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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第二章 始原の迷宮編
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第三十五羽. イフリート従魂戦・後半


 『マスターッ!』


 《オモイカネ》の呼びかける声でセリアは我に返り、球体に向かって攻撃を仕掛ける。セリアの攻撃は全くダメージを与えていなかった。


 『解析した結果、あの球体にダメージを与える事は不可能です。特殊なフィールドによって球体に直接ダメージを与える事が出来ません。周囲の炎柱を破壊することで特殊なフィールドが解除されます。ただし中央の炎柱は周囲の炎柱の攻略後でないとダメージを与えられないようです。』


 《オモイカネ》のアドバイスに従い周囲にある炎柱の内1本に対して《ツクヨミ》を振るう。セリアの攻撃で炎柱はあっさりと消滅する。そして次の炎柱に対しても同様に攻撃を繰り出そうとしたとき、消滅した炎柱が再びその炎を輝かせた。


 「まさか・・・」


 『そのまさかです。12本の炎柱は同時に破壊する必要があります。さらにその後に中央の炎柱を速やかに破壊しないと、12本の炎柱は再生します。それと周囲の炎柱に対して魔法、術式による攻撃はおすすめしません。』


 「アイスバレット」


 セリアが放ったアイスバレットは外周の炎柱に当たるとダメージどころかエーテルとして吸収されていった。


 「影技(えいぎ)・弐ノ型 刺閃しせん


 悠長に全ての属性を試す時間がないため次に影技による攻撃を試すと、エーテルは吸収されずに炎柱が消えていく。《オモイカネ》のおすすめしない、という言葉の裏付けを取ったセリアは次の行動へと移る。


 そして次の瞬間には今まで何も無かったかのように計13本の炎柱は姿を消す。


 そこで何が起こったか・・・。


 それは至極簡単な事・・・エーテルによる斬撃で周囲の炎柱を消滅させた後、中央の炎柱を切り裂いただけである。ただそれに要した時間が極僅であるため普通なら知覚出来ない程である。


 見上げると球体を包んでいた特殊なフィールドが消失していた。先程まではそのフィールドのせいか少し歪んで見えた球体が今はそれも消えている。


 「さて、これで終わりだっ!」


 セリアが放った斬撃は球体を切り裂くには十分すぎる程の威力を持っていた。だがセリアの放った斬撃は当たる寸前に掻き消える。


 球体から放出された波動によって。


 その波動は心臓が鼓動を刻むように球体を中心に一定間隔で放出される。そして徐々に周囲の空間を歪めてい行く。


 絡まった糸が解かれていくように徐々に球体表面がエーテル化して消えていく。完全に球体が消失し地に降り立ったイフリートの姿は何処と無く神々しくさえ見えた。


 体躯は以前よりひと回り程小さくはなっているが、溢れ出すエーテルは以前に多く、そして何より根本的に何か異なるような雰囲気をセリアは感じ取っていた。背部からあふれる炎は翼の様にも見えた。


 そして何よりもセリアに不明点を色々と教授していた知的な顔が鳴りを潜め、その眼から攻撃の意思しか読み取れなかった。



 ◇◇◇◇◇◇


 「ま、まさか・・・」


 ベルゼビュートはスクリーンに映し出されている光景に驚きの表情を見せる。


 「妾も少々焦ったのじゃ。だがまぁ、こんな感じなのじゃ。」


 驚きを隠せない表情をしているベルゼビュートを横目にメルディナは満面の笑みで答える。


 「ところで・・・ベルゼビュート、契約する際の戦いはこれも含まれているのか?」


 これとはイフリートの変化の事を指しているが、幻獣には戦闘する際に一時的に自身の枷を解除する事でより強大な力を引き出す戦闘形態が存在する。その形態をキュリオスと呼ぶ。


