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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第三章 日常編
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第四十九羽. 捜索依頼


 時は今から数刻前に(さかのぼ)る。


 場所は冒険者ギルド・エド支部。ギルドマスターであるミューゼスの下に一報が(もたら)される。その内容とは王族がアルキラール樹海に潜ったまま連絡が取れなくなった、というものだ。しかも音信不通になってから既に三日が過ぎ去っていた。


 エド支部で冒険者を募ろうにも行方不明になった場所が樹海の奥地なため、今いる冒険者では圧倒的に力不足であった。そこで樹海の異変調査の立役者でもあるセリアに白羽の矢が立ったのである。そしてその報が直ちにミストラルへと届けられたのである。


 その結果、余暇を満喫していたセリア達は無理やりに現実へと引き戻される事になった。そしてミストラル支部の一室でギルドマスターであるウリエントから依頼内容の説明を受けていた。


 「で、なんでまた王子様はそんな場所に行こうと思ったんだ?」


 説明を聞いたヴェインの第一声がこれである。当然と言えば当然だろう。この国の第一王子がわざわざ樹海に(おもむ)く必要性は皆無だと言ってもいい。


 「それについては何の情報もありません。行方不明になってから数日が経過しています。早急にこの案件に取り掛かって頂きたい。それと報酬については依頼達成後に王家と交渉する事になります。」


 ウリエントは一方的に話をすると軽く頭を下げ部屋から退出する。セリアはこの依頼を受ける、とは一言も言っていないが、既に受ける事になっていた。そして如何(どう)やら、断ると言った選択肢は与えられていないようである。


 ーーー仕方がない・・・。


 セリアは気が進まない自分の気持ち押し込みアルジェント達に指示を出す。


 「1時間後に出立する。それまでに準備を済ませろっ」


 「承知しました。」


 「わかったよっ」


 「分かったのじゃっ」


 「了解だっ」


 それぞれ返事をすると部屋から出て行く。最後にセリアが部屋から退出しようとした時、ギルド職員から声が掛かる。


 「セリアさん、少しよろしいですか?」


 「なんでしょう?」


 「急ぎの要件ではないのですが、パーティー名が決まっていたら教えて下さい。」


 「でしたら、庭園(ガーデン)でお願いします。」


 「分かりました。庭園(ガーデン)ですね。」


 ギルド職員はパーティー名を復唱すると、そそくさと業務へと戻って行く。



 ◇◇◇◇◇◇


 一時間後セリア達の姿は数日前までエルダードワーフの集落だった場所にあった。


 「セリア様、ここは・・・いったい・・・」


 「異変調査で立ち寄ったエルダードワーフの集落だった場所だ。」


 「だった、とはどういう事でしょう?」


 「ちょっと色々あってな、ここに住んでいたエルダードワーフはラピュタに移住してもらった。」


 「で、何でここに来たんだ?」


 辺りを見渡しながらヴェインが尋ねる。


 「そんな大した理由はないが、私が知る限りにおいて樹海の最奥かつ比較的安全な事。それとここから少し離れた場所で第一王子御一行と遭遇したからだなっ。」


 「えっ、セリアねぇ、王子様と会ったの?」


 「会ったというかちらっと顔を見た程度だ。」


 「アヤメは王子様に興味があるのかっ?」


 「多少は興味があるけど。」


 「おっ、嬢ちゃんも女の子ってわけかっ!」


 「違う違う、そんなんじゃない。こんな無謀な事するバカはどんな奴なんだろぉって思っただけっ」


 「この国の第一王子に向かってバカはいけませんよ、アヤメさん。」


 「はぁぁいっ」


 「そこまでだっ。私はここで準備を始める。その間に周辺の調査を頼む。日がもうじき傾き始める。調査は2時間だっ。解散っ!」


 セリアの解散の声が掛かるとアルジェント、アヤメ、ヴェイン、メルディナの4人とテトラとイロハの2匹が四方に散って行く。


 残されたラクスが一鳴きすると集落を包み込むように結界が形成される。一仕事が終わったラクスはセリアの身体を駆け上り定位置だと言わんばかりに頭の上で(くつろ)ぎ始める。そんなラクスを一撫でするとセリアが設営を開始する。設営と言ってもここにメルディナの屋敷を設置するだけなので何の苦労も無い。それよりも皆の夕食の準備に時間がかかる。


