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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第四章 幻の都編
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第六十一羽. 誘うは暴君の戯れ


 「ミーアちゃん、気分は落ち着いた?」


 「私は大丈夫です。ボスは?」


 「僕はもう大丈夫だよ。それじゃ、セリアちゃんの後を追いますかっ。」


 立ち上がると二人はセリアが歩いて行った方に向かって歩き始める。


 「ボス・・・。」


 「どうしたんだい、ミーアちゃん。」


 「あの・・・セリアさんっていったい何者なんでしょうか。」


 「何を言うんだい、藪から棒に。」


 エルヴィンが振り向くとミーアの足が止まり、真剣な眼差しをエルヴィンに向けていた。


 「私達にも分からないのに、まるで知っているかのように操作を行っていましたし、あとあの下に落ちる箱も何だか知っているようでした。それにあのテュラノスと互角以上に戦ったとも聞きます。」


 「確かにセリアちゃんは僕たちの知らない色々の知識を持ってるだろぉね。それに沢山の事を隠しているとも思ってる。ミーアちゃんが抱いている事もよぉく分かるよ。でもね・・・。」


 「でも、何ですか・・・。」


 「セリアちゃんは信じられる人だと思ってる。いや、それを確信してるんだ。僕は・・・。」


 自分を見つめるミーアに優しい声でエルヴィンは話を続ける。


 「ミーアちゃんだって、楽しくセリアちゃんと話していたじゃないか。自分が理解できない事があると嫌いになるのかな。」


 「そんな事は・・・。」


 「ならミーアちゃんも、僕と同じように今まで通りセリアちゃんと接すればいいと思うよっ!」


 「ボス・・・。」


 「それにね。人を見る目は誰よりも自信があるんだ。僕は。だからこの出会いは必ずいい事を僕達、いや・・・この世界にもたらしてくれるはずさっ。」


 「世界とは大きくでましたね、ボス。」


 エルヴィンの言葉に笑って答えるミーア。


 「吹っ切れたかな。」


 「はいっ。ボスと同じようにセリアさんを信じます。」


 先を急いだエルヴィンとミーアがセリアのいる部屋の入り口へと辿り着いた時、布に包まれた二人の子供をセリアが抱えていた。


 セリアに二人が声をかけようとしたその時、双子が同時に目を覚ます。


 そして一言。


 「マ、マ・・・。」


 そう言って再び眠りに付いた。それを聞いた二人は周囲に響き渡る程の声で叫んだ。


 「セ、セリアさん、お子さんがいらしたんですか。」


 「そんな大きな子供がいるって、セリアちゃん、幾つなん。いだっぁぁっ。」


 ミーアに頭をどつかれ頭を抱えるエルヴィン。


 「いったい、何をするんだっ。」


 「ボスッ。女性に年齢を聞くのはマナー違反ですっ。」


 「そうは言ったって、ミーアちゃん、君も気になるだろぉ。」


 「まぁ、そ、それはそうですけど・・・。」


 「なら、これを機に色々聞いてみたらどうかな。」


 二人のやり取りを聞きながらセリアは溜息をつくと二人の会話に割って入る。


 「別に私は年齢を聞かれても何とも思いません。それにまだ二十歳です。それでこんなに大きな子供がいるわけがないでしょ。エルヴィンさん・・・分かっててミーアさんの話に合わせましたね。」


