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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第二章 始原の迷宮編
38/131

第三十二羽. 行く手を阻むは


 透明な球体には101階層でセリア達が脱出に奔走している姿があった。それをじっと眺める執事服に身を包んだ白髪の男の姿があった。


 「どうでしたか?」


 「大掛かりなものは存在しないと思われます。取るに足らないものは散見されましたが、いずれも100階層より上層になります。」


 「そうですか・・・わかりました。」


 「ところで、エストリエ、あなたらなあの状況下で脱出できますか?」


 執事服に身を包んだ白髪の男が目の前の水晶を眺めながら自身の後ろに控える女に問う。


 「私ではあの状況下に陥ったら脱出は不可能です。失礼を承知で伺いますが、ベルゼビュート様は如何なのでしょうか?」


 エストリエの問いに対してベルゼビュートと呼ばれた執事服の男はゆっくりと口を開く。


 「そうですね・・・私でも無理でしょう。あのフィールドはいわゆる初見殺し、というやつです。誰もが初日に駆け抜ける事が正解だとは思わないでしょう。そして二日目を迎えると例外なく死が確定すると言って過言ではない状況がその身を襲います。」


 「ベルゼビュート様でも不可能・・・だと仰るのですか?」


 「あの場で発生している重力場は時間と立てば経つほどに、そして次の階層への入り口近づけば近づく程に力を増していきます。水晶を通してでは実感が湧かないと思いますが、最後の最後はわずか距離が永遠とも呼べる距離に感じていたでしょう。そして私ではあの重力場を超える事は不可能です。」


 不可能だと言い切ったベルゼビュートの言葉にエストリエは水晶に映る者の存在の大きさを改めて認識した。


 ---まぁ、そうなった場合にも脱出方法が無いわけで無いのですが、基本的にそれを実行に移す事が不可能です。そして、それを今私達が目撃したわけですが・・・いやはや、やはり恐ろしいお方だ。


 「もうそろそろ、あのお方辿り着く事でしょう。私達もお迎えの準備を始めましょう。」


 「承知致しました。」


 そう答えるとエストリエの姿は闇に溶けるように消えていく。


 「邂逅の時が楽しみでなりません。」


 一言呟くとベルゼビュートの姿もまた闇に溶けていく。



 ◇◇◇◇◇◇


 セリア達は今110階層にいる。


 目の前には大きく重厚な扉が行く手を遮っている。辺りは灼熱のマグマに覆われ立っているだけで体力が削られていくような過酷な環境下にセリア達はいる。


 101階層の草原を無事にに脱出したセリア達は少しの休憩を挟み、102階層へと足を踏み入れた。そこは生い茂る樹々に覆われた密林の階層であった。樹々の間隔が狭く根上がりによって足元が不安定なため非常に歩き難く、それが何処まで広がっていた。


 102階層自体の広さは101階層の草原とほぼ変わらない。何かしらの有事があった場合に走り抜けるには難しい事は明らかであった。


 そしてこの階層も同様に魔物が存在していない。それはセリアの探知からも確かであった。そしてこの先110階層に辿り着く道程においてセリア達の行く手を魔物が阻む事はなかった。また同様に転移関連の術式も阻害されていた。


