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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第二章 始原の迷宮編
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第二十六羽. アーク探索・参


 ---6ヵ月前


 エデンの中は過ごし易い気候で固定されているが、ここから一歩外に出ると、肌を焼くような陽の光、()だるような暑さ、立っているだけで汗が噴き出る。アークは今、猛暑真っ只中。


 狭い空間であるがアーク内では季節の移り変わりがる。そう、今、アークは夏なのだ。


 その日の早朝、セリアは一人キューブの様子を確認しに来ていた。黒のアニマの時と同様に窪みが仄かに輝いている。今回の色は白、そして方角は西を示している。


 西エリアと言えば、森林地帯が広がっている。そこには果物をはじめ色々な食材の宝庫である。


 「食料の調達に影響が出なければ良いが・・・」


 セリアは溜息交じり一人ぼやいた。


 気が付けばもう皆が起きてくる時間である。セリアは朝食の用意にキューブを後にした。


 戻るとそこには皆がもう揃っていた。


 「セリア、珍しいな寝坊か?」


 「いや、キューブにな。」


 「で、どうだった。」


 「今回は西エリアだ。」


 「セリアの予想が当たった、という事か。」


 「そう言う事だ。朝食の準備をするから手伝ってくれ。」


 朝食を済ませるとセリア達は午前中の内に西エリアの森林地帯を訪れた。前回と同様であれば全員で行く必要もな無いが、見てみたいと言うので全員で来ることになった。


 木々が作る影に時折吹く風のおかげで森の中は多少の清涼感を味わえるが、それでも立っているだけで汗が噴き出してくる。


 目的の祠は北エリアの時とは異なり白く輝いていた。それもセリアにとっては想像していたことである。そして祠の扉はセリア以外の者には貝のように固く閉ざし、セリアの前では何事も無かったかのように開かれる。


 ”白のアニマ”、それがこの西エリアで手に入れたアニマである。


 さっそくエデンへと戻ってきたセリア達はその足でキューブへと向う。白く輝いている窪みへとアニマを嵌め込むと前回と同様に壁が僅かに反応を示し、白のアニマから天井と床にある突起に向かい一筋の光が結ぶ。前回と異なるのは黒のアニマと白のアニマが一筋の光で結ばれた事である。


 「セリアねえ、今回はこれで終わりかな?」


 「多分そうだろうな。」


 こっから先の変化を促すには、また3ヵ月待つ必要がある。


 セリアの言葉にアヤメは出入り口に向かい歩き始めた。その他のメンツもアヤメに続いて外へと向かった。


 あと2つのアニマを揃えると正八面体が出来上がる事は想像に難くないが・・・そこから先は集めてからかだな。容易に結論が出るわけではない目の前の事象にセリアは考えるのを止め、外へと向かった。


