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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第二章 始原の迷宮編
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第二十七羽. 吸血鬼の始祖


 崩壊するアークから命からがら脱出したセリア達。そもそもセリア、サジ以外の3人は自分達の身になにが起こったのかを把握していなかった訳ではあるが・・・。


 「間一髪ではあったが、全員無事でなによりだ。」


 キューブ内に突然現れたピンク髪の少女は満足気な顔をしながらセリア達に語りかける。


 改めて見る少女の姿は身長は150センチメートル前後、髪型はハーフツインテール、服装は黒を基調としたゴシックファッションにフリルやレースをふんだんに取り入れたゴシック&ロリータ。いわゆるゴスロリというやつだ。そしてアンバランなまでの胸が主張に主張を重ねている。


 この世界にもゴスロリが存在するのか?と思いアルジェントやアヤメを見るが、二人の表情は始めて見る服装に少々唖然としていた。


 「では、ついてまいれ。」


 少女は自分について来るように促すとキューブの出口に向かって歩き出す。そんな少女の背中見つめながら、自分達の目も前にある選択肢がそれ以外に存在しない事を理解すると、セリアは他のメンバーに頷いて見せた。こうしてセリア達は現状を把握する間もないまま少女の後に続いて歩き始めた。


 キューブの外に出るとそこは夜に包まれていた。


 「僕たち何処に向かってるのかな?」


 「そりゃ、あそこに見える屋敷じゃないのか。周りを見渡してもあの屋敷以外に何も無いだろう。」


 ヴェインの言葉通りこの周辺には、向かっているであろう洋館以外に何も無い。これは周辺を探知した結果からも明らかだった。さらに言うとこの空間自体が思いの外狭く、この洋館を中心として半径1000メートル程しかなく、この空間には洋館以外に目立った物が存在していない。


 少女に案内されて辿り着いたのは予想通り洋館であった。少女自ら扉を開けセリア達を向かい入れるとそのまま客間へと案内する。


 「妾の名はメルディナ・バーンスタイン。この屋敷の主だ。来訪を心より嬉しく思う。」


 全員が席に着くのを確認すると少女は名乗り始めた。


 「今宵はゆっくりと休まれよ。聞きたい事もあるだろうが、そなたらの紹介も含めて明日食事でもしながら話すとしよう。部屋は2階にある部屋は好きに使ってくれて構わない。」


 言い終えるとメルディナと名乗った少女は客間を後にした。


 客間に取り残されたセリア達は今までの事を整理するための少しばかりの時間を費やした。その後は疲れが溜まっている事もあり、全員が早々に夢の中の住人になった。


 セリアが目を覚ますとまだ外は暗く、いったい自分がどれくらいの間寝ていたのかまるで分からなかった。


 『8時間を睡眠に要しました。』


 タイミングよくセリアの疑問に答えた《オモイカネ》はそのまま言葉を続ける。


 『解析結果からこの空間は現状からの変化は起こりません。』


 『つまり夜から変わらないと・・・?』


 『これを夜というかは疑問の余地がありますが、その認識で問題ありません。』


 《オモイカネ》との念話を終えるとセリアはダイニングへと向かう。人感センサーでもついているのかセリアが廊下に出ると点灯し始める。点灯している光源も魔道具であり、周囲のエーテルを吸収して光に変換しているようであった。


 起きたらダイニングに集合としていたが、そこにはまだ誰も来ていなかった。そこは不自然なほど綺麗で、人が生活をしてるような雰囲気がまるで感じられなかった。


 そんな不自然さに疑問を覚えながらもセリアは朝食の準備に調理場へと向かった。


 『セリア様、今何方にいらっしゃいますか?』


 朝食を作り始めて暫くすると、アルジェントから念話が入る。


 『今朝食を作っているところだ。みんなを起こしてくれ。』


 『承知しました。』


 「そなた、料理も得意のようだな。」


 「急に現れるのは・・・止めて下さい。メルディナさん」


 朝食の準備をしているセリアの後ろに何処からともなく現れたメルディナ。料理中だからと言って探知を行っていない訳ではない。にもかかわらずセリアの探知を掻い潜りメルディナはセリアの後ろに現れた。