 セリア達が足場の悪い道なき道を進んでいる中で一人高みの見物と洒落込んでいる者がいる。


 「足場の悪い場所を往くとは難儀なのじゃっ!」


 そんな事を言いながら優雅に宙を舞うメルディナの姿がそこにあった。流石は数千年生きる吸血鬼であるメルディナ。空を飛ぶ事すら可能であった。


 歩き始めて少し経った頃にセリアがそれをメルディナに言うと。


 「何じゃおぬし、空間転移が出来るのにそんな事も出来ないのか。空間転移より簡単なのじゃっ!」


 と返ってきた。


 自分以外に飛ぶ事が出来る者いない状況に優越感を抱いたメルディナは先ほどから揶揄(からか)う様な口調で話続けていた。


 「メル、ウザイっ」


 アルジェントやヴェインは聞き流す術を持っているが、アヤメは(かん)(さわ)っているようで苛立っていた。


 ボソッと呟くアヤメの言葉に反応するメルディナ。


 「なんじゃ、聞こえんのじゃ。妾が飛び方教えて上げても良いのじゃっ!」


 そんなやり取りが先程から続いている中、流石にメルディナを注意すべきだと思ったセリアが振り向いたとき。


 「メル様。」


 「なんじゃ、アル。」


 「ちゃんと前を向いた方がよろしいかと存じます。」


 「ぎゃっ。」


 醜い声を短く発すると太めの枝に顔を打ち付けたメルディナはそのまま地面へと落下していった。


 「メル様、大丈夫ですか?」


 「大丈夫なのじゃ。アルよ。」


 立ち上がりながらアルジェントに答えるメルディナ。


 「何でしょうか?」


 「そのような事はもっと早く言って欲しかったのじゃ。」


 「以後、気を付けます。」


 そう言ってアルジェントは恭しくメルディナに会釈をする。頭を上げたアルジェントはアヤメに顔を向けるとウィンクをする。アルジェントのウィンクで察したアヤメはメルディナに対して溜飲が下がっていく。


 どうもアヤメとメルディナは基本的に精神年齢があまり変わらないようで、気が合う時は合うようで(はた)から見ていると姉妹の様なのだが・・・ああいったいざこざもまた絶えない。まぁ、喧嘩する程中が良い、ともいうので周りは基本的に静観している。


 アヤメがイライラしているのは、この歩き難さ原因の一端でもある。


 ---どうにかならないか・・・


 セリアが考え込んでいると。


 「セリアねえ、吹き飛ばしてもいい?」


 アヤメがとんでもない無いことを言い出した。


 「いくら何でもそれは駄目だ。メルが不老とは言え不死とは限らないだろ。」


 「何を言ってる?メルじゃなくて目の前の樹々の事だよ。」


 「セリアよ、おぬしサラッと酷いことを言うの・・・」


 「あぁ、すまない。ちょっと考え事をしていてな。」


 「メルの事はおいておいて何故そんな話になった?」


 「妾の扱いが酷いのじゃ・・・」


 「師よ、もう少し大人になって下さい。さすればもう少し扱いが向上すると思われます。」


 サジの最後の一言でメルディナは撃沈していた。


 何故吹き飛ばす話になったかというと、至極簡単な発想で吹き飛ばせば今より歩き易くなるから、であった。


 ---順当な発想ではあるが、アヤメはここが何処なのかが頭から抜けているな・・・


 そうでなくてもセリアの目には異様な程に高濃度のエーテルが樹々に大地にと張り巡らされている光景が映し出されていた。そのため吹き飛ばすという行為が危険以外の何物でもない事を感じていた。


 だがセリアは樹々が傷つとどういった反応を示すのか見てみたくもあり、アヤメに許可を出す。とりあえずは木を一本切り倒すことから検証するつもりでいたが・・・。


 「フレイムアロウッ!」


 アヤメが魔法を唱えると宙には十本以上の矢の形をした炎が浮かび上がる。まさか初めから高火力で焼き尽くすとは考えていなかったセリアはアヤメを止めようとしたが、時すでに遅し十数本の矢が目の前の空間に向かって解き放たれる。


 流石に今までの戦いをくぐり抜けてきただけの事はある。使用した魔法自体それほど高位なものではないがその威力は凄まじいものがあった。その証拠に目の前の空間にある樹々は轟音と共に爆散していた。土煙が晴れるとそこには無惨に焦げた樹々とクレーターが広範囲にわたっていた。


 「どうよっ、僕の魔法はっ!」


 「流石です。アヤメさん。」


 アルジェントを始め皆がアヤメの放った魔法の威力を賞賛する中、セリアは目の前の出来事に危機感を頂いていた。


 樹々が焼かれてはげた場所に急速にエーテルが集まり出した。そして次の瞬間に一本の木が生えだす。それを皮切りに次々と木が生えだし急成長する。接触した木々は混じり合いあたかも最初から一本の木であったかのように成長を続ける。


