展開し、その残像を紡ぐように敵を殲滅していく。そしてもう一つが絶影断葬テネブレイ・セヴァランス。これはヴェインを中心に半径20メートルの黒いドーム状の空間を作り出す。空間に隔離されてた存在は影により消滅していく。


 この二つの技を組み合わせ、幻影奇襲ファントム・ブリッツで展開した残像地点で絶影断葬テネブレイ・セヴァランスを発動することで、広範囲の敵を一瞬にして殲滅する。


 それが、断影連葬陣ファントム・セヴァー・ネクサスの効果である。


 再びヴェインがランスロット達の前に姿を見せた時には、取り囲むように存在した魔物の群れが綺麗に消えていた。


 「凄まじい技だな。」


 ランスロットが言葉と共にヴェインを出迎える。


 「なぁに、大したことじゃない。範囲殲滅なら、メルディナや嬢ちゃんの方が得意だしな。嬢ちゃんに至っては恐ろしい事に近距離、遠距離なんでもありだからなぁ。」


 「ヴェインさん、セリアさんはどうなんですか。」


 リアンのその質問にヴェインは若干呆れたような顔をして答える。


 「あぁ、まぁ、一言で言うなら・・・何でもあり、だな。」


 「何でも、あり、ですか・・・。」


 「そうだなぁ・・・リアンさん。フレイムバレットって知ってるよな。」


 「えぇ、火の弾を出す単体攻撃魔法ですよね。」


 「そうそう、セリアはその魔法を使っても広範囲を殲滅できる。」


 「それって・・・」


 「まぁ、あまり深く考えなさんな。人知を超えた存在だとでも思っておけばいいさ。」


 少し肩を竦めながら答えるヴェイン。


 「は、はぁ・・・。」


 「さぁて、次がおいでなさったかっ。」


 何処からともなく、再び魔物の群れ周囲を取り囲む。ただ数自体は先程と比べると少なくなっている。逆に一体一体の魔物の強さが上っていた。


 「それじゃ、行ってきますか。」


 ”ちょっとそこまで出て来る”、そんな口調でヴェインが一歩前に出ると、その姿が消える。そして先程と同様に魔物の群れはエーテルへと還って行く。


 それを何度繰り返したのか、2体の魔物がヴェイン目掛けて襲い来る。


 「ヴェイン殿、働きの場を頂きたい。」


 「あぁ、そうだな、任せたっ。」


 振り上げられたランスロットの大剣はあっという間に一体の魔物を両断する。そのまま横に薙ぎ払った大剣は何の抵抗を感じさせないままもう一体の魔物を切り伏せる。


 しばらく魔物の出現を警戒していたが、現れる様子が無く警戒を解いたその時、異様な感覚がヴェイン達を襲う。


 濁った黒褐色をしたエーテルの塊がヴェイン達の眼の前に出現する。その妖しくも濃密なエーテルにヴェインとランスロットの警戒感が強くなると、それは揺れ動き塔の中へとその姿を消す。


 「まるで誘っているようだな。」


 「ヴェイン殿っ。」


 「まぁ、行くしかないだろうな。セリアから各自の判断て、とも言われてるしな。」


 「申し訳ないが、私達はここに残っている。」


 リアンが後ろに目を向けると、そこには腰が抜けて立ち上がれな研究員の姿があった。


 「わかった。まぁ、この様子だとここに残っても心配なさそうだしな。」


 少しの休憩を挟み、ヴェインとランスロットは塔の中へと突入した。



 ◇◇◇◇◇◇


 塔の四階。


 ヴェイン達が扉を開け、その奥へと足を踏み入れる。中心には濁った黒褐色をしたエーテルの塊が妖しく輝きを放っていた。


 ヴェイン達がエーテルの塊に近づくと背後の扉が静かに閉じ始める。扉が完全に閉じるとエーテルの塊を囲む様に魔法陣が浮き上がる。


 辺り一帯の空気が重くなり、エーテルの塊は巨大な心臓のように脈打ち始める。


 獣のような熱と鉄を焦がすしたような臭気が漂い出すと、雷のような火花を時折放ち、鼓動は激しさを増していく。脈打つたびに塔内にみちるエーテルアがざわめき、壁が、床が、天井が、共鳴する。