 イフリート・キュリオス・・・。


 それが今、セリアの前に立ちはだかっている幻獣の名である。それは幻獣でありながら神の領域へと至り、云わば神獣と化す。


 「いいえ。キュリオス化は想定外です。このままでセリア様の身が危険です。早急に中止します。」


 「いや・・・かまわんのじゃ。このまま戦闘は続行なのじゃ・・・」


 「で、ですが・・・」


 「わかりました。メルディナ様がそこまで仰るのであれば・・・これ以上、私奴が口を挟む事ではありません。」


 セリアを見つめるメルディナの眼から揺ぎ無い信頼に似た何かを感じ取ったベルゼビュートはメルディナの言葉に従い同様に成り行きを見守る事にした。


 「・・・メルディナ様、1つだけお聞かせ下さい。」


 「何をじゃ?」


 見守ると決めたベルゼビュートであったが、自身が感じている疑問をメルディナに投げかける。


 「キュリオス化したイフリートとの闘いを続行した理由です。」


 「おぬしは・・・セリアの勝利を信じていないのか?」


 スクリーンから視線を外しメルディナはベルゼビュートを見つめ問いかける。


 「・・・今のセリア様ではキュリオス化したイフリートと戦うのは少々重荷だと考えています。もしもの事があってからでは遅いかと・・・」


 メルディナに射竦められたはベルゼビュートは言葉を選びゆっくりと答えた。


 「妾も大した根拠があるわけでは無いのじゃ。」


 そんなベルゼビュートを見てメルディナは肩を竦め自分の考えを語り始める。


 「敢えて言うなら・・・今のイフリートはキュリオス化しようとも本来の力の3割も発揮出来んのじゃ。そもそもキュリオス化は所有者との契約が前提なのじゃ。単独でキュリオス化しても本来の力を十二分に発揮出来ん。さらに周囲からエーテルを供給しようともイフリートに残されたエーテルが少なすぎるのじゃ。」


 ---それに今のイフリートからは理性が感じられないのじゃ。あれではセリアに勝てるわけがないのじゃ。


 ベルゼビュートには大した根拠が無いと言ったが、それなりの根拠を列挙したな、とメルディナは説明をしながら内心思っていた。そして自分が上げた理由はセリアが勝つには十分すぎる理由だと考えていた。それとセリアなら何とかするのではなかろうか、メルディナはそんな気もしていた。


 そしてその結果、追い込まれたセリアが何を見せてくれるのか、今のメルディナはそこに楽しみを見出していた。



 ◇◇◇◇◇◇


 イフリートから感じる存在感にセリアは確かに危機感を抱いていたが、それとは裏腹に楽しさが込み上げて来るのを感じていた。そして顔にはこの戦いで一番の笑みを湛えていた。


 「知性の感じぬ獣に本当の暴力を叩き込んでやるっ!」


 《ツクヨミ》をストレージへとしまうとセリアは無手で構えとる。


 襲い来るイフリートの拳を受け止めたセリアは懐へ入り込むと鳩尾あたりに自身の肘を叩きこむ。その衝撃に一瞬動きの止ったイフリートの腕を取り投げ飛ばす。宙に舞ったイフリートの巨体は勢いのまま地面へと叩きつけられる。


 イフリートへの追撃を試みようとしたセリアはその場を飛び退く。今までセリアがいた場所に何かしらの攻撃が加えられた跡があった。イフリートに目を向けると周りには炎を細長くしたような物が複数浮遊していた。そして先程の攻撃が浮遊している物から行われたをセリアは理解した。


 『あれが何かわかるか?』


 『イフリート専用の宝具だと思われます。』


 『宝具?』


 『八属性幻獣にはそれぞれに専用の武器が存在します。それを宝具と呼びます。そしてイフリートの宝具は炎王の御手(クリカラ)。その能力はエーテルによる非接触式遠距離攻撃です。』


 『それって・・・』


 『そうです。今、マスターが試作までこぎつけたプルーマと同じような武器です。』


 炎王の御手(クリカラ)はまるで意思があるかのように振舞いセリアへと襲い掛かる。イフリートの攻撃だけであれば何の問題もなかったが、炎王の御手(クリカラ)の存在は厄介極まりない物であった。それでもセリアはその全てを躱しながら《オモイカネ》との情報連携を進める。


 『丁度いい・・・試験運転といこうか。《オモイカネ》、炎王の御手(クリカラ)の相手は任せる。それと試験データも頼む。』


 『承知しました。』


 セリアの周りに細長くライフルのような形をした物体が出現した。これがプルーマ。元々はランスロットを仲間にした際に見つけた宝物庫にあったもので、時間を見つけては自身のスキルアップも兼ねて改修を重ねていた。


 当初、プルーマと炎王の御手(クリカラ)のドッグファイトは炎王の御手(クリカラ)の優勢であった。性能差があるため当然と言えば当然の結果であった。だが攻防の中でセリアは炎王の御手(クリカラ)の動作にある一定のパターンがある事を見出す。