 天高く(そび)える巨木へとあっという間に成長を果たしたが、それだけでは終わらなかった。周りの樹々も飲み込み始める。


 「みんな、下がれっ!」


 眼前で起こっている出来事に呆気に取られている一同にセリアの声が響く。セリアの掛け声に正気になった一同はセリアが下がった位置まで同様に下がった。


 ようやく成長を止めた巨木。


 セリアの掛け声で下がらずにいたら確実に巨木に飲み込まれていた。


 「ご、ごめん。こんな事になるなんて・・・」


 その事実に放心状態となったアヤメはぺたんっと座り込むとボーっとした表情で謝罪を口にする。


 「気にするな、嬢ちゃん。こんな場所にいるんだ・・・何があってもおかしくないさ。むしろ全員無事な事を喜ばなくちゃな。」


 そう言ってアヤメの前にしゃがむとヴェインはアヤメの頭をぐしゃぐしゃっと撫でる。


 「どっかの誰かさんはああなる事が分かっていたみたいだが・・・」


 「あそこまでの反応を示したのは想定外だったがな。」


 「アヤメは可哀想なのじゃ。知っていてやらせたとは、セリアは(ひど)いのじゃ。」


 ヴェインに代わりメルディナが優しくアヤメの頭を撫でる。


 「そういうメルも分かっていただろう。」


 「そ、そんな事はないのじゃ。」


 セリアの言葉にアヤメを自分の頭を撫でるメルディナを睨むが、顔を横に逸らし吹けもしない口笛を吹こうと必死なメルディナの姿があった。


 「まぁ、見ての通り木を傷つけるとああいった反応を示すわけだ。」


 セリアは威力を抑えたウィンドカッターで側にあった木を幹の辺りから切り倒す。切り株にエーテルが集まると再生を始める。再生をはたした木は先ほどよりもひと回り程太くなっていた。


 放っておけば倒された木は分解されエーテルは地に還って行くのであろうが、研究材料にとセリアはストレージに仕舞い込む。


 ---結局、地道に進むしかないか・・・


 「セリア、ちょっといいか。」


 ヴェインの声でセリアは思考を中断する。


 「何だ、ヴェイン。」


 ヴェインは上を指さし。


 「枝伝い移動するのはどうだ。悪路の中を進むよりはその方がまだ早く移動できるだろ。」


 ヴェインの提案になんで今までそんな簡単な事に気が付かなかったんだ。セリアはそんな思いだった。


 それを聞いた一同もその手があったという顔をしていた。セリア達の身体能力をもってすれば造作もないことである。こんな悪路を進むより断然早い。


 アヤメの回復を待ってからセリア達は枝伝いに移動を開始する。元々樹々の間隔が狭いこともあり枝間の距離もそれほど離れていない。思った以上に移動のしやすさがあった。


 この階層では樹々が邪魔でメルディナの館をストレージから出すことが出来ない。館での休息が不可能であるため、途中で簡単な休息を挟むだけでセリア達は一気にこの階層を駆け抜けていった。


 移動の最中にセリアは手頃な木を切り倒してはストレージに仕舞い込んでいた。ここの樹々は大量のエーテルを保有しているためこれで武器や防具を作成すればかなり良いものが出来るのでは考えていた。


 次の階層、そこは一面が湿地帯が広がる場所だった。見た目には分からないが、所々に状態異常を引き起こす場所が存在していた。毒に麻痺、睡眠などその種類は多岐にわたっていた。セリアの探知が無ければ全滅する未来が容易に想像出来る場所、それが103階層。