 「・・・どう考えても、まずい状況だなっ。」


 ヴェインがエーテルの塊から吹き出る圧力に一歩だけ後退し、ランスロットが大剣を構える。


 その瞬間、破裂する。


 エーテルの塊が内側から破れ漆黒の粒子が四方に飛び散り、天井を貫くほどの衝撃波が塔内を満たす。そしてそこから這い出るように巨躯の獣影が姿を現す。


 最初に見えたのは乱杭歯のように生えた獣の無数の牙。次に雷を宿した金属質の黒い(たてがみ)広がり、灼けた赤金の眼光が闇の中に灯る。


 岩盤のごとく分厚い筋肉で覆われた漆黒の獣甲は見る者を圧倒する。


 「・・・牙王・ガルザヴァルグ。」


 鑑定により判明した名をヴェインが呟いたその時。


 「ガアァァァァァッッッ!!」


 咆哮共に背中から生えた巨大な皮膜翼がバッと開き、身体を軋ませる程の圧力がヴェインとランスロットを襲う。


 幾本もの稲妻が走る中をガルザヴァルグがヴェインを正面から睨み据えるゆっくりと前進してくる。


 「ちっ、化け物め・・・。」


 「ガアアアァァァァァッッッ!!!」


 再び轟く咆哮。足元から不規則に雷の閃光が迸る。それは徐々にこの空間を染め上げる。それはこの領域を支配する宣言であり、ガルザヴァルグの宣戦布告であった。


 次の瞬間、ガルザヴァルグの黒の獣甲をまとったその巨体が、躍動を開始する。その巨躯からは想像出来ない速さでヴェイン達に接近する。振り下ろされる爪は鉤爪のように長く雷を帯びている。


 振り下ろされた巨爪は空気を引き裂き地面を砕く。その凄まじ速度と破壊力に脱帽するヴェイン。


 ーーーだが、当たらなければどうという事は無い。


 即座に反応したヴェインが一歩踏み込んだ瞬間。爪に帯びていた雷が衝撃波となりヴェインを襲う。衝撃波がヴェインを飲み込んで瞬間、ヴェインの姿は(かすみ)のようにその場から消える。


 「ガッアァァッッ!」


 痛みに一瞬顔を歪め、短い呻きがガルザヴァルグから漏れる。ヴェインの持つ短刀がガルザヴァルグの巨躯を傷つけていた。そしてヴェインの姿が徐々に薄くなるように消えていく。


 ガルザヴァルグに生じた僅かな隙を見逃さず、ランスロットが大剣を振り下ろす。振り下ろされた大剣は幾ばくかの(たてがみ)を宙に舞わせただけで、ガルザヴァルグにダメージを与えるには至らなかった。


 飛び退いたガルザヴァルグはそのままランスロットに向けて電撃を放つ。両手に持つ大剣を高く掲げ、ランスロットは雷撃を打ち消すように前面に突き出す。


 大剣は雷光を一撃で砕き、ガルザヴァルグの攻撃を遮る。雷の波動はランスロットの大剣を中心に拡散し周囲を吹き飛ばすが、ランスロット自身はそこから一歩も引かず留まる。


 「ヴェイン殿っ!」


 ランスロットの声に応え、ヴェインが瞬時に横から飛び込む。


 ガルザヴァルグの首目掛けて放たれる一閃。


 急所目掛けて突かれた短剣は、先程と同様に僅かな傷を付けるだけであった。ヴェインを睥睨するガルザヴァルグは爪で反撃を見舞おうとする。


 その動きをランスロットが大剣で制す。ガルザヴァルグの爪から繰り出される雷のような一撃をランスロットが受け止めると同時に、ヴェインの短剣が再び閃く。その一閃にはガルザヴァルグの重厚な筋肉をも切り裂くほどのエーテルが宿っていた。