 「セリア様、今日これからどうしますか?」


 「そうだな。今日は自由時間にしよう。ただしエデンから出る場合は必ず複数人で行動すること。」


 「了解だ。と言っても俺はここでゆっくりしているがな。」


 「わしもエデンでのんびりしておるよ。」


 「アヤメはどうする?」


 「ん~、僕は海水浴に行きたい!」


 「では、私がアヤメさんについていきます。」


 「やった~。アルねえ、ありがとう!」


 「セリア様は如何いたしますか?」


 「そうだな、私もアヤメについていくか。」


 着くなり海に駆け出していくアヤメ。そしてそれを後から追いかけていくアルジェント。そんな二人を眺めながらセリアはパラソルにテーブル、椅子と準備を始める。


 セリア自身も水着姿になると用意したビーチベッドに横になり、サングラス越しに二人が遊んでいるのを再び眺め始めた。


 『こちらを監視する魔物を察知しました。』


 『あぁ、私も気が付いている。』


 その魔物はまだ魔物の出現が確認されてい無い南エリアからセリアの様子を(うかが)っていた。そしてこちらがそれに気が付いた事に感ずいた魔物はその場で姿を消した。


 何処かへ移動したとかではなく、その場で忽然(こつぜん)と反応が消えたのである。周辺の探知を行ったが(つい)ぞその魔物を捉える事は出来なかった。


 『《オモイカネ》、鑑定はどうだった。』


 『鑑定不可、鑑定が弾かれました。』


 やはり駄目か・・・


 セリアも鑑定を試みたが、《オモイカネ》と同じように弾かれていた。


 念のため、周囲に結界を張るか。


 「セリア様、どうかしましたか?結界を張ったようですが・・・」


 気が付けば目の前に二人の顔があった。


 「何でもない。少し変な気配がしたから周辺を探ってみたが、気のせいだったようだ。結界を張ったのは念のためだ。」


 二人に気が付かれないように結界を張ったつもりでいたが、鍛錬の成果か二人はちょっとしたエーテルの動きを感知するまでに至っていた。


 これも老師のおかげかだな・・・


 「セリアねえも一緒に遊ぼうよ!」


 アヤメはそう言うとセリアの手を引っ張るとビーチまでセリアを連れ出す。


 「仕方が無いな。」


 ストレージからビーチボールを取り出すとそれをアヤメに向けて投げる。


 「これは何?」


 アヤメの質問にセリアはアルジェントとアヤメの二人に遊び方を説明する。娯楽の少ないこの状況を楽しむ為に最近セリアはいくつか遊具を作っていた。その一つが今取り出したビーチボールである。


 「じゃ、実際に遊んでみるか!」


 ある程度の説明した後、セリアvsアルジェント、アヤメで遊ぶ事になった。


 そしてアルジェントとアヤメはセリアの身体能力の高さを改めて思い知る事になる。1対2にもかかわらずアルジェントとアヤメは全く点が取れないでいた。


 どれくらいの時間遊んでいたか分からないが、アルジェントとアヤメはその場で倒れた。


 「嘘でしょ。サジのじいちゃんの鍛錬よりきつい・・・」


 仰向けになり、乱れた呼吸を整えながらアヤメは呟く。アルジェントも同様に疲れ果てビーチに倒れている。


 「それじゃ、少し休憩するか。」


 テーブルに冷たい飲み物を用意したセリアは二人に声を掛ける。


 実はセリアはボールと地形に細工をしていた。ボールに触れる瞬間に適切なエーテルを纏わないとボールが想像する軌跡を描かないようにしていた。またビーチには砂に足を取られ、身体自体が重くなるようにしていた。


 そう、遊びと言いながらこれはアルジェント、アヤメの鍛錬の一環であった。


 「セリア様、そのボールとあのビーチに何かしていませんか?」


 休憩しながら二人にカラクリに説明をすると、あともう数セット遊ぶとエデンでへと帰った。


 「よぉ、セリア。戻ったか。」


 セリアは戻ってき所に丁度良くヴェインと鉢合わせした。


 「それより、二人ともどおしたんだ?」


 セリアの後ろで立っている事さえ辛そうな二人が目に入ると、セリアへ問いかける。


 「遊び過ぎて疲れただけだ。気にするな。」


 ヴェインと言葉を交わしたセリアは夕食の支度をするために、その場を離れて行った。


 「セリアねえはなんでピンピンしてるの?私達より動いてたよね。」


 「私もそこは疑問です。」


 「おまえら、一体何があったんだ?」


 アルジェントとアヤメは海へと遊びに行って、そこで起きた出来事をヴェインに詳しく話した。それを聞いたヴェインは一言。


 「行かずにここにいて良かった~。」


 二人に言葉をかけるとその場を離れて行った。


 「二人とも夕飯までゆっくりしてな。」


 振り返ると二人に休むように言ったヴェインは再び歩き始める。ヴェインの向かった先はセリアの所であった。アルジェントとアヤメが使い物にならない以上自分が手伝わないと後で色々と言われると思っての事であろう。


