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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第四章 幻の都編
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第五十九羽. 天帝とシャングリラと真実


 リアンが目を覚ましたという報告を受けたセリア達がリアンの天幕に向かうと、そこには既にエルヴィンやノブツナを始めたとした主だった人物が揃っていた。目的の人物であるリアンはベットから起き上がっていた。その姿は昨日とは打って変わり精悍さを取り戻していた。


 エルヴィンからリアンを発見した経緯が説明される。その後に調査隊がシャングリラに来ることになった経緯と置かれている状況について。最後にエルヴィンは主だった人物を紹介していく。


 「僕達の状況についてはこれくらいかな。次はリアンくん、君の話を聞かせてくれないかな。」


 エルヴィンに促されたリアンは何から話せばよいのか迷いながらも口を開く。


 「まず、私が冒険者ギルド・メールトュール支部のサブマスターである事はノブツナさんがいるのでもうご存知だと思いますが、改めてリアン・クラヴィウスです。」


 「リアン、おぬしファミリーネームを持っていたのか。以前名乗った時にはリアンとしか名乗っていなかったが。」


 「今まで名乗る時には出していませんでした。ファミリーネームを出してはいけない事になっていので。」


 セリアを初めこの場にいる何人かは鑑定スキルを所持している。だがリアンの鑑定でファミリーネームまで見えた者はセリアを含めてごく少数しかいなかった。それ程までにリアンは自身のファミリーネームを慎重かつ功名に隠していた。


 「思い出したっ。」


 リアンの名前を聞いた時から何か引っかかる事があるのか、下を向いて考え込んでいたジェロラモが声を上げる。


 「クラヴィウスという名にどこか見覚えがあったんですが、やっと思い出しました。天帝に仕えていた十三王家のひとつが確かクラヴィウスだったはずです。」


 クラヴィウスという名を知っている者がいると思っていなかったリアンは驚きの顔を見せるが、ジェロラモがユークリッド機関の主任研究員である事を思いだすと納得したような顔を続きを話始める。


 「流石はユークリッド機関の主任研究員ですね。この名をご存知とは。ジェロラモさんの話にあった通りクラヴィウスはクィントゥス朝十三王家に名を連ねています。そして私はクラヴィウス家の子孫にあたります。直系か分家かは分かりませんが。これからお話するのは私の家に代々受け継がれてきた記録になります。そして今テュラノスが身体を乗っ取っているテオドール君も十三王家の子孫にあたります。」


 「それじゃ、テオドール君がテュラノスに身体を乗っ取られたのには理由があると。」


 「その通りです。」


 エルヴィンの質問に頷き答えるリアンは本人もしらないテオドールについて語り始める。


 「テオドール君の本来の名前はテオドール・フィボナッチ。フィボナッチ家は十三王家の中でも特殊な家系で、とある役目を課せられていました。」


 「その役目ってのにテオドールくんが関係あると。」


 「えぇ、フィボナッチ家の当主には時の天帝の直系の子供が就任します。そして天帝に何かあった際の予備の身体を用意する事を目的としています。だたその役割が果たされるのは直系に何かあった場合に限りますがね。」


 「予備って?」


 予備という言葉が何を指しているの分かり兼ねたエルヴィンはリアンに質問する。


 「文字通りの予備です。今のテオドール君のように。自分の血と血かけれ近い程、乗っ取った際の適合率や馴染むまでの時間が早いそうです。」


 「それだと理論上天帝は・・・。」


 リアンの説明にエルヴィンは恐ろしい想像が頭を過り、それを口に出そうとしたがそれを察したリアンが言葉を引き取る。


 「ご想像の通りです。対外的には天帝は代替わりしたように見せていますが、初代天帝から最後の天帝までの数千年の間・・・実質ひとりの天帝によって支配されていたのが、クィントゥス朝という国です。」


