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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第四章 幻の都編
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第六十三羽. 翼王グリュオルニス


 Side:アルジェント、アヤメ


 「アルねぇっ!」


 「どうかしましたか。」


 「いや、ヴェイン達は大丈夫なのかな、と。ほら、セリアねぇとメルは全く心配する必要がないし。僕らはアルねぇが防御を固めて、僕が範囲攻撃すれば何とかなるけど。ヴェインの所はさぁ・・・。」


 「確かにヴェインさんのところは、そう言った面で心配はありますね。ヴェインさんもランスロットさんも集団戦向きではないですからね。それでも・・・セリア様の眷属です。この程度の敵であれば問題ないと思いますよ。」


 「そ、そうかな・・・。」


 ーーーアルねぇ、さらっと、凄い事言ってるな・・・。


 この会話を聞いていた研究員達もこの数の魔物の群れを目の前にして、”この程度”、と言い切るアルジェントを何を言ってるんだ、という目で見ていた。


 「えぇ、そうです。ですが、ヴェインさんの心配よりも、今は・・・。」


 「そうだねっ。今は自分達の事だねっ。」


 アヤメは矢を番えると自身の真上に向け矢を引き絞る。


 「紅蓮焔雨(ぐれんえんう)っ!」


 アヤメの力強い言葉と共に矢が真上に向けて解き放たれる。


 解き放たれた矢は炎を纏い光の筋を描きながら天高く舞い上がり、ある一定の高度に達するそこで炎の花を咲かせる。炎の花は周囲に拡散すると、紅蓮の雨となり周囲の魔物へと降り注ぐ。


 紅蓮の雨を浴びた魔物はその身を炎に焼かれエーテルへと変えていく。さらに炎はまるで意思があるかの様にその周囲にいる魔物を飲み込み始める。雨は濁流となり、全てを飲み込み、アヤメ達を取り囲んでいた魔物は姿を消す。


 「アルねぇ、凄いでしょっ!」


 「流石、アヤメさんです。何時の間にこのような技を使える様に?」


 「僕も色々と頑張ってますからっ。」


 「では、次な私の番ですね。」


 「おっ、アルねぇもやる気だねっ。」


 アルジェントとアヤメの会話には緊張感が一切感じられず、まるで近所にちょっと買いもにでも行くかようで、それを見ていた研究員達は少し引き気味であった。


 そうこうしているうちに第二陣の魔物が出現し始める。魔物の数が全体的に減少している。それは見るからに明かであった。だが、一体一体の持つエーテル量の増大と一個体の大きさが増していた。


 アルジェントが数歩前に出ると、アヤメはアルジェントの後ろへと下がる。息を軽く吐きながらアルジェントは目を閉じ、小さく何かを呟く。


 「・・・展開」


 その直後、メイド服の裾がふわりと舞いアルジェントを重く冷たい空気が包み込む。純白の魔法陣が円環を描きアルジェントの身体を包むように展開される。空間がきしみ、エーテルの風が舞い上がる。


 その風は、アルジェントの銀色の長髪を優雅に揺らし天へと靡かせた。


 魔法陣から金属質の響きが木霊し、光の粒子がメイド服を包み込む。白銀の装甲が花弁のように展開し、肩・胸・腕・脚へと一片ずつ重なるように装着されていく。


 最後に、左腕に盾が、腰には鞘に収まった剣が具現化する。その剣の銘はカラドボルグ。始原の迷宮プライモーディアル・ラビリンスの最下層でカリスより思いと共に託された神々とも渡り合える業物。


 カラドボルグを鞘から引き抜くアルジェント。


 その瞬間、背中から伸びた深紅の縁を持つ純白のマントはアルジェントの意思に応えるように風に大きくたなびく。


 静かに開くアルジェントの目は先程までの温和な目では無く、戦いに赴く騎士の目に変わっていた。


 「我が主であるセリア様の剣として、裁きを遂行します。」


 宣言と共に抜き放ったカラドボルグを天高く掲げる。


 すると輝く星のごとき光粒が上空を染め上げ始める。やがてその光粒のひとつひとつが剣の形をとり、アルジェントの頭上に無数の光の剣を創り出す。


 「光輝なる剣ソーズ・オブ・レイディアンス


 剣を力強く振り下ろすと、それが合図となり光刃群は一斉に射出さる。それはまるで星が流れ落ちるかのように敵陣を貫く。


 さらに光剣の着弾地点を中心に聖光が広がり、魔物を飲み込み始める。やがて光の帯となり飲み込まれるた魔物の群れは静かにその姿を消す。


 またしても瞬時に周囲の魔物は一掃された。


 こうも素早く対処する二人に驚く以外の感情が湧かぬ研究員達を尻目に、アルジェントとアヤメは次々と出現する魔物の群れを消滅させていく。そして、”この程度”、と言っていたアルジェントの言葉の意味を研究員達は理解した。