 「メルで構わん。」


 「メルさん、それで何の用ですか?」


 「そなた、そんな話し方ではないであろう。いつも通りでかまわん。」


 「やれやれ、メル、いったい何の用だ。」


 「うんうん、それでよい。」


 メルディナは腰辺りまである長い髪を揺らし、少し満足したような顔をしながらセリアの隣まで来ると彼女の手元を覗き込む。


 「美味しそうだな。だが、わらわの分はいらないぞ。」


 「それを言いにわざわざ?」


 「あぁ、そうだが。それともう一つ確認したいことがあってな。そなたが昨日羽織っていたローブに見覚えがあるのだが・・・イングと知り合いか?」


 「イングを知っているのか?」


 「知っているも何もあ奴は妾の弟子だ。」


 「そうか・・・」


 セリアはイングとの出会いやこのローブを貰うに至った経緯などをメルディナに語った。


 「そうか・・・もう逝ってしまったのか。」


 そう言ったメルディナの顔は悲しさがにじみ出ていた。


 「まぁ、吸血鬼並みに長生きしろ、というのは無理な話だな。」


 明るい口調でセリアに伝える事だけ伝えるとメルディナは厨房を軽やかな足取りで退出していった。そしてセリアの探知は厨房を出てすぐにメルディナが姿を消すのを捉えていた。


 メルディナの来訪から暫くするとアルジェントに起こされ、次々とダイニングに姿を現した。そして盛り付けてある皿を次々と運んでいく。最近ではサジとヴェインも配膳を手伝うになり、アルジェントやアヤメのストレスが多少なりとも軽減していた。


 「おはよ~!」


 朝食の準備が終わり全員が席に着くと見計らったかのように何処かもらとなくメルディナが姿を現す。


 「メルディナ様の分も用意を。」


 「構わぬよ。セリアには既に伝えているしの。」


 メルディナの食事を用意しようとしたアルジェントの言葉を遮り、自分の分はいらない事をアルジェントに伝える。


 「食事しながらで申し訳ないが、今後の話をしたい。」


 メルディナが席に着くと全員の顔を見渡し。


 「まずは、みなの名前を教えて欲しい。鑑定を使えばすぐにわかる事だが、コミュニケーションを取るのは重要だからな。この館のあるじである、妾から自己紹介するのが筋ではあるが、ちと長くなると思うのでそちらからお願いしたい。」


 メルディナに促され、セリア、アルジェント、アヤメ、ヴェインの順に自身の事を軽く話していく。そしてサジに順番が回ってきたところで。


 「昨日から気になっていたのだが、おぬし・・・もしやサジか?」


 サジの顔を凝視していたメルディナの発言に一同が驚きを見せる。


 「わしの事を覚えておいででしたか。ありがとうございます。」


 一同の驚きをよそにサジはメルディナに丁寧に頭を下げる。


 「いくら容貌が変わったとは言え自分の弟子を忘れるわけがなかろう。ぬしも息災のようじゃな。」


 老師がメルの弟子?老師だってかなりの年月を生きている。この少女はいったい・・・。それに何故こんな場所に。


 セリアはいまだにメルディナの鑑定が出来ずにいた。正確には鑑定は行えているが何も情報として得られていないのである。


 『解析が終了しました。目の前のメルディナは本物ではありません。エーテルにより作られた分体です。』


 《オモイカネ》よりメルディナの解析はセリアにもたらされた。鑑定で何の情報も得られないのはこの為であった。


 「その言葉、ありがたき幸せです。メルディナ様はご健勝・・・と言う訳ではなさそうですが。」


 「その事は後で話す。」


 サジは自分とメルディナのやり取りに周りの理解が追い付いていない事を察し会話のボールをメルディナへと返す。


 「メルディナ様、ご自分の紹介をされてはいかがですか。まだご自分の名前しか伝えていないと思いますが。」


 「おぉ~、そうであった。改めて、妾の名はメルディナ・バーンスタイン。外見からはよう分からんかもしれんが吸血鬼だ。吸血鬼といっても種族は始祖血姫帝(オリジン・ブラッド)、ようは吸血鬼の始祖みたいなものだ。畏敬と畏怖の念を込めて漆黒の支配者ロード・オブ・ナイトメアなどとも言われておる。」


