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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第二章 始原の迷宮編
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第二十四羽. アーク探索・壱


 ---宴の翌日


 「あぁー、昨日は飲んだ飲んだ!」


 二日酔い気味の気怠そうな雰囲気で場に姿を見せるヴェイン。


 「ヴェイン、飲みすぎだよ!」


 「大人は飲み過ぎる生き物なのだよ。嬢ちゃんももう少し大人になれば分かるよ。」


 「飲み過ぎた次の日でもちゃんと動けるのが大人だ。ヴェイン、アヤメに間違った知識を植え付けるな。」


 アヤメの言葉によく分からない理屈をこねるヴェインに対してセリアはバッサリと切る。


 「セリアだって昨日散々飲んだだろう。むしろ俺より飲んでたよな!」


 「ヴェイン、お前より酒を飲んだからと言って私が二日酔いになると思ったか。」


 言葉に振り返りると、そこには普段と何一つ変わらない様子で朝食の支度をしているセリアの姿があった。


 「う、そ、だろう・・・」


 昨晩を思い返すヴェイン。確かにセリアは自分より大量の酒を飲んでいたはず・・・である。だが、飲んでいる最中もそんなに酔っている雰囲気が無かった事をヴェインは微かに思い出す。ヴェイン自身お酒はそれなりに強いと思っていたが、ザルと呼ばれる存在が目の前にいる事に驚いた。


 「ヴェイン、食べれるか?」


 見るからに朝食が喉を通るような雰囲気ではない。なにせ二日酔いで、顔色の悪いヴェイン。


 「わ、悪い。食べられそうも・・・」


 ヴェインが言い終わらないうちに、セリアはヴェインに向かいある物を投げ渡した。


 「これでも飲んでおけ。」


 ヴェインが受け取ったものは小さな小瓶に入った透明な液体だった。言われるがまま液体を飲み干すと。


 「おぉ! 今までの気持ち悪さが無くなった!」


 今までが嘘のように体調が良くなっていった。


 「セリア、お前もこれ、飲んだのか?」


 「いいや、飲んでいないが。」


 「あ、っそう・・・ところでこの液体は何だ?」


 「エリクサーだ。」


 セリアからの思いもよらない返答にヴェインが固まっていると。


 「みんなも朝食にするぞ!ヴェイン、お前も早く座れ。」


 セリアの朝食を呼びかける声が辺りに響く。


 「ヴェイン、気にしなくても大丈夫だよ。エリクサーならいくらでもあるから。僕らの間でも水みたいなもんだから。」


 ヴェインとセリアの会話が聞こえていたのか、さらっとセリア以上の事を言いながら席に着くアヤメ。


 ヴェインがそうこうしている間に次々と席に着いている状況に慌ててヴェインも席に着く。


 食事も終わり、アルジェントとアヤメにも手伝ってもらい後片付けを済ませるセリア。この間、サジ、ヴェインは食後の運動と言ってエデン内を散歩している。


 「セリア様、今日というかこれからどうしますか?」


 隣で後片付けを手伝っているアルジェントの言葉にセリアは、洗い物の手を止めて少し考えると。


 「その事については、この後にみんなを集めて話をしよう。」


 「分かりました。」


 アルジェントの返事に動き出したセリアの手は次々と洗い物をこなしていく。


 後片付けを終えたセリアが休憩を取っている散歩に出ていた二人が戻ってきた。


 「さて、全員揃ったところで、これからの方針について話をしたい。とは言え、そんなに選択肢やら案があるわけではない。まずはこの階層の調査というか探索をして地形や出現する魔物の把握をしようと思う。この階層の出口は探索をしていれば見つかるだろうし。何か意見はあるか?」