 「え、えぇぇぇっ!」


 ミーアがエルヴィンに目を向けると、当のエルヴィンは明後日の方向を身ながら口笛を吹いていた。


 「ボス・・・。」


 「ごめん、ミーアちゃん。君の反応が余りにも面白くてっ。」


 「最っ低ですっ。」


 ミーアは頬を膨らませエルヴィンから顔を背ける。


 「はははっ。ごめんよ。悪気は・・・無いんだ。」


 ミーアはエルヴィンの謝罪を無視してセリアに近寄ると双子の頬を指で突っつく。


 「この子達が。」


 「えぇ、上の階で見たファイルに書かれていた双子で間違いないと思います。」


 「可愛いぃっ。ほっぺがぷにぷにですっ。」


 楽しそうにセリアと話しているミーアを見てエルヴィンの顔に自然と笑みが漏れる。


 そして、思わず零れ落ちる。


 「取り越し苦労だったかな。」


 先程の件で暫くぎこちない関係がしばらく続くかと思っていたが、それが杞憂である事にエルヴィンは心から安堵していた。


 「ボス、何か言いましたか。」


 「いいや、何でも無いよ。それよりも幾つかまだ部屋があるから調べに行こう。セリアちゃんはここでその子たちを見ててよ。何かあれば呼ぶから。」


 「分かりました。お願いします。」


 「それじゃ、ミーアちゃん、行くよっ。」


 そう言ってエルヴィンは勢いよく部屋を飛び出していった。


 「私も行ってきますね。」


 そう言ってミーアは慌ててエルヴィンの後を追いかけて行った。そんな二人を見送ったセリアはそのまま視線を双子に移す。双子の寝顔を見るセリアの顔には優しい笑みが溢れていた。



 ◇◇◇◇◇◇


 地下区画に広がる空間は何かの研究や実験が行われていた事は、先のファイルから容易に読み取れたが、エルヴィン達が訪れた今現在はその痕跡が何一つ存在しない。隣接する幾つかの部屋を見て回ったが、部屋の中は何処ももぬけの殻であった。


 「それにしても、何もありませんねぇ。」


 「そおだねぇ。元は研究施設かなにかだったんだろうけど。プロジェクト終了時に全ての撤去したのかもね。取り敢えず全ての部屋を回って見よう。」


 「分かりました。それとボス・・・聞きたい事があるんですが。」


 「何かな。」


 「上の部屋で見た資料の内容なのですが・・・。」


 「生命の樹(セフィロト)やゾハルの事かな。」


 「そうです。それって。」


 「教会から開示されている詩篇(エピック)の中に同じ言葉があったね。まぁ、ゾハルはオリジナルを模倣した代物のようだけどね。云わばゾハルイミュテーションってところかな。」


 「ゾハルイミュテーションを作る技術ってどうやって見つけたんでしょう。」


 「見つけたというより、何処からか技術提供を受けたんじゃないかな。」


 「なんで、そう思うんですか。」


 「オリジナルがあればそもそも模造品なんて作る必要ないからね。そうすると生命の樹(セフィロト)の存在を偶然知り得て、そこからエーテルを取り出す、という事になる。」


 「それだと何か問題があるのですか。」


 「生命の樹(セフィロト)やゾハルといった言葉は詩篇(エピック)にも登場する。偶然に見つけた存在にそんな固有名称を付けるだろうか。それに詩篇(エピック)の内容が正しいのなら、偶然出くわした、なんて事はありえないからね。」


 「何故、ありえなないんですか。」


 「詩篇(エピック)に目を通した事はあるかい、ミーアちゃん。」


 「ありませんよ。だって私レベルだと閲覧許可が降りませんから。」


 「僕の秘書ならそれぐらいの権限を付けてもいいと思うけどなぁ。戻ったら交渉してみか。」


 「ボス、話が・・・。」


 「そうそう、生命の樹(セフィロト)の話ね。その前に多世界解釈ってしっているかな?」


 「あれですよね。異なる世界が幾つも存在するっていうやつですよね。」


 「まぁ、そんな感じなんだけど。イメージとしては水中に空気をいれると、当然気泡が浮き上がるよね。その一つ一つが各世界に当たるんだ。そして水が生命の樹(セフィロト)にあたる。もう少し正確に言えば生命の樹(セフィロト)から溢れ出たエーテルかな。」


 「多世界解釈については理解できましたけど、それとありえないの話が繋がらないのですが。」


 「そうあせらずに。便宜上気泡と例えたけど、気泡の様に明確な境界が存在するわけじゃないんだ。だから今この時この場所でエーテルが流れ込ん来る可能性もゼロではない。」


 その話を聞いてミーアは辺りをきょろきょろと見渡し始める。そんなミーアを笑いながらエルヴィンは話を続ける。


 「辺り見回してもダメだよ。そもそもそのエーテル、混同するから資料から拝借して一旦僕らもアーカーシャと呼ぶことにしようか。まぁ、この言葉も詩篇(エピック)に登場するんだけどね。アーカーシャは僕らではエーテルのように感じ取れない。だから仮に今この場でアーカーシャが流入しても僕達は全く気が付かないんだ。」