 二体の大型の魔物を容易に討伐したふたり。それ以降、魔物出現が止まる。


 「これで終わりかなぁ。」


 「そうかもしれませんが、油断しては駄目ですよ。」


 「わかってるよぉ。」


 魔物の出現が収まったと判断したアルジェントがカラドボルグを鞘に納める。


 「どおうやら、これで終わりの様です。お怪我はありますか。」


 「私達は大丈夫です。それにしても、おふたりはすごいですねっ。」


 「そんな事はありません。セリア様に比べればまだまだです。」


 比べる対象が間違っているのでは、アヤメは会話を聞きながら、率直な感想を抱いた。研究員達は研究員達でまったく想像の出来ないセリアの強さにただただ笑って、アルジェントに答えていた。


 そんな時、アルジェントは不穏なエーテルを感じ取り、再度カラドボルグを抜く。それはアヤメも同様で一度解いた緊張を再び纏わせていた。


 そんな二人の前にエーテルの塊が出現する。そのエーテルからは妖しくも濃密なエーテルを感じ取り警戒していると、それは揺れ動き塔の中へと消えていく。


 塔へと消えていくエーテルの塊を目で追いながらアヤメは呟く。


 「誘っているのかなっ。」


 「多分、そうでしょうね。」


 「それじゃ、行こうか、アルねぇっ。」


 「あ、あの私達はどうすれば・・・。」


 アヤメがアルジェントに視線を送ると、少し考え込んだアルジェントが口を開く。


 「ここにいる方が安全だと思いますが、目の届くところにいた方が何かあった時によいかもしれませんね。」


 「僕はアルねぇに従うよ。」


 アルジェントの言葉で塔へと同行する事になったが、研究員はすぐにこの決断をした自分達を責める事になる。


 後日、”つまらないなぁ”、とぼやきながら機械的に魔物を殲滅するアヤメの姿に少なからず危ないものを感じたと同行していた研究員達から報告が上る。



 ◇◇◇◇◇◇


 塔の四階、アルジェント達が扉を開け、その奥へと足を踏み入れる。背後の扉が閉じると一陣の風が吹き抜ける。


 中央にあるエーテルの塊を囲むように魔法陣が浮かび上がる。


 魔法陣が輝き始めるのと同時にエーテルの塊が脈打ち始める。まるで心臓のように脈打ち、紫紺と蒼の光を交互に放ちながら周囲の空間がねじれ歪みと重圧を広げていく。


 「アルねぇ、あ、あれって・・・。」


 眼の前で繰り広げられる光景に、この場にいる一同の目が釘付けになる。


 その時、エーテルの塊に更なる変化が起きる。


 裂けた。そして弾けた。


 塊から漏れ溢れ出たエーテルが急激に凝縮し黒き翼を形作る。六枚の漆黒の翼が不規則に空間を薙ぎ、低く響く重音と共に舞い上がる。存在の顕現を誇示するその音は空間を満たし、天井を覆う舞い散る黒き羽はその場の空間を染め上げる。


 視界が歪み、天と地の境界が曖昧になる。塔の床だった場所は裂けた大空の裂け目へと飲み込まれ、壁という壁が光の粒となって砕け消えてゆく。


 塔の内部がまるごと異空間へと上書きされたのだ。


 そこは、空の裂け目の中に浮かぶ、無数の黒き浮遊岩が散らばる虚無の空界(そらかい)