 「直系に何かあった場合って言っていたけど、それって・・・。」


 今一つ話を理解出来ていなかったアヤメは気になった部分を口にする。


 「そうですね。一例ですが、天帝の実子が夭折(ようせつ)した場合とかですかね。」


 「自分の子供に何かあった時の予備って事は・・・。」


 自分で口にしてやっと話の意味を理解したアヤメからその先の言葉が紡がれる事は無く口の中で消えていく。そして一言零れる。


 「それって・・・。」


 「本来であれば許されない事です。ですが実子であろうとテュラノスとっては次の自分の身体程度にしか見ていない・・・という事です。」


 「それじゃ、テュラノスという名前は誰の事を指しているの?」


 素朴なアヤメの質問であったが、周りの研究員がにわかに騒めき始める。クィントゥス朝の歴史を調べる中で歴代の天帝の名前はほとんど出て来ない。少ないながらも登場するのが最後の天帝と考えられていたテュラノスであった。その答えが今、目の前で提示されたのだ。


 「では、テュラノスという名は・・・。」


 「はい。初代天帝の名です。つまりそこから続く歴代天帝の全てがテュラノスという事になります。なので天帝を継いだ時にテュラノスという名も継ぐという体裁を作ったわけです。」


 自分達の置かれている状況を忘れ、知的好奇心を満たす出来事にユークリッド機関の研究員達が子供の様にはしゃぐ姿をポカンと見つめるアヤメ。そしてそんなアヤメの姿を眺めながら笑みが零れるセリア。


 ほんの一時ではあるが和やかな時間が調査隊の中を流れていく。


 天帝にまつわる話を終えるとリアンは次にクィントゥス朝の崩壊について話を始める。よくある話ではあるがテュラノスの独裁による恐怖政治は徐々に不満を募らせていった。それは民草だけではなく貴族にまでおよび十三王家も天帝派と反対派に分かれていった。


 各地で小規模ながら反乱が相次ぎ、それはいつしか国全体を巻き込み内乱にまで発展した。血を血で洗う骨肉の争いが全てを飲み込んだ結果、今から約五千年前にクィントゥス朝が崩壊する。その時反対派にいたのがフィボナッチ家とクラヴィウス家であり、封印したテュラノスの精神体はクラヴィウス家が厳重に管理していた。


 そしてテュラノスを封印した地こそが今セリア達がいる場所であるシャングリラであった。


 「リアンくんの話が正しいとして、誰がどうやってテュラノスの封印を解いたんだ。セリアちゃんが初めて訪れた時も。」


 「えぇ、ここまでの道中にある結界は正常に動いていました。」


 「正直に言って私にはどのように封印を解いたのかについてはわかりません。」


 リアンを首を横に振り、俯きながらエルヴィンの質問に対して答える。だがその後にリアンの口から誰がという部分で手掛かりになる情報がもたらされる。


 「テオドール君が依頼を受けたあの日、私はどこか胸騒ぎがして彼の後を付けました。ですが、彼に辿り着いた時には既にテュラノスは復活をはたしていました。その傍らには黒いローブを着た何者かがいたのを覚えています。まだ復活したして間も無い事もあり、封印を試みたのですが、あえなく黒いローブに捕まり閉じ込められました。何とか脱出したのですが・・・この有様です。」


 「リアンさん、その黒ローブについて何か覚えている事はありますか?」


 黒いローブについて尋ねるセリアの勢いに気圧されながらリアンは(おぼろ)げな自分の記憶を辿る。


 「たしか・・・背はそんなに高く無かった、と思います。それと声からして女の人ではないかと・・・。すみません。それ程情報が無くて。」


 自分が覚えている事の少なさにセリアに頭を下げた時、リアンはある事を思い出す。


 「そうだっ。顔は見えなかったのですが、顔の部分に何か記号のような物が浮かび上がっているのが少しだけ見えました。」


 「そうの記号、覚えていますか?」


 「何となくですが・・・。」


 「すみなせん。誰か何か書く物をお願いします。」


 セリアは紙とペンを受け取るとそれをリアンに渡す。受け取ったリアンは記憶を頼りに自分が見た記号を紙に書き起こす。


 「多分、こんな感じだったと思います。」


 描かれた記号にセリアは見覚えがあった。それは魚座を表す記号。それはゾディアックがこの件に何らかしらの形で関わっている事を意味していた。この記号自体はセリアにしか分からなかったが、ゾディアックがらみである事は庭園(ガーデン)のメンバーは直ぐに察した。


