表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第三章 日常編
54/131

第四十八羽. 事後処理


 明くる日、アルジェント達が行動し始めたのは日が中天に差し掛かろうとする、そんな時間であった。ムリエルと交戦した昨晩の出来事はアルジェント達の中で(とど)めているためギルドへの報告は行っていない。それでも盗賊関連の後処理で何やかやと対応に追われていると宿へと帰り着いた時には東の空が明るくなり始めていた。


 「あぁぁ、まだ眠みぃ。」


 ヴェインがまだ眠気が取れない顔とぼさぼさの髪を掻きながら階段を降りてくると。


 「随分とお疲れのようだなっ」


 「おぉ、セリアかぁ。いつこっちへ?」


 そう言いながらセリアの真向かいの席へと座る。


 「私もついさっき到着したところだ。昨日の事はアルから聞いた。」


 話に登ったアルジェントが丁度セリアの昼食を手に奥から姿を見せる。


 「ヴェインさん、食事はどうされますか?」


 「頂くよ。」


 「わかりました。少しお待ちください。」


 セリアの昼食をテーブルに並べ終えると、アルジェントは再び奥へと姿を消す。


 「で、どうするんだ?」


 「どうするとは?」


 「決まってんだろぅ。ゾディアックの事だっ。」


 「どうするも何も、居場所も分からない以上、考えてもしょうがない。今はほおっておくしかないな・・・。」


 「セリアの言っている事も分かるが・・・」


 「その内向こうから仕掛けて来るさっ。それよりも余暇を楽しむ事を考えてらどうだっ。」


 「余暇・・・?」


 「あぁ、暫くはここで休暇だっ。」


 「休暇ってどれくらいだ?期間は考えていないが・・・7日くらいかな。」


 「了解だっ。ところで昨晩の主役はまだ寝てるのか。」


 「アヤメだったらメルと一緒に出かけてる。」


 「若いってのはいいねぇっ。メルは精神年齢が若いってだけかもしれんが。」


 自分の言った事にヴェインが軽く笑っていると。


 「妾がの精神年齢がどうしたとっ」


 「あぁ、アヤメと一緒だ、と・・・」


 声のする方にゆっくりと顔を向けるとそこには出かけていたはずのアヤメとメルディナの姿があった。


 「お早いお帰りで・・・」


 「ヴェインが妾の無事を願っていたとはのぉ。」


 メルディナはヴェインの首に腕を回すといじり始める。


 「ねぇ、僕ってそんなに幼く見えるっ!」


 アヤメはそんな言葉と共に食事中のセリアに詰め寄る。


 「・・・」


 答えに詰まっているセリアを見てアヤメはショックを受けたような顔をしてその場で落ち込み始める。


 「アヤメっ。な、なんじゃその反応はっ!」


 ヴェインに絡んでいたメルディナは次の標的としてアヤメをロックオンした。


 「妾と同じ精神年齢ということは妖艶な大人の女ということなのじゃっ!」


 「誰もメルの事をそんな風に思ってないよ・・・」


 アヤメは未だショックといった顔のままメルディナに反論する。


 「メル、長生きし過ぎて精神年齢をどこかに置き忘れてきたんじゃないのっ」


 「アヤメ、妾に喧嘩売っているかぁっ。」


 「メルがそのつもりならっ。」


 パンッッ!!!