 「セリア様、昨日見たところかなりの広さがあると思われます。我々だけ、となると時間が掛かると思うのですが・・・」


 アルジェントの発言に他のメンバーも頷き、同意見である事をセリアに示す。


 「それについては考えがある。」


 そう言うとセリアはランスロットと11人のワルキューレを召喚する。


 「10階層をクリアした時にメインのパーティ以外に2パーティを編成できるようになった。そこで私を含めたメイン組とランスロットとワルキューレ5名、残りのワルキューレの計3パーティでの探索を考えている。」


 「セリア、お前こんなものを召喚できたのか!」


 召喚されたランスロットとワルキューレを見て驚くヴェインに。


 「特にランスロットは強いぞ!」


 そう言って、セリアはランスロット胸の辺りを手の甲で数度叩く。


 「俺はどちらかというと、その後ろにいるご婦人方に興味があるな!」


 「心配するな、ワルキューレにお前を近づかせることはない。」


 「セリア、そんな冷たい事を、」


 セリアの冷たい視線にヴェインは次の言葉を飲み込み。


 「わかったよ!」


 少しへそを曲げたように素振りを見せると引き下がった。


 「それでは探索地域だが、北エリアはランスロットとワルキューレ5名、南エリアは残りのワルキューレ。南エリアのパーティはブリュンヒルデにリーダをやってもらう。そして西エリアの森林地帯は私のパーティが探索を行う。」


 「りょーかーい!」


 アヤメの返事に他のメンバーは頷いて同意をする。


 「では、準備に入ってくれ。」


 数分後、準備を終えたセリア達は昨日ぶりにエデンの外に出た。


 「ワルキューレのメンバー構成は二人に任せる。それと厳命するが、自分達の命を最優先しろ。無理だと思ったらすぐに撤退するように。」


 「承知しました。」


 ランスロットとワルキューレはセリアの言葉に跪くと南北へと散っていった。


 「それじゃ、私達も出発するぞ!」


 エデンから近いところでは魔物の襲撃を数度となく受けたが、2キロメートルを過ぎたあたりから襲撃回数が極端に減っていった。


 そしてその辺りから徐々に木々が増え始めた。


 3キロメートルを過ぎると既に森林地帯へと足を踏み込んでいた。


 森林地帯の木々は適度な間隔を保っており、想像していたより歩き易く。清々しい空気がセリア達を包み込んでいた。時折吹く風に木々が揺れ動き、木漏れ日が複雑な文様を地面に描いていた。


 セリアが癒しの空間を堪能していると、先行していたアヤメの叫ぶ声が聞こえてくる。何事かと思いそちらに目をやると何かを大量に抱えたアヤメがこちらに駆けてくるのが目に入った。


 「みんな、見て、見て!」


 そう言ってアヤメが見せた物は、リンゴ、バナナ、ミカンといった果物であった。


 「これ以外にもいろんな種類の果物がなってたよ!」


 アヤメが見せた果物はセリアにとっては物珍しいものではないが、実る季節や気候がそれぞれ異なる。その事に疑問を持ちながらもアヤメの案内された場所には、確かに沢山の果物が豊富に実っていた。


 「流石のセリアも驚くか。」


 「あぁ~、こんな色々種類の果物が同じに場所で実っているかなら。」


 「それもあるが、俺らと驚いている所が微妙に違うな~」


 ヴェインはアヤメが抱えている果物を一つ取ると服で拭くとひとかじりする。口に入った果物を飲み込むと、セリアに説明しだした。


 「果物は基本的に高級品なんだ。甘味を取る手段がほとんどないからな。こういった果物は王侯貴族や一部の商人しか口に出来ない。庶民は野イチゴなどの森に自生しているやつを取って食べる事が殆どだ。」


 なるほど、そういえ砂糖は高級品なので無駄遣いをしないように、と菓子作りをしている時のフリエラの言葉を思いだしていた。


 「ヴェイン殿の知識は少々古いのでわしが少し補足しよう。」


 ヴェインの説明を引き継いでサジが、流暢に語りだした。


 「基本的にヴェイン殿の言っている事は正しい。今もその傾向は強い。ただ以前より市場に出回る果物が増えてきている。作付け面積の増加や栽培するコストが下がってきている。さらに出回る果物種類も10年間に比べると多くなっているからの。まぁ、それでも庶民が手を出すのには少々高いかのぉ。」