 「でもそれは、今の人間にその能力が無いだけで、昔の人は備わっていた、とは考えられませんか。」


 「確かにミーアちゃんの言う通りその可能性もゼロではないと思う。だが現状クィントゥス朝と同時期の遺跡からは魔導技術に関するものは出土しているが、生命の樹(セフィロト)やゾハルに関わる物は何一つ出土していない。なので発掘された魔導技術に関する出土品はクィントゥス朝からの提供もしくは流出した物だと考えている。これらの事から考えると当時の人間にアーカーシャを感じ取る能力があった可能性は限りなく低いと僕は考えている。」


 「なるほど・・・それでボスは何者かによって技術提供された、と考えているわけですね。」


 「おぉぉ、よく出来ましたっ。」


 「私の事、馬鹿にしてませんか。そんな事より、これらの事が掛かれている詩篇(エピック)っていったい何なんでしょう。」


 「それは僕にも分からないな。多分所有している教会の奴らですら、分からないんじゃないかな。」


 そんな事を話しながら残りの部屋を全て見て回ったが、やはり手掛かりはおろか何も残されていなかった。


 「一旦、セリアちゃんのところに戻ろうか。」


 「はい。あの双子ちゃんまだ寝てるのかなぁ。」


 「随分と気に入ったみたいだね。」


 「だったぇ。可愛いじゃないですかぁ。」


 二人が報告にセリアの下に戻ると、セリアは端末に向かって何か作業をしていた。そして双子はそんなセリアの横で床に敷いた布団の上ですやすやと寝息を立てていた。


 「セリアちゃん、何か情報は得られたかな。」


 「新たに目ぼしいと言う訳ではないですが、先のファイルを捕捉するような資料を幾つか見つけました。後で資料を整理するため、今情報を引っこ抜いているところです。」


 「引っこ抜く?何処に?」


 「まぁ、そう言ったスキルを持っているので。」


 「分かった。そう言う事にしておくよ。」


 セリアの言葉ににっと笑うと言葉を残し、双子の様子を見に行くエルヴィン。


 「こちらの作業は終わりました。そう言えばそちらはどうでしたか。」


 粗方の情報を《オモイカネ》がコピーし終え、セリアがエルヴィン声を掛けたその時、周りの空間が歪み始める。


 『マスター、この空間の歪みは転移魔法です。』


 セリアは直ぐに双子を抱き抱える。エルヴィンは丁度双子の側にいたが、ミーアは扉の外に出ていた。


 「ミーアさんっ、早くこっちにっ!」


 セリアの叫ぶ声にミーアが急ぎ駆け寄る。ミーアがセリアの下に辿り着いたのと同時にセリアの視界が暗転する。



 ◇◇◇◇◇◇


 先程まで地下にいたセリア達は一瞬で外に転移していた。そこは四方にある四本の塔のひとつで、後ろを振り返れば天高く聳えるハノイの塔が視界に入る。


 「ここは何処なんだ。」


 自分が今の何処にいるかを理解出来ないでいたエルヴィンだったが、辺りを見渡し自分が何処にいるのかを理解する。それはミーアも同様であった。


 『みんな、今の状況を報告してくれっ。』


 『セリア様、チーム・(チャーリー)は何時の間にか全員塔の前に転移していました。』


 『チーム・(ブラボー)も同様なのじゃっ。』


 『チーム・(デルタ)も同じだっ。』


 各チームの報告から受ける傍ら《オモイカネ》のからの報告も受けていた。


 『マスター、調査隊全員の生存を確認。シャングリラ内に敵影は存在しません。』


 『そのまま周囲の警戒を頼む。』


 『承知しました。』


 各チームの報告からすると、それぞれのチームがいずれかの塔の前に転移させられた事になる。そして現状そんな事が出来る人物はただ一人しかいない。


 「そなたらの行動が余りにも遅いので余が少し手助けをしてやった。ありがたく思うがよい。」


 セリアがテュラノスの関与を確信したその時、シャングリラ全域にテュラノスの声が響き響き渡った。


 「各塔には守護なる獣を配置している。いずれも余の最高傑作だ。十分に楽しめる事は余が保障しよう。それだけでは余興として少々物足りないさを余は感じていた。そこで、だちょっとした催しを用意した。大いに楽しんでくれ。」