 「さて、始めるかっ」


 厨房に入ったセリアは夕食の準備に取り掛かる。まずはジャガイモを千切りにして水にさらす。その間にベーコン、ホタテ、エビも触感が残る程度に細かく刻んでいく。ジャガイモの水分を拭き取り、その他の具材と一緒にボールに入れ塩コショウで味付けをし良くなじませる。そこにといた卵を入れ馴染ませる。さらに薄力粉を入れ念入りに混ぜる。


 熱したフライパンに油を引くとそこにボールの中身を投入する。軽く形を整えると弱火でじっくりと火を通していく。


 火が通るまでの間にセリアはソース作りを始める。玉葱、セロリ、ニンニクをみじん切りにしていく。鍋に油を引くとニンニクのみじん切りとローリエの葉を一枚、ある程度火が通ったら玉葱、セロリのみじん切り、塩コショウをして炒めていく。最後にざく切りにした完熟したトマトを入れ煮込んでいく。口当たりを良くするためにトマトは皮を剥いておく。


 ジャガイモ料理の方はある程度火が通ったら裏返し蓋を閉めて蒸していく。完全に火が通ったら強火で両面をからっと仕上げる。大ぐらいのアヤメに従魔であるテトラ、イロハがいるため一枚では全くもって足らない。なので同じもの後数枚作る必要がある。


 そうこうしている内に辺りを調査している一行が戻ってくる。厨房にヴェインが顔を見せる。


 「お、いい匂いがするなぁつ。セリア、戻ったぞっ。」


 「お帰り。出来上がるまでに今しばらく時間が掛かるからみんなには風呂に入るなりして寛いでくれ、と伝えてくれ。」


 「それは構わないが、報告はいまするか?」


 「夕食の後にしよう。」


 「いいのかそれで。急ぎの依頼なんだろっ」


 「急ぎの依頼なのは確かだが、王族の生死なんてどうでもいい、私にとってはねっ。」


 口を閉ざし調理をしているセリアの後ろ姿をじっと見つめるヴェイン。


 「なんだ、私に決定に不服かっ?」


 「いいや、そう言う訳じゃない。ただそれが本心なのかと。」


 「行方が途絶えて3日以上経っている。はっきり言って生存は絶望的だろう。生きているに越したことはないが、そうで無い場合・・・それはそれだ。今出来る事は捜索に備えてコンディションを整える事だ。」


 「あぁ、わかったっ」


 「なら、ヴェインも出来るまで休んでろっ」



 ◇◇◇◇◇◇


 セリアが料理を作り終える頃にはひとっ風呂浴びた面々がダイニングで腹を空かせ、出来上がるのを今か今かと待ち構えていた。


 アヤメは目を輝かせながら厨房から出て来たセリアを見つめる。そんな期待の籠った目をするアヤメの眼の前でセリアは作った料理を並べていく。大人組には冷えたエールを、子供組には、と言ってもアヤメしかいないが、冷えたオレンジジュースを。


 勿論、従魔組の分も配膳する。従魔組の料理は少し冷ました物を用意している。


 「セリアねぇっ、僕もエールがいいっ」


 全員が席に着くとアヤメからエールのリクエストが飛ぶ。


 「ならば、妾のを少しやろう。」


 メルディナから差し出されたエールに口を付けると。


 「うわぁぁぁぁぁぁぁっ。」


 アヤメは何とも言えない顔をして、急いでジュースを流し込む。


 「やはりアヤメにはお酒はまだ早いのじゃ。お子様らしくジュースを飲んでおれっ。」


 まだ口の中に違和感があるのかアヤメは空になったグラスに並々とジュースを注ぐと再び煽る。そんなアヤメの横で勝ち誇った顔をしながら残っているエール一気に流し込むメルディナ。そしてそれをジト目で睨むアヤメ。そんな様子を眺めていたセリアにメルディナから声がかかる。