 「さじのじいちゃん、なんでそんなに詳しいの?」


 「こう見えても果物が大の好物での。高騰してる原因やそうやったら手軽に手に入るかを調べたことがあるんじゃよ。」


 サジの言葉にその場にいた全員が意外そうな顔をしてサジを見つめていた。当のサジはそんな状況気が付かずアヤメにまだ語っていた。


 今までの話からするとアヤメやヴェインは私と同じ部分で驚いてもいるが、どちらかというと財宝を見つけた、という感覚に近いようだ。需要と供給のバランスがまだ需要側に傾いている、という事か。眼の前にある物をどうにか持ち帰える事が出来れば、商売になるな~、とセリアはアヤメ達の様子を見ながら考えてた。


 「ここで一旦自由行動にしよう。各々でこの辺りを調査をしてくれ。老師、ヴェインは単独行動で良いが、アヤメはアルと一緒に行動。何かあれば念話で連絡をくれ。」


 探知圏内では今のところ魔物の反応がないため、セリアは自由行動を提案した。


 「なんで、僕は単独行動じゃないの?」


 「目を離すと何をするか分からないから。」


 「僕、そんなに信用ない?」


 「昨日も崖から落ちただろう。」


 セリアの言葉に不満そうな声を上げるが、理由を聞いてばつの悪い顔をするアヤメ。


 「それに話し相手がいた方が楽しいだろ。」


 最後のセリアの言葉に嬉しいそうな顔をして、アヤメはアルジェントの腕にしがみつき早々にこの場を離れて行った。


 「2時間後、ここに集合だ。それでは、解散。」


 セリアが解散を告げた時、既にもう解散していたアヤメはセリアの声が聞こえたのかこちらに向けて手を振り答えた。


 セリアは解散するとそのまま奥へと歩き始めた。周囲を探知した際に確認したい箇所があった。


 その場所に向けて歩き始めると少し開けた場所に辿り着いた。そしてそこには小さな祠がポツンと静かに存在していた。その祠には観音開きの扉があるが、開けても中には何も安置されていなかった。それ以外も調べてみたが木製であること以外は何も情報を得る事が出来なかった。


 祠の事は一旦諦め、本来の目的の場所へと到着したセリアは何もない空間に手を当てる。そこには壁のような固い何かが存在していた。セリアの目にはその先にも森林地帯が続いているように見えるが、実際にはここで行き止まりである。


 そうセリアが探知を行った際、この辺りで空間が途切れているような反応を示したため、自分の目で確かめに来たのである。エデンから直線距離にして約10キロメートル。


 セリアはその後、この壁が何処まで続いているのかを調べると、一旦集合場所へと戻っていった。


 セリアが戻ると既に他のメンバーは既に戻って来ていた。


 「おぉ、セリア、遅かったな。」


 『予定時刻より20分程度遅れています。』


 「遅れてすまない。」


 「なぁーに、実は俺も少し前に戻ってきたばかりだしな。」


 「それじゃ、結果を報告してくれ。」


 報告をまとめると、この森林地帯には果物以外にも茸類から山菜、香草など食用になるものが数多く存在するとこがわかった。さらに今いる場所から北に少し行くとちょっとした水場があり、その周りにも多様な植物が存在する。そして、最後にセリアには分かっていたことだが、魔物が全く見当たらなかった。そう、痕跡する見当たらなかった。