 そんな分かり易いヴェインの行動を後から眺めると、アルジェントとアヤメの二人は疲れを取るために風呂へと向かった。


 その夜は何事も無く過ぎ去り、翌日・・・


 南エリアでの魔物の出現、そして魔物全体のレベルの上昇、前回と同様の変化がアークに起きていた。


 そして時が過ぎ去り・・・


 ---現在


 アークの気候は冬が過ぎ去り、再び春の暖かさが辺りを包み込んでいた。


 アークの全エリアにて魔物の出現が確認され、そして魔物強さはここに初めて来た時と比較にならない程に強くなっている。


 キューブの壁にある4つの窪みの内3つには既に黒アニマ、白アニマ、赤のアニマの三種類のアニマが輝きを放ちながらそこにある。


 そして12ヶ月という月日を経てキューブに4つのアニマが揃おうとしていた。最後のアニマ・・・青のアニマをその手にセリアは最後の窪みの前にいる。


 その時をその眼で見るためアルジェント、アヤメ、サジ、ヴェインが後ろで見守っていた。もちろん、テトラとラクスもその場にいる。


 少し緊張した面持ちのセリアは最後のピースをその手で埋める。


 全てのアニマと天井と床にある突起が一筋の光でつながり正八面体を描き、各アニマを通るように円が描かれる。そしてアニマが描く平面に垂直の光が走る。見る見るうちに複雑な幾何学模様がセリア達の目の前で描かれていく。


 最後に形成された立体の中心に球体が出現すると、一連の動きが収まる。”無色のアニマ”、それが出現した球体の名前である。


 「明日、一体何がおこるのかの。」


 「精々、今日はゆっくりさせてもらうかな。」


 「セリアねえ、今回はしごきとか止めてよね!」


 アヤメはセリアに向き直ると真剣な眼差しで彼女に詰め寄る。


 「あぁ、分かった。」


 「絶対だよ!」


 セリアは返事の内容とは裏腹に何をしようか算段していると、アヤメに釘を刺される。


 アヤメの脳裏には半年前の海、そして3ヵ月前は雪中での出来事が過っていた。


 「本当にわか・・・」


 アヤメに詰め寄られ、今回は何もしない事を告げようとしたその時、突如としてエデンに振動が走る。


 急ぎエデンの外に出ると魔物の群れがエデンに対して攻撃を仕掛けていた。


 エデン自体はアークとは別空間であるが、それは結界により実現している。この魔物達はこの結界を破壊しようしているのだ。この周辺の魔物がエデンへと攻撃を仕掛ける事はセリア達がアークに来てから一度としてなかった。


 とりあえず辺りの魔物を排除したが、セリアの探知はおびただしい程の魔物の出現を察知した。さらに、東西南北各エリアで光の柱が空に向かって伸びていた。さらに光の柱の色は各アニマが示す色であった。


 『四方からエデンに向かい大量の魔物が進行しています。』


 『各エリアに出現した魔物はどれくらいでここに到着する。』


 『あと2時間もかからないと推測されます。』


 今までは翌日に変化が起こっていたが、今までとは異なり今回は変化をその日に味わう事となった。そしてそれはセリア達に牙を向けた。


 私が何もしなくても・・・これは鍛錬として使えるな。


 「さて、どうやら四方からここに向かって魔物の大群が迫って来ているようだ。これを迎撃するわけだが、私と老師は戦闘に参加しない。」


 「セリア様、それは3人で相手をしろ、という事ですか?」


 「私もそこまで鬼ではない。」


 そう言うと、ランスロットとワルキューレ全員を呼び出す。


 「これで問題なく対応出来るだろう。あとテトラ、ラクスにイロハも付けよう!」


 数万という魔物に対して、こちらはアルジェント、アヤメ、ヴェインにランスロットとワルキューレ。そしてテトラにラクスの計20人である。


 そしてセリアを見て誰もが思った・・・鬼畜だ、と。


 少し後、エデン防衛戦の口火が切って下ろされた。


 どれ位の時間が経ったのだろうか、アルジェント達はただ無心に目の前の敵を屠り続けている。


 ”こんなのむり~”、と叫び続けていたアヤメも今や何の言葉も発さずに黙々と狩り続けている。


 「老師、少し外すので何かあれば、お願いします。」


 「わかった。して、何処へ。」


 「キューブに。」


 キューブでは中央にある無色のアニマが黄色く輝き始めていた。それは外でアルジェント達が魔物を倒せば倒す程に強くなっていく。


 セリアがキューブへと足を踏み入れると、無色のアニマは黄色く輝いていた。再度鑑定を行うと無色のアニマから黄色のアニマへと変化していた。


 そしてキューブの変化を確認したセリアは、踵を返すと外へと戻っていった。


 外の状況は一言でいうと善戦している。


 そもそも圧倒的な物量を有している魔物の大群に対してこちらは総勢20人であることを考えれば良く持ちこたえている。


 しかし今の均衡が崩れるの時間の問題である。こちらには体力的な限界が存在するが、それに対して相手にはそれがない。倒しても倒しても何処からともななく湧いてくる為、魔物の数自体減っているようには見えない。