 それは炎王の御手(クリカラ)とのドッグファイトに変化を齎す。《オモイカネ》の高度な演算は炎王の御手(クリカラ)の行動を徐々に狭め性能差を覆しプルーマの優勢が決定的になっていった。


 炎王の御手(クリカラ)とのドッグファイトに決着が付き始めた頃、セリアとイフリートの戦いも終わりに近づいてきていた。イフリートはセリアのスピードを捉える事が出来ず一方的な展開へと変わり追い詰められていった。


 自身の戦いの最中、意識をプルーマに向けると優勢ではあるものの動きを止めるまでに至っていなかった。


 ---アイスバイン


 プルーマを通して放った魔法は炎王の御手(クリカラ)の動きを完全に停止させる。そしてその影響はイフリートにも及び動きが止る。


 その一瞬を見逃さずセリアはこの戦いを終わらせるべく行動を移す。


 エーテルを拳に集めると足を踏み込む。踏み込んだ足は地面を砕き、そこから生じた力が効率よく上半身へと伝わっていく。上半身へと伝わった力は腕へと伝わりエーテルと共に拳から解放されていく。


 だがセリアの拳には何の感触も伝わってこなかった。


 セリアの拳は空を切っていた。セリアの拳が当たる瞬間にイフリートの身体が幾何(いくばく)の炎の残滓(ざんし)を残し目の前から消えてなくなった。


 周囲を警戒していたセリアはイフリートの反応を捉えたがその場から動けずにいた。セリアが捕らえたイフリートの反応・・・それはセリアを囲むように配置する12体のイフリート。


 実体化したイフリートは炎の塊と化し一斉にセリアに向かって突進を開始する。その攻撃をセリアは上空に逃れる事で回避した。眼下ではぶつかり、蠢き合い生き物の様に炎が渦巻いていた。


 眼下で渦巻く炎を消し去るべく行動を移そうとしたその時、13体目のイフリートの反応をセリアは捉えた。それはセリアの真上であった。その姿をセリアが目視で確認した時には既に炎の塊と化したイフリートがセリア目掛けて落下していた。


 避けるタイミングを失したセリアは炎の塊したイフリートと共に炎の渦の中へとその身を沈めていく。


 自身の身体が炎に飲み込まれていくその刹那。


 「やれやれ、君は未だに自分の力をちゃんと使えないようだね。」


 聞き覚えのある声に目を開けると、セリアの眼の前には一人の女性が佇んでいた。


 その容姿は自身と同じ兎人属。まさに鏡に映る自身を見ているようであった。声から以前重力から脱出する際に出合った事を思い出すセリア。その時はシルエットしか見えていなかったが、今こうして向かい合うと驚きの言葉しか出てこない。


 だがセリアの言葉は音として空間を広がる事はなく。静けさが辺りを支配していた。


 「この迷宮(ラビリンス)にいる間しか私は君に干渉できない。だが君が何処にいようとも私は見守っているよ。」


 セリアを抱きしめると耳元で囁く女性の声は何処までも優しさに満ちていた。


 セリアをハグから解放すると・・・。


 「さて、もう時間のようだ。」


 その姿が徐々に消えていく。


 「君の枷を一つ外しておいた。力を存分に振るいなさい。そしてまた相まみえる事を楽しみにしています。」


 言い終わるとその姿が完全に消えてなる。そしてセリアの意識も現実へと引き戻される。渦巻く炎がセリアの身体に纏わりつき、焦げた皮膚の匂いが鼻を刺激する。自身の身体が炎によって蝕まれていく様をセリアは目の当たりする。


 ---こんなところで死んでたまるかっ!!!!


 セリアの意思に反応するように溢れ出すエーテルが炎を押し返す。そして徐々に形を取り始め、それは一対の翼を形作りセリアを包み込む。


 やがて炎が晴れた後にはセリアの姿のみであった。


 再びイフリートのエーテル反応が周囲に出現する。そして地より噴き出た炎がセリアを拘束する。


 「ちっ、今度は拘束か・・・」


 炎の拘束を力任せに振りほどくセリア。


 「分身の神髄を見せてやるっ!」


 次の瞬間、12体のイフリートの眼前にセリアが出現する。セリアの拳がイフリートの身体を貫く。貫かれたイフリート達はセリアに吸収されるようにその姿を消す。そして分身体である12人のセリアもその場で消えていく。