 テュラノスのその口ぶりは他者を見下し、嘲り笑う悪辣な性格が滲み出ていた。誰もがテュラノスの言葉に嫌悪感を抱いていた。


 「藻掻(もが)き、足掻(あが)きながら・・・余の前に姿を見せるのを楽しみにしているぞっ。」


 辺りに響き渡ったテュラノスの声が消え、再び辺りを静寂が包み始める。


 「セリアちゃん、いったいどんな催しが開かれると思う。」


 「私にはさっぱり分かりません。ただ・・・。」


 「ただ、なに?」


 「言うほど楽しめる物でないのは確かでしょう。」


 「なるほど・・・それなら僕にも分かるなっ。」


 「二人ともそんな事、言ってる場合じゃないでしょっ。」


 緊張感を感じない二人の会話にミーアが割り込んだその時、事態は一変する。


 セリア達を囲む様に魔物の群れが出現する。


 『セリアねぇ、こっちに魔物の群れがっ。』


 アヤメからの念話が入ると、他のチームからも同様の報告がもたらされる。


 『各自で魔物の群れを対処してくれ。その後、各自の判断で塔に突入。誰一人欠ける事無くハノイの塔で合流だっ。』


 『了解だよっ。』


 『承知しました。』


 『了解だっ。』


 『分かったのじゃっ。』


 セリアは念話を終えると、周囲の魔物に神経を注ぐ。


 「エルヴィンさん、戦闘はっ。」


 「それなりに自負があったが、ここまで来ると足を引っ張るかな。」


 「では、ミーアさんと双子をお願いします。」


 「任されたっ。死んでも三人は守ろうっ。」


 「死なれては、困ります。」


 「テトラ、イロハ、ラクス。彼らの護衛を頼む。」


 セリアが名を呼ぶと、何処からともなく三匹の魔物が姿を見せる。


 「セリアさん、この魔物はっ。」


 「大丈夫です。私の従魔ですから。」


 『あるじ~、りょうかいっ。』


 『マスター、承知しました。』


 了解の意を示すようにラクスが一鳴きするとラクスを中心に防御結界が形成される。


 セリアがラクスの作った結果の外に出ると魔物がセリア目掛けて一斉に襲い掛かる。だがセリア襲い掛かった魔物は粉々に刻まれるとエーテルの淡い光となり次から次へと消えていく。


 「ボス、セリアさんの周りに何か糸の様な物が見えません?」


 「流石ミーアちゃん、目だけはいいねっ。」


 「だけは、は余計ですっ。」


 「あれはエーテルを細い糸状にした物だよ。まぁ、普通の人間があんな物を一瞬にして作るのは不可能だけどね。さらにセリアちゃんのエーテル量だと作られた糸は大抵の物を目の前の魔物の様に切断出来る、と言う訳だよ。」


 「凄いですねっ、セリアさんって。」


 ミーアはセリアの戦闘を目を輝かせて見ている。そんなミーアを呆れながらエルヴィンは見ていた。


 セリアが後方へと飛び退くと、魔物の群れの動きが止まる。よく見ると止まっているのではなく、何かに拘束されて身動きが取れなくなっていた。セリアが何かを弾くような動きを見せると周りを取り囲んでいた魔物が全てエーテルへと還っていく。


 「セリアさん、すごいですっ!」


 ミーアは戦闘がこれで終わったと思い結界の外に出ようとするが、それをエルヴィンに止められる。


 「えっ。」


 何故止められたのかが分からないミーアは振り向きエルヴィンを見る。それと同じくしてセリアの声がミーアに向けられる。


 「ミーアさん、まだ外に出ないでください。」


 その直後再び魔物の群れが出現する。個体差はあるが先程までの魔物と比べるとひと回り大きくなっているのは明らかだった。ただ出現した魔物の数は先程の半分に減っていていた。


 魔物の群れの消滅と出現、それがどれくらい繰り返されたのか。セリアの奮闘により魔物が一掃される。


 「ふぅっ、やっと終わったみたいだね。」


 再び静けさを取り戻し、ラクスの結界の中でエルヴィンとミーアが安堵の表情を見せた時、セリアの眼の前に濃密なエーテルが出現する。それは少しの間、ゆらゆらと揺れると塔へと姿を消す。


 ーーー中へ来いという事か・・・。


 意を決したセリアの姿が塔の中へと消えていく。



誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。


【読者の皆様へのお願い】

作品を読み、少しでも「面白い」、「先が読みたいと」と感じた方は、ブックマークと評価をお願いします。

気合を入れて妄想に妄想を重ねて執筆する原動力になります。厨二病感満載の詠唱も考えて行きます。

改めてお願いします。

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