 その時、何かを叩く音が響き渡る。口喧嘩をしていたアヤメとメルディナは音のする方へと視線を巡らせる。その音の正体はセリアが両手を叩く音であった。


 「二人共そこまで。他のお客さんにも迷惑をかけます。どうしても続きがしたいの・・・なら・・・」


 セリアの目がスッと細くなり鋭くなるを見たアヤメとメルディナは背筋が寒く成るのを感じ。


 「セリアねぇ、ごめんなさい。」


 「妾も申し訳ないのじゃ・・・」


 セリアへと二人仲良く頭を下げるのだった。そんな空気の中、ヴェインの食事を手にアルジェントが姿を見せる。


 「何かあったのですか?」


 「何でもない。兎角アルが気にする事でもない。」


 セリアが一言返すだけだった。


 「セリアねぇ、あのさぁ。」


 場が静まっている所にアヤメが遠慮がちに声をかける。先程事がある為かアヤメは声を掛けずらくなっていた。


 「どうした、アヤメ。」


 「市場で色々と買ってきてんだ。セリアねぇ、手料理が食べたくて・・・」


 縮こまって、遠慮がちにそして上目遣いのアヤメにやり過ぎたな、と思ったセリア。


 「わかった。何か作ろう。とは言っても厨房を借りないとな・・・」


 「それについて問題ありません。こんなこともあろうかとここのご主人に厨房を借りる許可を既に得ています。」


 「し、仕事が早いな・・・」


 「主の行動を先読みし支障が無い様にするのが、私目の仕事ですから。」


 「そ、そうか。ありがとう。」


 その言葉を聞いたアルジェントは満面の笑みで頭を下げる。


 「セリア様、借りる際に条件がございまして・・・」


 「条件って?」


 「出来上がった物をここのご主人にも、という事です。」


 「わかった。それに他の人の感想も聞いてみたいしな。」


 「ところで市場で何を買ってきたんだ。」


 「取り敢えず沢山っ。」


 「こやつ、行くところ行くところでここからここまで、みたいな買い物をしとったのじゃっ」


 呆れたような口調でメルディが横から口を挟んでくる。その言葉を聞いてセリアは直ぐにストーレージの中を確認する。そこには果物に野菜、燻製肉から魚介類とあらゆる物が大量に格納されていた。


 「あ、アヤメ・・・この量はいったい・・・」


 「こんだけあれば長旅があったとして大丈夫かと思って。それにセリアねぇのストレージは時間経過しないし、いいかなぁ、と思ってっ」


 メルディの要望なのだろうが大量のお酒も格納されていた。


 ーーー買ってしまったものはしょうがないか・・・。それに実際、食材は大切だしな・・・。


 「メルもたべるか?」


 「勿論、妾も食べるのじゃっ。」


 「アルも昼食はまだだろ。ヴェインはどおする?」


 「それじゃ、俺も少しだけ頂こうかな。」


 「腕によりをかけて作りますかっ。」


 「私もお手伝いします。」


 そう言ってセリアは立ち上がると着ているコートを椅子の背もたれにかけると厨房へと姿を消していった。アルジェントもセリアの後を追っていく。



 ◇◇◇◇◇◇


 「こちらの我儘を聞いて頂いてありがとうごいます。」


 厨房で宿の主人に礼を述べるとセリアは早速準備へと入る。もう少し時間があればパエリアを作りたいところだが、ここは定番化しているパスタ料理を作る事にした。


 パスタを茹でる準備をアルジェントに任せると、セリアはストレージからホタテ、イカ、小さめのエビを取り出し下準備を始める。因みにアルジェントに手伝いをお願いしているが、料理の準備やち下ごしらえだけであればその優秀さを遺憾無く発揮する。どうも実際の調理や味付けに問題があるのだろう・・・セリアはそう理解していた。


 セリアはホタテ貝を手早く開くと身を貝から外す。そして可食部分である貝柱以外を取り除く。アルジェントもセリアを見ながらホタテの下準備を手伝うが、その手さばきは本当に始めてか、と思うほどであった。セリアはホタテをアルジェントに任せるとその他の下準備に取り掛かる。そしてホタテ、イカ、エビと手際よく下準備を終わらせると軽く茹で火を通す。次にオーク肉から作ったベーコンを一口大に切り分け、ニンニク、玉ねぎをみじん切りにしていく。


 一通り下準備が終わるとフライパンに油を入れ、ニンニク、玉ねぎのみじん切りを投入する。焦がさないよう気を付けながら玉ねぎの甘味を引き出すようにじっくり炒める。その次にざく切りにしたトマトを入れ、塩、胡椒を加え軽く混ぜる。そしてホタテ、イカ、エビを入れると7~8分程煮込む。