 「セリアよ。今日のこの料理はなんて言うのじゃっ?」


 「私のオリジナルだから名前は無いが、ガレットとかに近いのか・・・」


 「そうか、まぁ、名前など無くとも美味しいものは美味しいからのっ。では頂くのじゃっ。」


 メルディナに言葉に他の皆も次々に料理を口に運ぶ。


 「美味しいのじゃっ。この少し酸味の効いたソースがよく合うのじゃっ」


 「確かに美味しいな、これはっ。」


 「セリア様とても美味しいです。」


 「セリアねぇ、すごい美味しいよ。」


 口に頬張りながら話すアヤメの感想は若干聞き取りずらかったが、言いたい事は理解出来た。美味しそうに食べる皆の姿を見ながらセリアも料理へと手を付ける。


 和やかの雰囲気のまま夕食の時間が過ぎ去り、セリアは調査結果について報告を受けていた。それぞれの前には葡萄味のゼリーと温かいお茶が並んでいる。


 ここから西に2キロメートル程いったところに、戦闘の痕跡と血らしき物が見つけた、と言うのがヴェインからの報告であった。さらに周囲に落ちていた盾も持ち帰っていた。


 セリアはその盾に見覚えがあった。セリアが助けた騎士団が持っていた物に間違いが無かった。さらに盾に刻まれた紋章から捜索対象の騎士団である事が確定した。


 早めに就寝して明日は朝早くから捜索に乗り出す事を確認するとその場を解散する。



 ◇◇◇◇◇◇


 次の日の朝、東の空が白む頃にセリア達は行動を開始した。そして既にセリア達の姿はヴェインが発見した戦闘の痕跡が残る場所にあった。


 「ここから、どうやって探すのじゃっ」


 「それは、問題ない。」


 セリアの目にはかなり薄れているが血に残るエーテルの残滓が見えていた。そしてこのエーテルと同じ波長を有する物を既にマッピングしていた。それを全員に共有すると直ちに行動に移る。


 密林に広がる樹々を糸を縫うように進んで行くセリア達。その移動速は一般的な冒険者を遥かに凌駕するものだった。


 「セリアねぇ、前方に何か遺跡らしきものが見えるよっ」


 アヤメは千里眼で捉えた情報をすかさず共有する。そして暫くすると視界が開け遺跡がその姿を見せる。アヤメから報告を受けた時、セリアの探知にはこの遺跡が引っかかっていなかった。遺跡を眼の前にその理由がはっきりとした。この遺跡全体に認識阻害に結界は施されていた。セリアの探知にも引っかからない程の。


 では、何故アヤメはそんな遺跡を発見出来たかと言うと、アヤメの千里眼にはそう言った結界が施されていても無効化する能力が備わっているからである。


 セリア達は遺跡周辺の調査した後、遺跡に足を踏み入れる。そして早々に捜索対象者の保護に成功する。遺跡に入るとかなり大きな空間が広がっており、そこに捜索対象である第一王子であるルーファウスが有する騎士団の姿があった。騎士団の中には傷つき横たわる者、既にその命が尽きている者と凄惨な状況がそこにあった。


 「誰だっ!」


 遺跡内に響き渡るセリア達の足音に騎士団の一人が剣を抜き放ち警戒感を示す。


 「ここにいるのはルーファウス殿下とその騎士団で相違ないかっ。」


 セリアは敵意が無い事を示すため両手を頭の上に上げながら一歩前へ出ると、自分達に警戒感を示す騎士に問いかける。


 「・・・だったらどうだとっ。」


 「私達は冒険者です。殿下達の捜索をギルドからの依頼されています。」


 「またしても其方(そなた)に助けられるとは・・・」


 奥から大柄の男が姿を現す。名前は聞かずにいたが、セリアはその男に見覚えがあった。そうヤトノカミの出来事の前に助けた騎士団にいた人物。セリアが見た限り騎士団で一番の実力であろうその男に。


 「あの時、忠告したはずだが・・・何故即座に引き返さなかったっ。」


 「こちらとしても・・・引き返せない事情というものがあってなっ。」


 目の前の男は疲れた表情を浮かべながらセリアの問い答える。


 「それをここで追求しても意味がないので、まずは傷付いている人達の治療をしましょう。」


 「助かる・・・、えぇっと・・・」


 「まだ名乗っていませんでしたね。私はセリア。ローレル所属の冒険者です。」


 「私はルーファウス殿下より騎士団を任せられている、ガルムだ。よろしく頼む。先程ギルドの依頼と言ったが・・・ローレルの冒険者が何故?」


 「それには・・・色々と理由がありまして・・・。それよりも遺体をこのままにはしておけないので私が運びます。それとどんな事情があるにせよ、これからは私の指示に従ってエドまで戻って貰います。」


