第四羽. いざ地上へ
イングとの別れから既に一ヵ月が経過した。
イングから譲り受けた各種スキルはかなりの数に上りその把握に時間を費やした。今のレベルで使用可能なものは少なく一割にも満たない。
現状スキルがどうなっているかというと、
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【名前】 :セリア・ロックハート
【種族】 :兎人族
【性別】 :女性
【生年月日】 :3月24日/天輪歴2006年
【称号】 :八属性を制す者
【スキル】 :オモイカネ、グリモワール、ソウルイーター、魔眼、
チャクラ
【従魔:】 :テトラ《テトラエレメンタルスライム》
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スキル《オモイカネ》:疑似人格搭載汎用型支援スキル。セリアが所有するスキルを一元管理と生き字引みたいに色々教えてくれる優秀な人?というかスキル。この一ヵ月間で言葉に出さず念話という形で会話が可能となたった。
スキル《魔眼》:観ることが可能な範囲で空間に作用を及ぼす能力と鑑定のような見る能力を併せ持つ。その力の一つに短距離転移がある。当初は1mほどしか転移できなかったが、今は14,5mまで転移が可能になった。長距離転移は使用条件を満たしていないためか、発動の兆候さ全くない。
スキル《チャクラ》:第一から第七階梯を順次解放することで莫大なエーテルを生み出すことが出来る。現状は第一階梯のみ解放可能。
スキル《ソウルイーター》:倒した敵から、エーテル、スキルを奪う能力。
スキル《召喚魔法》:幻獣や精霊と契約しその力を行使する能力。
スキル《テイム》:魔物や魔獣を使い魔として契約し使役する能力
スキル《グリモワール》:召喚魔法で契約した幻獣や高位魔法などを記録管理する能力
この一ヵ月間でもう一つ大きな変化があった。従魔欄にあるテトラとの出会いである。旅のお供が初めて出来たのである。テトラとの出会いは気が付いたらそこにいた、といった感じだ。
ある昼下がりに昼寝から目覚めたら胸の上に乗っていた。種族名は”テトラエレメンタルスライム”といい、かなり珍しく四属性《火土水風》の魔法を扱い耐性がるらしい。
敵意は全く感じなかったが、この浮遊島には魔物や魔獣の類は一切存在しないはずである。なのでここいること自体怪しいことこの上ない。
摘まみ上げ放り投げようとすると、頭に声が届く。
『悪いスライムじゃないよ!!!』
ぶっ!!!
ごほっ、ごほっ、ごほっ!!!
その言葉に思わずむせた。
「その言葉を何故知っているんだ?」
起き上がり、スライムを地面におろしながら質問を投げかける。
『リッチのおじちゃんが教えてくれた!』
リッチのおじちゃん?
イングのことか?
ずっと寝ていたんじゃないのか?
考え事をしていると、《オモイカネ》から報告が来た。
『テトラエレメンタルスライムが仲間にしてほしそうにしています。』
『仲間にしますか?』
『OKだ!』
『テトラエレメンタルスライムのテイムに成功しました。』
『テトラエレメンタルスライムに名前を付けてください。』
「名前か・・・」
少し考え、
「テトラでどうだ?」
「安直ではあるが、呼びやすい。良いと思うのだが・・・」
気に入ったのか、あたりを飛び跳ね、
『ありがとう、僕は今日からテトラ!!!』
嬉しそうな声が頭に響いていく。
そんなこんなで日々忙しなく過ぎ去り、今に至る。
白いシャツに黒いネクタイを緩く締めその上に黒のベスト、赤を基調としてチェック柄のミニスカートに黒のニーハイソックス、踝くらいまでの黒のショートブーツ、そして黒のローブを身に纏ったうさみみの女性が浮遊島の端から下を眺めている。
浮遊島には環境を維持するため結界が施されている。今その結界を背にしている。つまり気温はマイナス50°、酸素濃度20%を下回る過酷な環境下に身を置いていことになる。
そんな環境にもかかわらず、似つかわしくない出立。
眼下には雲がどこまでも広がっていた。さながら雲の海。
「雲をこんなふうに真上から見る日が来るとは・・・」
外気により熱が奪はれないように対策を施した効果もあり寒さはほとんど感じない。
「さぁて、行きますかぁ!!」