 茹で上がったパスタを皿に盛り付けると、シーフードトマトソースをかける。そして彩にバジルをみじん切りにしたものを振りかける。


 こうして、シーフードトマトパスタの完成。


 厨房から戻ってきたセリアは自分が作った料理を美味しいそうに食べ、楽しく談笑するアルジェント、アヤメ、ヴェイン、メルディナの4人の姿が映る。


 ーーーこれだから料理を作るのはやめられないな・・・


 「セリアねぇ、このパスタ、すっごい美味しいよっ!」


 立ち止まって眺めているセリアに気が付いたアヤメの第一声が響き渡る。


 この後、セリアは宿屋の主人に泣きつかれて作り方のレクチャーをする事になる。そして簡単にパスタや米料理で手軽に出来そうなレシピを伝授する事になり、この休みの中で時間を作る事を約束させられたのだった。



 ◇◇◇◇◇◇


 昼食が終わり解散となった後、セリアは宿屋の主人と雑談に花を咲かせていた。ほとんどがセリアの知るレシピを主人が嬉々として聞いてると言った具合であったが、セリアからはここら辺の風土や郷土料理、その他にはこの街の政情やちょっとした噂話について聞いていた。


 「セリア様・・・ちょっとよろしいですか・・・」


 遠慮がちにセリアを呼ぶアルジェント。


 「アル、どうかしたか?」


 「ギルドの方が来られています。」


 アルジェントに促されてホールに出ると、そこには40代後半の人族の男性が佇んでいた。


 「あなたが昨日、突入したパーティーのリーダーですかな?」


 「はい、そうですが・・・何か?」


 「昨晩行われた盗賊退治の後処理の事でご相談あるのでギルドまでお越しいただきたい。」


 「これからですか?」


 「申し訳ございませんが、このままお越し頂きたいです。」


 ーーーこれは断れる雰囲気じゃないな・・・。


 「分かりました。アルも余暇を楽しんでくれっ」


 そう言い残すとギルドの使いの後に続いてセリアは宿屋を後にした。


 ギルドに到着すると大きめの部屋に通されたセリア。そこには先客が既にいた。そして上座に小太りのいかにも自分偉いですと言った身なりをした人物が座っていた。そしてその後ろには執事らしき者が控えている。言うまでもなく貴族である。


 ギルド職員に案内されてセリアが入口に一番近い席へと座るとその貴族は明かに嫌悪感を示し、侮蔑と下卑た視線をセリアへと送る。


 「さて、揃ったので始めさせて頂きます。」


 セリアが席に着くのを確認すると、長い髭を蓄えた初老の男が口を開く。


 「まず初めに私は冒険者ギルド、ミストラル支部ギルドマスターのウリエント。今日の議事、進行を務めます。そしてこちらにおられるのがミストラルを治めるコルネオ・レジオット子爵です。」


 ギルドマスターに紹介されたこの貴族の名前にセリアは聞き覚えがあった。何せつい先程、宿屋の主人と話の中に出て来たからだ。この貴族、ミストラルの住民からは(すこぶ)る評判が悪い。この街を治めるようになったのは今から3年前。それまで治めていた貴族を政争の果てに追い出す事に成功し今の地位に着いたともっぱらの噂だ。そしてこの3年で税率が跳ね上がり、表向きは賑やかで活気づいた街であるが、住民の暮らしもままならない、と言うのがこの街の現状だと。


 セリアが眼の前にいる貴族の評判を思い返している間に一通りの紹介が終わると、コルネオの後ろに控えている執事が口を開く。


 「我が主であるコルネオ様の要望をお伝えします。」


 口を閉ざした執事は出席者を一通り見渡すと再び口を開く。


 「一つ、今回捕縛した盗賊を全て引き渡す事。一つ、盗賊のアジトで得た物は一旦全て納める事。一つ、報酬については納めた中から再分配を行う事。一つ、速やかに上げた条件を実施する事。以上です。」


 「ふざけんなっ!」


 告げられた内容に不満を抱いた冒険者が立ち上がり叫ぶ。当然の反応である。今回の作戦にこの貴族は何も関わっていない。勿論ミストラルの防衛の為にいる騎士団を動かしてもいない。例えこの作戦に参加していたとしても冒険者が得た物をこの様に収奪して良いはずがない。明らかにギルドに対する越権行為である。そもそも何の権限も有していない。