 「殿下に判断を仰ぐ必要があるが、可能な限りの説得を試みようっ。」


 その言葉を聞いたセリアは並べて置かれていた遺体をストレージへを入れる。眼の前にある遺体が一瞬で消えるのを目の当たりした騎士は再び剣を抜き放ち、その剣をセリアに向けながら叫ぶ。


 「貴様、一体何をしたっ!」


 「止めないかっ。直ちに剣を納めろっ!」


 「しかし・・・」


 その騎士はガルムの制止に納得の行かない顔をしながら剣を鞘に納める。騎士達のそんなやり取りを気にも止めずセリアは指示を出し始める。


 「アル、アヤメ、ストレージ内のエリクサーを使用して構わないから、怪我人の手当てを頼むっ。」


 アルジェントとアヤメは頷くと怪我人の下に向かい始める。


 早々に対象者を保護出来たが、この遺跡に暫く留まる必要性が感じていた。エリクサーで怪我は何とかなるが、失われた血が完全に戻るわけでない。さらに言えば疲弊した精神状態はどうしようもない。


 「ヴェインは遺跡内、メルは遺跡周囲の偵察を頼むっ。」


 「了解だっ。」


 「任せるのじゃっ。」


 ヴェインとメルディナが散って行くが、即座にセリアを呼ぶメルディの声が遺跡に響く。


 「セリアよ、こっちに来るのじゃっ!」


 メルディナが入り口に手をかざすと手が触れた場所から何かが波打ち広がっていくような現象をセリアは目撃する。


 「これは・・・。」


 「どうやら妾達はこの空間に閉じ込められたようなのじゃっ。」


 「どうやら其方(そなた)らも同じようだなっ」


 声に振り返ると、こちらに歩み寄るガルムの姿があった。。


 「其方(そなた)らならもしかして、と思ったが我々と同じようだな。我々がここに留まっているのは、ここは何故か魔物に襲われない、と言うものあるが、ここから出られないとからと言うのが一番の理由だ。」


 「ここから出るのに心当たりはっ?」


 「我々には見当が付かない・・・」


 セリアの問いにガルムは顔を横に振り答える。


 「殿下ならもしや・・・。」


 小さな声でガルムはルーファウスの名前を出す。


 「そこで何故、殿下が?」


 「此度の一件は殿下が言い出し事でな・・・なので殿下ならもしやと思い・・・」


 「それで、殿下はどこにっ。」


 「馬車の中でお休みになられている。」


 「殿下がお目覚めなられたら、話を聞きましょう。最悪この遺跡、いや・・・迷宮(ラビリンス)を踏破する必要が出てきました。こちらはそれを念頭に準備を始めます。」


 「承知した。」


 セリアに一礼するとガルムは休憩中の騎士団の下へと戻って行く。


 「セリアよ、良いのか?」


 戻って行くガルムの後ろ姿を眺めながらメルディナはセリアに問いかける。


 「何かあるなら直ぐに聞きたいが、王族相手に無茶は出来ない。それにこの現状では今聞くのも後で聞くのもそう大差ない。」


 『セリアっ、いいか?』


 『何かあったか?』


 『魔物の(たぐい)は全くいない。だが大きな扉に阻まれてる。どうやって開けるかは皆目見当がつかんっ。』


 『分かった。一旦戻って来てくれっ』


 『了解だっ。』


 ヴェインとの念話を終えたセリアは目に見えない壁に自らの手を添える。すると先程と同じように空間に波紋が広がって行く。


 『これを解析出来るか、《オモイカネ》』


 『可能ですが、マスターがこの迷宮(ラビリンス)を攻略する方が早いと思われます。』


 『それなら・・・それで構わない。何かの時に役に立つかもしれないしな。』


 『それでは解析を始めます。』


 広がって行く波紋を見ながらセリアはミストラルでの余暇に後ろ髪を引かれる思いとは裏腹にこの迷宮(ラビリンス)の攻略に胸踊るものを感じていた。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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