 身体に無数の傷を負いながらも戦線を保っていたが、徐々にではあるが魔物の軍勢に押され、均衡が崩れ始めて来た。


 これ以上は撤退する体力すら残らないか・・・


 『全員後退しろ!』


 セリアの念話に全員が答えると、それぞれが撤退を始める。全員が撤退したのを確かめるとセリアは術式を行使する。


 「氷獄術式 氷釈」


 無詠唱にもかかわらずセリアの術式は一瞬にして辺り一帯、いや、アーク全域を氷の世界へと変貌させた。そしてセリアが指を鳴らすと凍っていた魔物の大群が砕け散り、氷片へと変わっていく。氷片が太陽の光を反射しアーク全体が幻想的な光景をセリア達に見せた。


 全身傷だらけのアルジェント、アヤメ、ヴェインの3人は、目の前に広がる幻想的な光景を見ながらエリクサーをあおっていた。


 『空間全体に異常な力を検知。マップの端から空間が消滅しています。』


 マップを確認すると《オモイカネ》の報告を裏付けるようにマップの端から徐々に消えていることが確認できた。


 この速度で消滅していったら・・・全域が消滅するまでに10分もかからないだろう・・・


 「全員即座にエデンに退避だ。」


 焦ったようなセリアの突然の声に困惑する一同。それでもセリアから伝わる緊迫感に即座に行動へと移る。


 従魔達を全て《グリモワール》に戻したセリアは再度マップで状況を確認すると、既に6割近くが消滅していた。


 セリアがエデンに戻ると既に4人によって必要なものがまとめられていた。それをセリアがストレージへと仕舞うとキューブへと避難する。


 空間が徐々に無くなっていくアークの四方では四本の光る柱が世界を支えるように今だに輝いている。すると何処からともなく湧き上がる黒い雲に包まれた柱は少しずつ光を失っていき、ついには消滅する。


 四本の柱が消えたの同時にキューブ内にあった4つのアニマも光を失っていた。そして中央の黄色のアニマの輝きも徐々に失われつつあった。


 パリィン・・・・・・


 エデンを囲むように張っていた結界が割れる音がセリア達の耳へと届く。そして徐々に黒雲がエデンを侵食し始める。


 「やれやれ、彼奴等(きゃつら)、ここまでの罠を張っていたとは・・・」


 声のする方を見ると、そこには見覚えの無いピンク色の髪をした少女が立っていた。その少女の気配は半年前に察知した魔物気配と同様であった。


 「お主らのエーテルをすぐにアニマへと注ぎ込め!」


 「お嬢ちゃん、いきなり何を言っているんだ。」


 「早くしろ、このままでは全員死ぬぞ!」


 ヴェインの言葉を無視し、鬼気迫る雰囲気で発する少女の言葉にセリア達はお互いに頷き合うと即座に行動に移った


 「おぬしは中央の黄色のアニマだ。」


 その少女はセリアを指さし指示する。


 黒のアニマはヴェインの、白のアニマはサジ、赤のアニマはアヤメ、青のアニマはアルジェント、そして黄色のアニマはセリアが担当することになり、エーテルを注ぎ始める。


 エーテルを注ぎ込み初めた直後はそれほど苦でもなかった。セリアはむしろ楽だとも思っていた。それはセリア以外の4人も同じことを思っていた。だがその直後に5人ともに自分が注ぎ込んでいるのか、それとも吸い取られているのか分からない感覚に襲われ、体内のエーテルを急激に失っていく。


 セリア以外の4人も通常の冒険者に比べれば圧倒的に多いエーテルを保有している。それでも今の状況を維持するにはエーテルが足りていなかった。そしてそれをセリアが補うと形になっていた。


 『空間の位相が反転されます。衝撃に備えてください。』


 その最中(さなか)、《オモイカネ》から報告がもたらされる。


 こんな状況で一体どうしろと・・・


 それでも他の4人に比べれば余力のあるセリアは防御結界を幾重にも展開する。


 直後に衝撃が襲い半分以上の防御結界が一瞬にして消滅する。展開しては消滅が繰り返されていく。


 それもやっと終わり、静寂が辺りを包み込むと。


 「ようこそ、われの領域へ!」


 セリア達を歓待する言葉が少女よりもたらされる。

誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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