 メルディナは胸を張りながら誇らしげにしているが、セリアは若干痛い少女なのでは、といった感想しか抱いていなかった。


 「とは言え、今はここに幽閉されているみたいなもの。さらに言えば気が付いておる者もおるようだが、この身は仮初。本体は封印されておる。」


 一旦話を区切ると・・・。


 「ちっ、あの忌々しい奴らのおかげでの」


 メルディナは苦々しい表情をしながら言葉を吐き捨てる。


 「それにしても彼奴等(きゃつら)の罠を掻い潜り、ここまで来たのは流石。妾にとっては僥倖(ぎょうこう)としか言えん。」


 「メルディナ様、お話を遮るようで申し訳ないのですが、質問をよろしいでしょうか?」


 「構わんよ。それとメルで構わんよ。」


 「それでは、メル様、先ほど罠と仰っていましたが、ここから出る手段があるという事でしょうか?」


 「ほぉ、アルジェントといったな・・・何故そう思う。」


 「大層な理由はありませんが、私達がアークと呼んでいたあの広い空間に遠隔、まして別の次元に罠を張る事が可能なのか、と思っただけです。私には何処から何処までが罠だったのか想像が出来ませんが。」


 「なるほど。ここから脱出する手段についてだが、答えはノーだ。もう少し正確にいうと・・・本来はここから出るための手段が存在していたが、何故かは分からぬがスタンドアローンで迷宮(ラビリンス)が起動しているため外部とのアクセスが不可になっておる。仮にそれが無くとも妾の本体が封印されおるからな・・・」


 「そうですか。ありがとうございます。」


 「私からも質問がある。」


 「答えられる範囲ならいくらでも構わんよ。」


 「では、お言葉に甘えて。まずは何故ここに閉じ込められているか?それと彼奴等(きゃつら)と呼ぶ者達とどういった関係があるのか?といったところだ」


 「何故閉じ込められたについては簡単だ・・・邪魔だったから。その一言だろうな。そして妾が彼奴等(きゃつら)と呼び、妾をここに閉じ込めた者達・・・それはゾディアック。これが彼奴等(きゃつら)の名だ。」


 ゾディアック・・・確か黄道十二星座を指す言葉だったような。そう言えばムリエルは巨蟹宮(カンケル)の座を預かる者とか言っていたな。あと女神エリニュスとも。メルからもう少し詳しい情報を引き出せるかもしれないな。


 「メル、そのゾディアックとかいう連中と女神エリニュスはどういった関係があるんだ。」


 「セリア、その名を何処で聞いた。」


 「私達がここに来る原因となった男からだが。ムリエルと名乗っていた。」


 「其奴(そやつ)巨蟹宮(カンケル)とも言っていなかったか?」


 「あぁ、巨蟹宮(カンケル)の座を預かる者とか言っていた。」


 「もう関りを持っていたとは・・・まぁ、とは言ってもこんな所に人を送り込むのは彼奴等(きゃつら)しかおらんか・・・」


 メルディナは頭に手を当て溜息をつくも自身を納得させ、セリアを見る。


 「質問のあったエリニュスだが、かつて天にあった女神の名だ。今は堕ちて女神ではないがな。そしてゾディアックはそのエリニュスを(まつ)る者達だ。他に質問はあるかな?」


 メルディナがセリア達を見渡すと、スッと一人が手を挙げた。


 「ゾディアックを倒す手段はありますか?ムリエルは僕の兄の仇なんだ。必ず僕の手で・・・」


 アヤメの真剣な眼差しにメルディナが声のトーンを少し落として。


 「今のままでは無理だな。」


 きっぱりとアヤメに告げた。


 「だが、ここから出る事が出来れば可能だろうな。」


 メルディナの言葉にアヤメは握りしめた自分の拳を見つめていた。


 「さて、食事をしながらと申したが、このままでは食事が進むまい。妾は立ち去る故、食事が終わったら玄関ホールに集合してくれ。」


 言葉を残すとメルディナの姿が消えて行った。


 セリア達は食事を終えるとメルディナの指示に従って玄関ホールで待っていた。


 「待たせたな。ついてまいれ。」


 メルディナの案内で通された部屋は飾り気の無い、只々広い部屋だった。そしてその部屋の中央に十字架に磔にされている少女が目に入る。少女の首、両足、両手首そして胴が魔法陣のようなもので固定されている。そして目の前にいるメルディナと瓜二つだ。