 ただ、セリアやメルディナが状態異常に掛かるとは当然思えないため、現実的には全滅することは有り得ない・・・と言えるだろう。


 「アイスバーン」


 何の前触れなくセリアが魔法を唱える。一瞬にして湿地帯の表面が凍結していく。しかもそれはかなりの広範囲に及んでいた。


 「セリアねえ、一体何を?」


 セリアの行動に疑問を抱いたアヤメが疑問を口にする。


 「簡単な事だ。氷の上を進む。」


 「「「えぇぇぇぇっーーーーー!」」」


 セリアに口から出た言葉に一同の驚く声が響く。


 「そうは言ってもだな、どうやって氷の上を進むんだ。」


 セリアは氷の上に飛び乗ると器用に氷の上を滑って見せた。それがヴェインの質問に対するセリアの回答であった。


 「そんな、すぐに出来るわけないだろっ!」


 セリアの滑る姿を見ながらヴェインはつっこむが、セリアは全く意に介していない様子であった。ヴェインとセリアのやり取りを見ながら悪夢が蘇る二人がいた。アルジェントとアヤメの二人である。


 アークに冬が訪れた頃、あまりの寒さに海の水が凍り付いた事があった。その時にアルジェントとアヤメは氷の上を滑る訓練をさせられたのだ。その時の光景を思い出すだけで顔が青ざめて行く二人。


 「アル、アヤメ、どうしたのじゃ?顔が悪いが・・・」


 二人の様子がおかしいことに気が付いたメルディナが気に掛け、声を掛ける。


 「い、いや、何でもないよ。」


 アヤメの大丈夫だという返事に首を傾げるメルディナ。当人達が大丈夫と言っている事もありそれ以上は何も言は無いことにした。


 「アルとアヤメは問題ないとして、老師はどうですか?」


 「わしもそれほど器用には無理じゃな。出来たとしても早くはセリア殿ほどに移動出来まいて。」


 「セ、セリアねえ。僕らもまだセリアねえのように早く滑るとかは無理だと思うんだよね・・・」


 アヤメに同調するように後ろでアルジェントが首を縦に振っている。


 「そうか・・・」


 考え込むとセリアはストレージからある物を取り出した。それはソリ。しかも優に10人は乗れる程の大きさの。


 「ところでさぁ、これは誰が引くの?」


 「まぁ、私しかいないだろう。早く乗り込めっ。メルが飛びながら引いても構わんが。」


 「それは無理なのじゃ。妾は乗る専門なのじゃ・・・」


 全員が乗り込むのを確認するとセリアはソリにエーテルの糸を巻き付け、滑走を始める。ソリに乗っていたアルジェント達は初めこそ颯爽に走るソリに爽快感を得ていたが、段々と速度を増していくソリに少しずつ恐怖が増していった。さながら氷上の絶叫マシンといったところだ。


 当然場所によってはデコボコしているわけである。セリアは避けて滑っているが、ソリは見事にはまる事もある。


 「わぁっーーーーーーーー。」


 「ぎゃっーーーーーーーー。」


 「止めてっーーーーーーー。」


 走り始めてすぐは後ろから叫び声が色々と聞こえてきたが、その内静かになりセリアの耳届くことは無くなっていた。


 目的地に到着したセリアが後ろを振り向くとそこには、青ざめ口元に手を当てて憔悴している一同の姿があった。


 そんこんなありつつセリア達は階層を次々と踏破して行く。灼熱の砂漠が広がる104階層、雪と氷に閉ざされた105階層、豪雨と雷鳴が轟く106階層、荒れ狂う風と闇が漂う107階層。


 各階層ともに過酷な環境ではあったが、セリア達にとってそれは往く手を妨げる要因には成り得なかった。101階層のような醜悪のギミックに以降出くわす事もなかった。それがスムーズに108階層へと続く路まで到達できた理由の一つだろう。


 それでも階層ごとに異なる過酷な環境はセリア達の身体に着々と疲労を植え付けていた。そこでセリア達は107階層に数日間留まり、疲れを癒す事にした。


 勿論、突然の変化に対応すべく警戒怠らなかった。だがこの数日間は何も起こらず警戒も杞憂に終わった。


 そしてセリア達は万全の態勢で108階層へ臨む。


 108階層、そこは火山がひしめき合い溶岩が地を染める火山地帯であった。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
話を先に読み進めるのが楽しいです。ただ、誤字脱字がかなり多く、報告をあげるのが大変なので頭の中で変換をして読んでいます。毎話5ヶ所位はそういった部分があるので(本当に)、その辺りを改善してもらえれば更…
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