 そしてセリアの頭上には先ほど同じように炎と化したイフリートの姿がある。


 「これで終わりだっ!」


 セリアは目を見開きイフリートに最後の技を繰り出す。


 「絶技 毀空(きくう)


 セリアの分身体がイフリートの周りを囲みながら襲い。分身体それぞれが人知を越えた隔絶したスピードを以て相手を滅殺する技である。


 故に絶技。


 セリアの攻撃を受けるたびにイフリートを覆う炎が少しずつ少しずつではあるが小さくなっていく。これは攻撃と同時に《ソウルイーター》でイフリートのエーテルを吸収しているからである。


 終にはイフリートを覆っていた炎が全てセリアへと奪い取られ、その姿を消す。


 「全てを喰らい尽くせっ!!」


 最後、イフリートの身体を拳が貫くと同時にセリアは《ソウルイーター》を発動する。


 『《グリモワール》にイフリートが登録されました。』


 セリアのスキルである《ソウルイーター》によりイフリートが吸収され、この戦いが終了した事を《オモイカネ》より告げられる。


 戦いの緊張感から解放されたセリアの足は立ち続ける事を拒絶した。力が抜けて行く足に身体を支えられなくなったセリアは尻餅をつき、そのまま大の字になって横たわる。


 遠のく意識の中で・・・。


 「よく頑張りました・・・」


 何処とも無くそんな声がした気がした。


 『マスター、お目覚めですか。』


 覚醒していく意識の中で《オモイカネ》の声が頭に響く。


 『すまない。寝ていたようだ。どれくらい寝ていた?』


 『ほんの数分です。』


 『そうか・・・』


 ほんの数分ではあるが身体が大分楽になっていた。それでも身体の至る箇所で悲鳴を上げているのが分かる。その中でも身体のあちらこちらにある火傷の痛みが一番の主張をしていた。


 何とか動く左手でストレージからエリクサーを取り出したセリアはそれを一気に飲み下す。悲鳴を上げていた身体は癒され、体中にあった傷が消えていく。当然火傷の跡もである。


 立ち上がったセリアはさっそく《グリモワール》を確認する。《グリモワール》にはセリアでもアクセスが出来ない領域が幾つか存在する。その内の一つが八属性幻獣を格納する領域である。イフリートを従える事に成功した事でその領域へのアクセスが可能になったのでる。そしてそこにイフリートの存在をセリアは確かに感じた。


 「焔の幻獣・イフリート。我が命に従いその姿を顕現せよっ!」


 セリアの声が響きわたると、小さな火が灯る。それは次第に大きくなり炎となり姿を形作る。


 顕現せしは焔の幻獣・イフリート。


 そしてセリアを前に跪くイフリート。


 「此度は無事試練を踏破した事をお慶び申し上げます。」


 「お慶び申し上げますってその台詞よく言えるな・・・」


 「それも・・・決められた事ゆえ・・・」


 「ところでこの後はどうするんだ?」


 「実にタイミングが良い事だ・・・」


 イフリートの視線の先にセリアも顔を向ける。そこに白髪に執事服の男がいた。


 ---いつからそこに。ここには私以外誰もいなかったはず・・・


 「イフリート、ご苦労様ででした。」


 「我は為すことを成しただけだ。所有者・・・いや、セリアよ、いつでも我を呼ぶが良い。」


 言葉を残しイフリートは姿を消す。


 残されたセリアは十二分に警戒心の籠った眼差しで執事服の男を見つめる。


 「まずは私から名乗らせて頂きます。」


 その男はセリアの視線にも動じずに話し出した。


 「私の名はベルゼビュート。所有者試練を見届ける者です。そして所有者の忠実なる執事でございます。当代で言えばセリア様の・・・」


 ベルゼビュートはその場で跪き、恭しく頭を下げる。


 「ご足労をかけますが、私目の後に付いてきてください。案内したい場所がございます。」


 立ち上がったベルゼビュートはセリアに告げる。


 「わかった。案内してもらおう。」


 これを拒否するのは簡単であるが、ここからの脱出手段がないのも事実であった。念入り探せば見つかるのかもしれないが、今はベルゼビュートと名乗る男に従った方が近道なのは確実だと考えたセリアは同意の意思を示す。


 「承知頂きありがとうございます。」


 そしてセリアはベルゼビュートの後に続き歩き始める。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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