掛け声と共にいっきに空へと飛び出す。フリーフォールの姿勢を取り、一気に降下していく。
『高度10000、8000、6000、4000』
《オモイカネ》のカウントが進んでいく中、着地の準備を開始しようとしたとき妙な気配を感じた。すると、
『警告、前方より、魔物の一団を確認。種族名、ワイバーン。総数十五』
『《オモイカネ》、回避は!?』
『既に探知されています。機動性はワイバーンに分があるため、完全にやり過ごすのは不可能』
『今の高度は?』
『3500』
「ちっ、やるしかないか!」
「初戦闘がワイバーン、しかも空中戦ってどんな無りゲーだ!!!」
六体が行動を開始し、三体づつ左右に分かれ挟撃態勢をとる。
『3000』
六体すべて速度が変わらないことを前提に戦略を立てようとしていたその時、
『左より、一体急速接近』
「まじかよ!!!」
目視するころには、眼前まで迫ってきていた。焦っているせいかうまくスキルが発動できない。まずいと思った瞬間、獲物を見失ったワイバーンが眼下に見えた。
『緊急処置でスキルを発動しました。』
『すまない。命拾いした。』
そう言って、ストレージからツクヨミを取り出す。そこから急降下を開始し、すれ違いざまにワイバーンの首を刎ねる。
『折角だワイバーンを利用して地上に降りるぞ!』
ワイバーンの遺体をストレージに格納しながら《オモイカネ》に伝える。
『承知しました。演算を開始します。』
瞬時に脳内に360度全天カメラのようなイメージが投影される。
今の位置から一番近いワイバーンの真上に転移を行い、背の上に乗る。
「私に牙を向けたこと後悔しながら、刈られろ!!!」
ツクヨミを振りかぶり、二匹目の首刎ね、ストレージへと格納する。挟撃してきた六体のワイバーンを撃退したとき、残りのワイバーンもこちらに向かってきた。
その時、遥か上空から高速に飛行してくる物体を捕捉した。
『こんな時に!!!』
『種族名、レッサードラゴン』
ドラゴンの中では一番弱いが、ワイバーンに比べればはるかに強い。
『先に目の前を対処するそ!』
言うと同時にワイバーンに向けて転移を開始する。
最後の一体の背に乗り首を刎ねようとしたとき、こちらに向けて炎が迫ってきた。
瞬時に耐魔法障壁を展開し切り抜ける。
『この距離で攻撃可能なのか』
『レッサードラゴンの亜種で攻撃能力が強化されているもよう』
レッサードラゴンに意識がいっていた隙をつかれ、暴れだしたワイバーンから振り落とられる。
視界に入ったレッサードラゴンの口元がひかりだしている。
転移してこの場はやり過ごすか・・・
「否、刈り殺す!!!」
意識を集中しツクヨミにエーテルを流し込む。左眼が僅かに輝きだし、銀色の髪もそれにつれて輝きだす。レッサードラゴンの炎がこちらに向けて放たれると同時にツクヨミをレッサードラゴンに向けて降りぬく。エーテルの斬撃と炎は当初こそ拮抗していたが、徐々にバランスが崩れついにはレッサードラゴンの首を切り飛ばした。
戦闘が終わり、ほっとしていると、
『高度1000を切りました。』
『着地の準備を開始してください。』
レッサードラゴンの遺体を回収したいが、距離的に無理があるので諦めるしかない。後ろ髪が引かれるが今はそれどころではない。
着地に向けての準備を開始する。アーチ姿勢を取り風魔法で落下速度を落としながら、耐衝撃フィールを展開。
地上まであと100mを切ったとき、突如意識が遠のき始めた。初めてエーテルを大量放出したため体が耐え切れずいたのだ。なんとか意識を保っていが、それも徒労に終わり意識が沈んでいった。
危機を察したのか胸元からテトラが姿を現し、セリアの下に移動する。移動同時に大きく膨れ上がりセリアを包み込んでいった。
目を覚ますとまた森の中にいた。ただ違うのは空には雲が漂っていた。
途中までの出来事を思い出し身を起こし自分のから身体とあたりを確認する。そして自分が気持ちの良いなにかの上にいることに気がついた。
『大丈夫、けがはない?』
テトラの声が響いてくる。
『テトラが助けてくれたのか?』
『うん、意識が途切れたのを感じたから!』
『テトラ、ありがとう!』
嬉しかったのか、下でプルプル体を振るわせている。
「やっと地上にたどり着いた!」
仰向けになり空を眺め、満足げにつぶやいた。