 「その汚い口を早々に閉じろっ。この私自らここに足を運んでやったのだ、ありがたく思えっ。」


 そう言い残すとコルネオは足早に部屋を出て行った。そして嵐が通り過ぎた部屋の中は静まり返っていた。


 「ギルマス、あの要求を飲むのですか?」


 先程声を荒げた冒険者がギルマスと詰め寄る。


 「本来、ギルドは独立した組織。貴族とはいえあのような要求が通る事など有り得ないと知っているはずだ・・・」


 「拒否した場合、どうなるのでしょう。」


 他の冒険者が新た疑問を投げかける。


 「多分、ミストラルの騎士団を動かしてくるでしょう。」


 ギルマスの返答にこの場にいる冒険者達は押し黙る。


 「そうだっ。ミストラルのBランク以上の冒険者や他の支部の上位冒険者を招集出来ませんか?」


 「確かにその手は友好だがこの支部の上位冒険者はみなで払っている。呼び戻すにも時間がかかってしまう。他の支部への打診しても同様だろう。」


 「それはコルネオも分かっていると思います。」


 そこでセリアが口を開いた。


 「呼び戻すなり、打診するなりはした方が良いと思いますが、多分ミストラルに到着するよりも前にギルドの制圧に及ぶでしょう。そうなれば街へ入る事も難しくなるでしょう。」


 「セリアさん、何か良い案をお持ちではないですか?」


 ギルマスの言葉に考え込むも、セリアには何も浮かんでいなかった。だがこの事件は思いの外速く解決する事になる。


 『マスター、昨晩、アジトから押収した物の中に厳重にロックの掛かった箱が存在します。』


 突然の報告が《オモイカネ》から上がる。


 『それは物理的なロックなのか?』


 『否、魔法的な封印です。特定の鍵でしか開かない魔法が施されています。また無理に開けようとする中身が消失するようになっています。』


 『その箱を開ける事は可能か?』


 『既に解除しています。中身も無事です。』


 ーーー流石、《オモイカネ》さん。仕事が早い・・・。


 箱の中身に目を通すセリア。


 ーーーなるほど・・・。


 コルネオが何故あそこまでの強行に出たのかをセリア理解した。そして今まで黒影(くろかげ)が何故捕まらずにいたのかを。ミストラルの地下に広がる地下水道が如何に広大なとはいえ、やりようはいくらでもある。出来なかったでは無く、しなかったのである。コルネオと黒影(くろかげ)は繋がっていたのだ。


 そして更に隣国であるオージスト帝国とも内通していた。黒影(くろかげ)の首領は帝国と繋がっており、コルネオは帝国が攻め込んで来た際には無条件にミストラルを明け渡す算段までついていた様だった。


 「ウリエントさん、この一件私に預けてもらえませんか?」


 「構わんが・・・何か妙案が?」


 「コルネオは軍を動かすつもりはさらさらありません。」


 セリアは手に入れた資料を机の上に広げると説明を始めた。そしてコルネオの要求をどう対処するかを考えあぐねている様に装う事を依頼した。


 そしてその日の夜、人々が寝静まり頃、複数の馬車がミストラルを出立し東へ向かった。先頭の馬車にはミストラルを納めるコルネオ・レジオット子爵とその家族、そして執事が。それに続く馬車には不正に貯め込んだコルネオの資産が可能な限り詰め込まれていた。


 コルネオは盗賊のアジトが制圧されたという一報を聞いて黒影(くろかげ)の繋がり、帝国との密約が露見する前にミストラルから脱出する事を選んだ。そして自分が押し付けた無理難題に苦慮し、押収品を調べるまでの時間を稼ごうとした。そしてその間に、と言った具合である。


 だがその馬車は目的地に到着する事無く忽然と姿を消す。翌日不正の密告による立ち入りでコルネオが行方不明になっている事が判明する。


 こうして、本当の意味での盗賊討伐依頼が完遂された。


 そして世間がコルネオの行方不明に湧いている中、セリア達はミストラルでの休暇を十二分に満喫していた。ここ数日、昼食は浜辺でバーベキューを楽しむのが慣例となっていた。その日も浜辺でのバーベキューを楽しみ、いつもの様にくつろいでいた。


 その日、7日間を予定していたセリア達の休暇は2日を残して破られ事になる。ギルドからの招集依頼が齎されることで。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