 いまだに虚ろで朧気な存在がやがてひとつの輪郭をとりはじめる。


 鋭く屈曲した鉤爪、黒曜石のよう妖しくも美しい硬質の羽根、金属質の嘴。そして、赤金色の双眸が、ゆっくりと開かれた。


 翼王・グリュオルニス。それがアルジェントの鑑定によってあらわになったアルジェントとアヤメの前に立ちはだかる魔物の名である。


 漆黒の翼が紫紺の稲光を纏い、全身をしならせてさらに上空へと飛び立つグリュオルニス。


 それはもはやその行為は”飛ぶ”ではなかった。空間そのものを自身の羽ばたきで押しのけ、自身の領域へと再構築してる様であった。


 「この空間そのものが・・・あなたにとって“空”ということですか・・・。」


 アルジェントが声をあげたその時、空間の端から迸る閃光が浮遊岩を薙ぎ払う。


 「アルねぇ、それってつまり・・・好き放題、飛び回れるってことっ!」


 「正確に言えば、動き回れる・・・なのでしょうが。」


 アルジェントの言葉の意味を分かり兼ねていたアヤメは、その言葉の意味をすぐに理解することになる。


 アヤメがグリュオルニスに向かって矢を射る。矢を射るまで流れる動作は虚をつくに十分であった。だがグリュオルニスは矢が届くより早く身を翻し、近場にあった浮遊岩に身を預ける。


 幼い頃から山で狩りをしていたアヤメは、本来なら在り得ない軌跡を描くグリュオルニスの姿に”動き回れる”、と言ったアルジェントの言葉を理解する。


 周囲を睥睨するその顔は鳥籠の中で長く眠っていた獣が、しばらくぶりに得た自由に歓喜しているかのようであった。


 そして、すぐに始まる残酷な狩りの予兆であった。翼王が王たる空域で・・・。


 「来ます、アヤメさんっ。」


 グリュオルニスの六枚の漆黒の羽が同時に跳ね上がり、空間に”紫紺の弧”が描かれる。


 そして次の瞬間、重ねられた両翼の間からが閃光が放たれる。


 すかさずアヤメの前へ躍り出ると、アルジェントその全ての攻撃を盾で防ぎきる。アヤメの姿は既にアルジェントの背後に無く、グリュオルニスの死角に回り込んでいた。


 アヤメは移動しながら弓を構えると連続で弓を射る。死角からの攻撃にも関わらず、その全ての攻撃を紙一重で回避するグリュオルニス。


 全てを回避したと思ったグリュオルニスを灼熱の炎が襲う。それは双翼に灼熱の炎を纏うフェニックスのようであった。


 その攻撃はゾディアックのひとりであるムリエルに使用した時よりも遥かに威力が上っていた。ムリエル戦では周りへの影響を考え威力を落としていたが、この空間ではそんな事をする必要がない。


 グリュオルニスの体表は傷つき焼け焦げていたが、微かに煌めくと自己修復を開始する。


 「回復の時間を与える程甘くないよ、僕はっ!」


 アヤメから放たれた矢は巨大な炎の顎となり、グリュオルニスに襲い掛かる。しかしグリュオルニスは自身の翼を折り畳み在り得ない旋回軌道を描きアヤメの攻撃を回避する。


 アヤメの攻撃を回避したグリュオルニスは六枚の翼を大きく広げる。展開された六枚の翼は紫紺の閃光を帯びて光輪を描く。光輪は回転しながら巨大な魔法陣となり、周囲一帯の空間にエーテルの焼き印を刻みつけていく。刻み付けられた焼き印は新たな魔法陣を作り出し、連鎖的にグリュオルニスの周囲に展開していく。


 ーーーこれでは・・・。


 アルジェントは後方を確認して、心の中で呟く。研究員に周りに張った結界はグリュオルニスのこの攻撃にまず耐えられない。


 そう判断したアルジェントは研究員達の前へ移動するとアヤメに視線を送る。


 その視線に気が付いたアヤメは素早くアルジェントの背後へと移動する。


 「聖域の盾(イージス・サンクタム)