 ヴェインとランスロットの連携攻撃が決まるかと思われたその時、背中から生えた巨大な皮膜翼が羽ばたきガルザヴァルグの巨躯が宙に預けられる。


 ガルザヴァルグが目を見開き、全身から黒く淀んだエーテルが滲み出す。背中から黒い霧が立ち込め、獣甲が鈍く光を放つと、ガルザヴァルグの体内でエーテルが爆発する。


「ガァァァアアアアアアァァァッッッ!!!」


 耳をつんざくような咆哮と共に、ガルザヴァルグの全身が一回り大きく膨れ上がる。筋肉が張り、爪の鋭さが増し、皮膚の下から光の裂け目が走り始める。


 限界を超え変貌していくガルザヴァルグの身体。


 「・・・まさか、第二形態とは、そんなのありかよっ。」


 ヴェインが眉をひそめ宵闇を構え直す。ランスロットもすぐに姿勢を低くして、大剣を握りしめた。


 その一瞬、ガルザヴァルグは宙を蹴り、二人目掛けて一気に降下。


 ヴェインは即座に反応し、ガルザヴァルグの攻撃を回避するが、ガルザヴァルグから放出たれた雷のようなエーテルが波が辺り一帯を切り裂く。


 「くっ、もう逃げられねぇ!」


 だが、ヴェインは滑るようにしてガルザヴァルグの懐へ飛び込む。


 仁王立ちしたランスロットは、その場でガルザヴァルグ攻撃を大剣で受け止める。荒れ狂うエーテル波をその身で受け止め、ヴェインが攻撃する隙を作り出す。


 ランスロットの意図を理解したヴェインは、宵闇を交互に振り抜く。その刃がガルザヴァルグの全身を覆うエーテルの膜を切り裂き、胸にも深く傷を作る。


 「ちっ、これでも・・・足りねぇのか」


 ガルザヴァルグが一瞬だけよろめくのを見たヴェインは、瞬時に宵闇を順手に持ち替え急所に目掛けて刺突のように突き出す。


 その刃が突き立つ瞬間。


 ヴェインは何かを感じ取り回避行動に移る。だが、ヴェインの回避よりもガルザヴァルグの攻撃が一瞬早くヴェインをかすめる。かすめただけでヴェインの身体に爆発的な衝撃が走り抜ける。


 ヴェインは体勢を崩しながらもその場で踏ん張り反撃に移る。次第にガルザヴァルグの狂化が進み、その攻撃力とスピードは更に増していく。エーテルの奔流が嵐のように渦巻き、その中でヴェインは全ての攻撃を回避しながら攻撃を繰り出す。ランスロットはヴェインの作る隙に合わせて強烈な一撃を繰り出していた。


 ランスロットとヴェインのコンビネーションも崩れ始め次第に二人は追い詰められる。


 「ヴェイン殿、しばらく引き付けほしい。」


 その言葉に頷くとヴェインはエーテルを高め、今までの数倍の速さでガルザヴァルグを翻弄し始める。そこに残像を織り交ぜる事でガルザヴァルグは完全にヴェインの動きを捉えられなくなっていた。


 数歩後退したランスロットは大剣を構え直す。その瞬間、空気が凍るような圧がランスロットを中心として走る。刀身の表面を漆黒の亀裂のような線が奔る。その黒線に沿って刀身に隙間が生まれ始め、刀身がひと回り程の大きさへと変わる。隙間から黒き焔のエーテルが吹き出し、意思を孕んでいるかのように大剣全体を覆い尽くす。


 黒焔を身に纏う巨大なエーテルの大剣がここに顕現する。


 「ヴェイン殿っ。」


 ガルザヴァルグを取り囲んでいたヴェインの残像が一瞬にして消え、ヴェインの姿はランスロットの背後にあった。


 「滅焔裁断ラグナロクっ!!」


 一歩踏み出し振るわれる黒き焔は、触れた存在を音も無く消滅させる。


 後には今まで戦いが嘘だったかのように静寂が辺りを包み込む。


 「ま、まじか・・・。」


 ランスロットの放った一撃の姿にヴェインは驚きを隠せないでいた。ガルザヴァルグに伴い異質な空間になっていた塔内部は元に戻り、張りつめていた緊張の糸が切れたヴェインはその場に座り込む。


 「やっと終わった・・・。」


 そう言ってヴェインは大の字で横になる。その表情には少し疲労の色が浮かんでいた。


 「ヴェイン殿、お疲れ様です。」


 「ランスロットこそ、お疲れさん。それにしても最後のあれは・・・。」


 「最近、やっと形になった。奥の手です。」


 「あれが無かったら、やばかったっ。」


 「そんな事は無いと思います。ヴェイン殿も。」


 「そんな事より、少しここで休む。流石に疲れた。」


 ヴェインが休憩している間、ランスロットは奥へと進み目的の場所を確認していた。戻ってきたランスロットを視界に収めたヴェインはゆっくりと立ち上がる。


 「戻ってきた直後ですまないが、行きますか。」


 奥にある階段を伝って現れたその場所は、事前にリアンから説明を受けていた通りの姿をヴェイン達に見せる。


 「これに触れば良いのか。」


 ヴェインは懐からリアンの血を吸った布を取り出すと装置に置き、軽くエーテルを流す。


 今まで静かだった塔が息をし出したかのような脈動を打ち始める。リアンの指示にあったようにヴェインが操作しはじめる。


 次々とヴェインの前で文字が表示されていく。


 ”牙の塔(ケリュポス)の起動を確認”


 ”ハノイの塔との接続を確認”


 ”ハノイの塔、第四ロックを解除”


 ヴェイン達の攻略をもって蹄の塔(ホプレー)翼の塔(プテリュクス)甲羅の塔(キュノドゥー)牙の塔(ケリュポス)の攻略が無事に終了し、ハノイの塔への道が開かれる。



誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。


【読者の皆様へのお願い】

作品を読み、少しでも「面白い」、「先が読みたいと」と感じた方は、ブックマークと評価をお願いします。

気合を入れて妄想に妄想を重ねて執筆する原動力になります。厨二病感満載の詠唱も考えて行きます。

改めてお願いします。

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