 「セリアちゃん、いや・・・庭園(ガーデン)は、この記号について何か知っているみたいだね。」


 セリアを初め庭園(ガーデン)のメンバーの様子に何かを察したエルヴィンが記号に記号について尋ねる。


 「少々因縁がありまして。話をするのは吝かでは無いですが、今はこの事態の収拾を考えましょう。」


 「しょうがないな、でも・・・落ち着いたらちゃんと聞かせてよっ。」


 セリアの言葉に渋々納得すると、リアンに声を掛けるエルヴィン。


 「リアンくん、君にもこれからの探索に同行して欲しいのだけど、体調はどうかな。」


 「かなりの傷を負っていたはずなのですが、問題ありません。むしろ調子がよいくらいです。」


 「それは、よかったっ。」


 リアンの返答にエルヴィンは横目でセリアを見ながら答える。


 「再度封印するにはリアンくんが必要だからね。とは言えどうやってハノイの塔に行くかがまだ解決いしていないんだよね。」


 「であれば、お役に立てると思います。その辺りの事も情報として受け継いでいるので。」


 リアンの返事にエルヴィンに目を向けるセリア。セリアの視線に頷くエルヴィン。


 「それじゃ、今から一時間後に行動に移る。各自それまでに準備を整えてくれっ。」


 エルヴィンの言葉にその場は解散となり、各々の準備に取り掛かる。



 ◇◇◇◇◇◇


 一時間後。


 調査隊はハノイの塔の前に集合していた。


 「リアンくん、ここに入り口でもあるのかい?」


 「いいえ、ありません。色々な情報を受け継いでいますが、これからどのような事が起こるのか私にも分かりません。なので皆さんも十分に警戒してください。」


 リアンの言葉に一同が頷くと、リアンは数歩前へと出るとハノイの塔に掌を当てる。すると、掌を当てた部分がディスプレーの様に光だし文字が浮かび上がる。そこには・・・。


 ”血系認証を開始します。”


 ”十三王家・クラヴィウス家の系譜を確認しました。次に認証キーを提示してください。”


 「|我こそ意志を携える者なり《エゴー・エイミ・ホ・ペローン・テーン・ブーレーシン》」


 ”認証キーを確認しました。管理者権限でシステムを起動します。”


 ”システムを起動しました。”


 「何をしているんだい。」


 リアンの行動をすぐ横で眺めていたエルヴィンが素朴な疑問を口にする。


 「ハノイの塔はテュラノスの居城であると同時に巨大なシステムになっていてシャングリラ全体を監視、管理をしているんです。なのでこれを操作することでハノイの塔へと繋がる道が開けます。」


 エルヴィンの質問に答えたリアンは再び作業に集中する。


 「起動、モード・アナストロフィ」


 ”コマンドを受け付けました。これよりシャングリラの位相を反転します。”


 今まで見えていた景色が僅かに揺らぐと四方にあった塔が一瞬にして姿を消す。そして今まで何もなかった場所に建物が出現し街全体が建物に覆われる。その光景は前世でのセリアには見慣れた高層ビルが建ち並ぶ摩天楼であった。


 「リ、リアンくん・・・これはいったいっ。」


 その光景に息をするのも忘れる程に見入る調査隊。リアンも思いもよらない結果に開いた口が塞がらないでいた。


 「セ、セリアねぇ・・・いったいどうなってるの。」


 セリアがアヤメに目を向けると他の者達とは異なり下を向いていた。セリアが視線を下に向けると、そこには別世界が広がっていた。それは先程までセリア達が見ていたシャングリラが地面を対称として180度回転したような世界であった。