 「ここは修行用の部屋なんだが、今は妾の本体の封印場所だ。」


 磔にされたメルディナと目の前でセリア達に説明しているメルディナであえて違いを上げると、胸の大きさぐらいであろう。なにせ磔にされているメルディナは簡単言えばまな板である。


 「セリア、この封印を解除出来るか?」


 メルディナは十字架に磔にされている自分を見上げながらセリアに問いかける。


 「分からんが、とりあえず調べてみよう。」


 『《オモイカネ》、この封印を解析。』


 『既に実施しています。今しばらくお待ちください。』


 《オモイカネ》さん、なんて優秀なんだ。


 「いまこの封印の魔法陣を解析している。しばらく待ってくれ。」


 「この封印が解けるのなら、セリア、そなたの眷属にっても構わんよ。」


 「そんなこと言っていいのか。そもそも私より格上なのに。」


 「構わんよ。それに其方といた方が楽しそうだしな。」


 「後でやっぱりやめた、は無しだぞ。」


 「ふんっ、妾に二言は無い。」


 『解析が完了しました。』


 それぞれが談笑していると思いの外早く解析が終了した報告がセリアに入る。


 《オモイカネ》の解析結果が情報としてセリアにフィードバックされる。フィードバックされた情報によると、この魔法陣は対象者のエーテルを吸収する性質がある。そして対象者の保有エーテルが多ければ多い程吸収する量が増えるという代物であった。そしてこの魔法陣を無力化するには五つの魔法陣に同時に一定以上の力を外部から加える、ただそれだけであった。もちろんそれはエーテルや魔法による力で、ではあるが。同時に無力化出来なかった場合、他の魔法陣からエーテルが流れ込み魔法陣が再構築される仕組みになっている。


 各魔方陣を同時に破壊する際にどれくらいのタイムラグが許容されるか分からないが、今のセリアにとっては造作も無いことである。ただそれが本当に簡単な事かというと、ここに来たばかり頃のセリアでは不可能な所業であったであろう。


 「メル、解析が終了したが、もう初めて構わないか?」


 「あぁ、やってくれ。」


 メルディナからのゴーサインが出るとセリアは自身の胸のあたりで掌を上に向ける。するとそこに小さなエーテルの塊が五つ浮かび上がる。浮かび上がったエーテルの塊はゆっくり移動し、メルディナを封印している五つの魔法陣へと接触する。


 パチン!


 セリアが指を鳴らすと魔法陣に大量のエネルギーが一瞬にして流れ込み、魔法陣が破壊される。魔法陣が再構築されることも無く、支えを失ったメルディナの本体は自由落下を開始する。


 メルディナの身体をセリアが受け止めゆっくり床に寝かすと、今まで側にいたメルディナが消滅しエーテルが本体へと流れ込んでいく。


 メルディナは自分が封印から解放された時のの為に少しずつではあるが、分体と同じようにエーテルを周囲に保管していいた。そして今それらがメルディナに吸収される。


 「解放、感謝するのじゃ!」


 目を開けよろめきながら立ち上がったメルディナの開口一番の言葉である。


 「のじゃ・・・?」


 アヤメが自分の語尾を復唱するの聞いたメルディナがしまったという顔をしながら自分の口を押える。


 今までの口調と全く異なる様子に一同が困惑していると。


 「それが本来の師の口調での・・・今までは威厳を保とうと無理をしていたわけじゃよ。」


 「サジ、おま、おま、お前・・・何故、バラすのじゃ!」


 メルディナとサジのやり取りを見ながら実は容姿と同様に精神年齢も幼いのか?などと内心思っていると、セリアの探知に突如として複数の魔物が引っかかった。


 「やれやれ、随分周到なことじゃ。妾が復活した時の為に罠を潜ませていたとは・・・」


 その数は刻々と増えて行き、辺り一帯が魔物で埋め尽くされていくのがセリアの探知でもはっきりと捕捉出来た。


 足の踏み場もないとはまさにこの事だな・・・さて、この数どうしたものか・・・またあれを使うか。


 「罠ってなんだ。いったい何が起きたんだ。」


 セリアが少し考え込んでいると、メルディナの言葉に反応したヴェインがメルディナに詰め寄る。アルジェントやアヤメも罠という言葉に今が非常事態である事を感じ取り緊張した顔をしている。