 「ある程度、調査も終わったのでエデンに戻るか。」


 帰りはセリアの転移で一瞬にしてエデンへと戻ってきた。


 ランスロットとブリュンヒルデのパーティーは流石にまだ帰還していないようだった。


 軽めに昼食を取った後、セリアを除いたメンバーは鍛錬の時間に当て、セリアは単独で西エリアの調査へと赴いた。


 テトラとラクスはというと食後の昼寝タイムを楽しんでいる。


 ランスロット、ブリュンヒルデには適当な所で調査を切り上げたらエデンへ戻るように伝え、西エリアに向けて移動を開始する。西エリアへの道中も東エリアへ向かう時と同様に途中から魔物の気配を全く感じなくなった。


 そのまま何の障害のないままセリアは目的地へと辿り着いた。


 鮮やかな水面に陽光が反射し輝き踊っているように見えた。暫くの間、セリアは目の前に何処までも広がる巨大な水たまりを眺めていた。


 そして、浦波に手が届くところまで近寄るとセリアは着ている衣服を全てストレージに仕舞い込み、水たまりへと飛び込んだ。


 口に当たる水は真水ではなく、海水のように塩辛い。底には昆布やわかめといった海藻、アワビやサザエといった貝類まで見られた。辺りを泳いでいる魚を見てもこの巨大な水たまりは、海に近い環境である事が分かる。


 水中の探索を暫く続けて行く中、海底に森林地帯にあったのと同様の小さな祠を発見したセリアは、今日の探索を切り上げる事にした。


 水面まで上がってきたセリアは。


 「しばらく、ここで休むか。」


 独り言のように呟くと、身を浮かせ目を閉じる。身体は波に揺られながらゆらゆらと漂い一時の安らぎをセリアは味わっていた。


 『・・・ねえ、・・・りあねえ、セリアねえ!』


 どれ位の間ここで漂っていのか分からないが、突然、大声で自分呼ぶアヤメ声が念話で届く。


 『そんなに叫ばなくても聞こえている。』


 『聞こえている、じゃ、ないよ。一体なにしてるのさ。全然連絡つかないんだもん。ランスロット達も既に戻って来てるよ!』


 目を開けると日が傾いた空がそこにあった。


 『これから戻る。』


 あまりの気持ちよさに時間が経つのを忘れていたセリアは、後ろ髪を引かれる思いのままこれから戻る事を伝える。


 一旦、岸まで戻ったセリアは水魔法で身体を洗うと、ストレージに格納した服に着替える。そして、穏やかな水面を暫く眺めたセリアはエデンへと戻っていた。


 「あっ、やっと戻ってきた!」


 戻ってきたセリアを見つけると、いの一番にアヤメが駆け寄ってくる。


 「セリアねえ、髪の毛濡れてない?」


 「少し泳いでいたからな。」


 「それで、全然連絡してこなかったの? それより、お腹すいたよ~、何か作って!」


 「わかった。今準備する。」


 セリアはまだ残っているカレーをストレージから出すと、作り置きしていたカツの上にかける。


 今晩の料理はカツカレーである。


 セリア達は晩飯を取りながら、探索で得た情報について共有を行った。


 まず1つ目、ヴェインの案でこの階層に名前を付ける事となり、”アーク”と命名。


 2つ目、今のところエデン周辺およびアーク北部にしか魔物が生息していない。


 3つ目、北エリアは丘陵地帯、南エリアは岩場が多く、切り立った崖が存在している。東エリアは海が広がっており、西エリアは森林地帯である。


 4つ目、東西南北、約8キロメートル付近に祠がある。


 5つ目、アークはエデンを中心に半径約10キロメートル、水平方向に3キロメートルと限られた空間である。


 6つ目、果物、野菜をはじめ食用可能な物が多く、今のところ出くわした魔物も食用可の物が多い。。


 今日集めた情報だけでは、アークから他の階層へと行く手段は見つからず、今後の方針も探索の続行とするしかないのが現状であった。


 脱出の為の歯車は回る事を忘れ、止った時が動き出すには暫しの時間が必要となる。


誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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