 ハノイの塔が真下に向かって伸び、その先には空が見える。慌てて後ろ見るもそこには先程まで見ていたハノイの塔が変わらぬ姿でその存在を誇示していた。


 アヤメの声で自分達の足元に見える不可思議な世界に気が付き騒ぎが広がり始める。


 「リアンさん、この状況はいったい。」


 リアンも現実離れした今の状況に飲まれていた。


 「リアンさんっ!!」


 もう少し強めの口調で名を呼んだところでリアンは自分がセリアに呼ばれている事に気が付く。


 「リアンさん、この状況分かりましか。」


 「すみません。私にも詳しい事は・・・。」


 「そうですか。四方にある塔も消えてしまったのですが、これは。」


 「そ、それはまだ途中だからです。なのでこれから四方の塔を再度出現させます。」


 リアンはハノイの塔に向き直ると言葉を発する。


 「実行、エイコーン・メタテシス」


 ”対象を選択してください。”


 「対象は(ホプレー)(プテリュクス)甲羅(キュノドゥー)(ケリュポス)。」


 ”対象の現位相への写像を開始します。”


 ”対象の写像に成功しました。”


 消えた四方の塔が音も無く再び姿を現し、逆に足元に見えてる世界にあった四方の塔は姿を消していた。


 「これで塔の攻略が可能になったと思います。」


 「リアンさん、幾つか質問があるのですが、いいですか。」


 「え、えぇ、私に答えらえる範疇であれば。」


 「では、(ホプレー)(プテリュクス)甲羅(キュノドゥー)(ケリュポス)はそれぞれの塔の名前ですか?」


 「どれがどの塔を指すのかは分かりませんが、そのはずです。各塔には守護の為に魔物が配置されているそうで、その魔物から各塔の名前が付けられているそうです。」


 「それともう一つ。今目の前に広がる光景については?」


 「元々シャングリラは研究施設が集められた場所だそうです。そこで何を研究していたのかは不明ですが、ある時この場所は研究施設の保全と資料の保管の名目で封印されたと言われています。ハノイの塔への入り口もろとも。」


 リアンとの会話がある程度終わりを見せた頃合いを見計らったのか《オモイカネ》からリアンが行った操作について報告がなされた。


 『マスター、この街の絡繰りが大まかにですが、解析出来ました。』


 『結果を報告してくれ。』


 『結論から言うと、マスターが当初見ていたシャングリラという場所は幾つかの異なる位相空間を重ね合わせた空間です。個体名・リアンが行った操作は重ね合わせった空間を一つ一つ分離していく事に相当します。』


 『最重要施設であるハノイの塔よりも四方の塔を強固にしているのは。』


 『推測になりますが、四方の塔で何らかしら操作しなけば、ハノイの塔への道が開かない。言い換えれば、四方の塔を厳重に管理していればハノイの塔への道は決して開かない、という事になります。その為ハノイの塔よりも強固な機構が四方の塔に施されていると考えられます。』


 『今になって解析が完了した経緯は。』


 『個体名・リアンの行った操作により空間全体に揺らぎ生じた事で干渉するきっかけが得られました。』


 ーーー《オモイカネ》がきっかけすら掴めない程だったと言う訳か・・・。


 『分かった。最後にこの仕掛けは再現可能か。』


 『可能です。必要であればそれ以上の物を。それともう一つ報告がります。大多数の施設は停止していますが、今でもエーテルの供給ラインが動いています。』


 『供給先の施設は特定できるか。』


 『既に特定しています。』


 「リアンさん、一帯にある施設は今も稼働しているのですか?」


 「流石にそこまでは私にはわかりません。何か気になる事でも?」


 「微弱なエーテルの流れを感じたもので・・・。」


 「塔の攻略も進めないければならないけど、セリアちゃんが感じた微弱なエーテルも気になる事だし、攻略の手掛かりを探すためにも街の探索をしよぉ。」


 エルヴィンの提案に一部攻略を急ぐべきだという声をあったが、知的好奇心に勝てるはずの無い研究員達の勢い飲まれて施設の探索を優先する事になった。


 そして、それがセリアに新たな出会いをもたらす事になる。



誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。


【読者の皆様へのお願い】

作品を読み、少しでも「面白い」、「先が読みたいと」と感じた方は、ブックマークと評価をお願いします。

気合を入れて妄想に妄想を重ねて執筆する原動力になります。厨二病感満載の詠唱も考えて行きます。

改めてお願いします。

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