 「まぁ、心配する必要はないのじゃ。セリアの氷結系術式があれば先の戦闘のように一瞬で終わるのじゃ。それに其方達も先の戦闘で大群相手にやってみせたのじゃから問題なと思うがな。ただ今回は妾の復活記念でその役は譲ってもらうがな。それよりも先の約束通り其方の眷属になってやるのじゃ。早く済ませるぞ。」


 「再度聞くがいいのか?」


 「其方もくどいな。問題無いと言っているのじゃ。」


 メルディナの言葉にセリアは彼女に向き直ると右手を出す。


 「契約と言っても大した儀式がある訳じゃない。この手を取って了承してくれればいい。」


 差し出された右手、そしてセリアの顔を改めて見据えてメルディナは懐かしい顔を思い出した。それ以前に始めてセリアを見た時からメルディナ思っていた。セリアの容姿、声があのお方にそっくりである事に。いやそっくりというレベルではない、まさに生き写し。


 「メル、私の顔に何か?」


 自分の顔をじっと見つめて押し黙るメルディナにセリアが声を掛けると、


 「す、すまん、少し昔を思い出したのじゃ。」


 何かを振り払うように顔を数度左右に振るとメルディナは差し出された右手を取った。


 「其方に至高の知識と術式を叩きこんでやるのじゃ」


 メルディナの意思と言葉に契約が締結される。そしてメルディナに変化が起きる。


 苦しみ膝を着いたメルディナの身体にエーテルが溢れ出すのをここにいる全員が感じ取った。セリアを抜かせば正確にそれを感じ取ったとはサジであろう。


 セリア殿のエーテル保有量も化け物レベルじゃが・・・まさか師のエーテルもここまでの物とは。


 まさか妾の力が全盛期に近くまで戻るとは・・・いや、エーテル量だけで言えば全盛期より多いか。


 うずくまりながらも自身の変化を正確に理解していくメルディナ。そして自身の力に酔いしれそうになりながらも、理性でそれを押さえつけていた。


 「メル、大丈夫か?」


 「問題ないのじゃ。突然の力に身体が少々悲鳴を上げただけだ。もう順応したのじゃ。」


 立ち上がったメルディナは先程までの力に酔う感覚も薄れ平常心を取り戻していた。メルディナは右手を自分の胸のあたりまで上げるとそれを真横に切る。


 屋敷の地下に居たはずのセリア達の視界には辺り一帯を埋め尽くす魔物群れがあった。


 「何これ。ていうか僕達どこにいるの?」


 「何だ。あの大群は。」


 「ここは屋敷の屋上だ。目の前の大群は先ほど話をした罠なのじゃ。」


 突然の状況変化にあたふたするヴェインとアヤメにメルディナが現状を伝える。


 「では、妾の力を見せるとするのじゃ。」


 メルディナは自身の右手を上と突き出しながら術式名を叫ぶ。


 「氷結術式 氷剣乱舞」


 空一面に無数の氷の刃が出現する。その刃には見事なほどの細工が施されとり、美術品のような美しさを持っていた。そして同時に氷とは思えない程の鋭利さを兼ね備えているように見えた。それは次のメルディナな行動で実証される事となる。


 突き上げた右手を手套のように振り下ろすメルディナ。そしてそれに呼応するように空中にあった刃は魔物に襲い掛かる。氷剣に貫かれた魔物はその身を氷に委ね命を散らしていく。


 視界を埋め尽くす程にいた魔物が今は氷の塊になり、静けさが辺りを包み始めた。


 パチン!


 セリアを真似てかメルディナは右手を前に突き出しながら指を鳴らす、すると氷の塊と化した魔物達が次々と粉々に砕け散っていく。


 セリアは自身の探知でも全ての間のが消滅するのを確認していた。


 「どうじゃ。妾の実力は。なかなかの・・・セリア!」


 「あぁ、分かっている。」


 死んだ魔物のエーテルが霧散せずに一ヶ所に集まりだすと、そこに巨大な猪の化け物が姿を現した。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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