 アルジェントが自身の持つ盾を全面に出し大地へと突き立てる。盾はまばゆい白光を放ち始め、その光は波紋のように広がりを見せる。


 広がりを見せた光は盾を中心に光翼を形作る。それはまるで天使がその背に抱く六枚翼を広げたかのような荘厳な姿。


 聖域の盾(イージス・サンクタム)、それは数秒間ではあるが、あらゆる攻撃を防ぐ絶対防御フィールドを展開するアルジェント奥の手。


 空を覆っていた魔法陣が次々とグリュオルニスの六枚の翼で成す魔法陣へと重なり合い、収束していく。


 そして全てが魔法陣が重なりあったその刹那、それは発動した。一瞬の静寂の後、六翼の先端から走る雷光が六本の柱を形成する。


 そして、それは中心へと収束する。


 刹那、空間が軋み、天頂から垂直に落下する巨大な雷柱が戦場を全体を覆い尽くす。絶えず降り注ぐ雷光、物質が崩壊する程の圧力がアルジェント達に襲い掛かる。


 雷光の嵐が過ぎ去り、やがて訪れる静寂。


 グリュオルニスに仇名す全ての物が雷光の中で潰えるはずであった。


 だが、永遠とも感じさせる十数秒間、聖域の盾(イージス・サンクタム)の絶対防御フィールドはアルジェント達を無傷なまま戦場に留め置かせた。


 グリュオルニスに感情があるのかは定かではないが、この時、確かにグリュオルニスの中では驚きと動揺が渦巻いていた。この攻撃に耐えられる者がいるとは完全に思っていなかった。


 グリュオルニスの眼下に確かにそれがいた。


 そして、今、グリュオルニスは身動きが出来ない自身の身体に訪れるであろう未来に戦慄していた。


 グリュオルニスにとって永遠とも思える時間が始まる。


 アヤメは既に動き出していた。


 グリュオルニスが硬直しているなど、当然、アヤメは知る由もない。それでも直感なのかアヤメの身体は動いていた。


 グリュオルニスの上を取るアヤメの両手には二本の刀が握られていた。


 一本は始原の迷宮プライモーディアル・ラビリンスの最下層でアグニより託された倶利伽羅(くりから)、もう一本はその時に自分の力を制御した事をきっかけに得た刀。銘を火之迦具土(ほのかぐつち)


 2本の刀は容易にグリュオルニスの翼を切り裂く。


 「落ちろっ!」


 掛け声と共にアヤメはグリュオルニスを地面へと蹴り飛ばす。


 そしてそこにはアルジェントが走り込んでいた。盾を持つ左腕に力を込め、落下してくるグリュオルニスの胴目掛けて盾を振り抜く。


 「シールドバッシュ」


 グリュオルニスの身体が悲鳴を上げながら数メートル浮かび上がる。さらにアルジェントは次の動作へと入る。


 「審判の剣ブレイド・オブ・ジャッジメント


 発動と共にグリュオルニスを囲むように六つの魔法陣が空間に展開される。


 前・後・左右、そして天と地と。


 六方向すべてから、巨大なエーテルの光刃が音もなく出現し、鋭い閃光と共にグリュオルニスを一斉に串刺しにする。


 貫いた刃が交差する中心地点は、微細振動を伴う高密度エネルギー状態へと変化していく。それはまるで粒子加速器の中心で発光するように、エーテルが収束し、周囲の光をも歪めていく。


 さらに着地したアヤメが追い打ちをかける。


 「蒼炎滅却陣そうえんめっきゃくじん


 グリュオルニスの周囲に複数の魔法陣が瞬時に展開され、そこから青白い炎の槍が出現する。そしてエネルギーが収束する中心目掛けて繰り出される。


 「ガァァァァァァァァアアアアアア――――ッッ!!!!」


 悲鳴にも似たグリュオルニスの声が辺り一面に響き渡る。六枚の翼をばたつかせ足掻くグリュオルニスにアルジェントは無慈悲に最後のトリガーを引く。


 「イグニッションッ!」


 その言葉と同時に、中心点に蓄積されたエネルギーが一気に臨界を超え一気に解放される。力の本流に飲まれたグリュオルニス身体は徐々に崩壊していく。六つの刃が消滅しグリュオルニスを取り囲んでいた魔法陣が砕け散ると、そこには何一つ残されたいなかった。


 グリュオルニスが倒されたのを告げるかのよに空間が揺らぎ始める。グリュオルニスよって変質していた空間が元に戻り、アルジェント達が訪れた時と同じ塔の内部が視界に映る。


 「やっと終わったね。」


 「アヤメさん、お疲れ様でした。」


 「アルねぇもお疲れさまぁっ。」


 「それでは・・・。」


 アルジェントが研究員達を見ると、そこには腰が抜けて動けずにいる姿があった。一旦、休憩を挟み研究員達の回復を待ってから、アルジェント達は上の階へと進んだ。


 翼の塔(プテリュクス)の起動。


 そして・・・ハノイの塔の第二ロックが無事に解除される。



誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。


【読者の皆様へのお願い】

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気合を入れて妄想に妄想を重ねて執筆する原動力になります。厨二病感満載の詠唱も考えて行きます。

改めてお願いします。

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