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転生したらうさみみでした  作者: 黒鉄神威
第二章 始原の迷宮編
28/131

第二十二羽. 過去とヴェインと帝国と


 「ヴェインさん、まずはこれを着て下さい。ずっとそのまま、という訳にはいかないでしょ」


 ストレージから衣服と装備一式を取り出すとヴェインに手渡した。


 アルジェントを初めとした女性陣には反対方向を向かせ、その間にヴェインは素早く手渡された衣服を身に着ける。


 「もういいぞ。」


 ヴェインの言葉に女性陣は着替えを終えたヴェインに目を向ける。


 「おぉ~!」


 手渡した衣服が思いの外似合っており、先ほどまでの情けない姿とのギャップに驚きの声が漏れた。


 「ごほっ・・・あんた、名前は?」


 ヴェインはセリアに顔を向けると、裸を見られた事に少し恥ずかしさを覚えていたため、少し咳払いをしてセリアに名前を尋ねた。


 「セリアだ。」


 名前を尋ねられたセリアは、そういえばまだ名乗っていなかった事を思い出し自分の名前をヴェインに教えた。


 「そうか、セリアさん。助けて頂きありがとう。」


 ヴェインは一礼をしながら、セリアに礼を告げた。


 「なに、礼には及ばん。こちらに目的がある。それと、さん、はいらない。呼び捨てで構わない。」


 「OK、それじゃ、俺の事も呼び捨てで構わん。それでな、セリア・・・ひとついいかな。」


 「なんだ。」


 「男の裸、それも下半身まで見ておいて、恥じらい一つないというのはどうなんだ?」


 「見慣れている。今更恥じらう事もない。」


 転生前は男だった。そんな見慣れたものを目の前にして何か反応するわけないだろう。


 セリアの思っている事とは別にサジ、ヴェインは驚きの顔を見せるがそうかそうか、といった顔をし、アヤメは何のとこか分からないといった顔をしている。


 そして一番の反応を見せたのが・・・


 「せ、せり、セリア、様。み、みな、見慣れた、とは、ど、どういう事ですか!!!」


 アルジェントの絶叫が響き渡る。


 アルジェントの反応でセリアは自分が口にした言葉の意味を理解した。額に手を当て少し考えると。


 「アル、今の言葉は忘れろ。お前が想像しているようなことはない。」


 「ですがっ!」


 「この件はこれで終わりだ。いいな!」


 「分かりました・・・」


 アルジェントの返事は尻つぼみになり、最後は殆ど聞き取れない程だった。


 そして、セリアがサジとヴェインに顔を向けると。


 「わしらも忘れる。なぁ、ヴェイン殿」


 「あ、あぁ~、もちろん。」


 「じゃから、睨むのは止めてくれんかのぉ・・・」


 セリアの威圧感にサジとヴェインは冷や汗をかきながら、忘れるとこをセリアに誓った。


 「ならいいでしょう。では、これからの話をしますか。」


 一連のやり取り意味が分からず、アヤメは唯々(ただただ)頭に?を浮かべながら皆の様子を眺めていた。


 まずはセリア達からの自己紹介と今までの経緯を語った。


 次いでヴェインに移った。


 「ヴェイン・プロシリアだ。改めてよろしく頼む。これでも軍人でね、帝国陸軍の大佐だ。と言っても今となっては元が付いてると思うが。」


 「帝国陸軍でヴェインか・・・想像以上に大物じゃの。」


 「老師はヴェインを知っているのですか?」


 「あぁ、知っておるとも、帝国陸軍、諜報部、特殊作戦部隊隊長。裏の世界では有名じゃからの。」


 「そんなに有名だったのか。俺自身はまったく知らなかったがな。」


 ヴェインは肩を竦め少しちゃらけた様な口調で答えた。


 「ねぇねぇ、そんな人がなんでこんな所にいるの?」


 「正直、あまり覚えていないんだが・・・覚えているのは黒衣の女にやられたところまでだ。」


 アヤメの質問に少し顔をしかめ、声のトーンを低くしてヴェインは答えた。


 「女、男じゃなくて?」


 興味本位の質問に黒衣という因縁のある言葉が飛び出したことに反応したアヤメは、前のめりになりヴェインへと質問した。


 「あ、あぁ、顔を見たわけじゃないが、声から判断すると女だと思う。」


 「そっか、違うのか・・・」


 「嬢ちゃんは黒衣の奴と何かあるのか?」


 自分の返答に対して深刻な顔をしてるアヤメが心配になり、ヴェインはセリアに話しかけた。


 「黒衣の男、名をムリエルとか言ったか。アヤメの故郷と兄の仇なんだ。」


 「そうか・・・」


 「話を戻すが、その黒衣の女との経緯(いきさつ)は?」


 セリアから話を促され、ヴェインはその時の事を思い出し語り始めた。



 帝国は国内の統制と隣国の情勢やその他情報の収集を目的として陸軍に諜報部を組織した。そして実働部隊として特殊作戦部隊を組織した。


 諜報部は軍にとっても重要な組織であるためハイマー少将が統括の任に就いていた。少将の子飼いで、信任の厚い人物として白羽の矢が立ったのがヴェインである。ヴェインは大佐への昇進と同時に特殊作戦部隊の隊長として任に就いてた。


 そしてある時、ヴェインはハイマー少将の命で極秘裏にとある事を調査していた。それは違法な人体実験に関わる事で、村一つが一晩で消えた事例もあった。調査を進めて行くとこの件には軍上層部や一部の貴族が関わっている事が判明した。そしてそれは少なくとも十数年前から行われていた。


 この調査結果をハイマー少将に報告した数日後、そのハイマー少将が殺害された。そしてその首謀者としてヴェインが捜査機関に拘束される事態になった。


 本来であれば軍法会議で捜査が行われ、裁定が下されるはずである。なぜか殺人罪の裁定が皇帝に委ねられる事になり、ヴェインは皇帝の前へと引き出せれる事となった。一縷(いちる)の望みをかけてその場へと臨んだヴェインであるが、その光景を見て絶望することになった。


 その場には調査結果で上がった人物。そして宰相、軍の最高司令である将軍までもが顔を揃えていた。


 「ヴェイン・プロシリア大佐、君がとても優秀な軍人であることは報告で知っている。」


 陛下が自分の事を知っていることに、ヴェインは喜びを覚えた。だが次の言葉に絶望へと変わった。


 「だが、予が進めている計画に横槍を入れるとは、報告と違って無能だな。よって大佐、君を死刑とする。」


 陛下の言葉に頷く気配が辺りを包み、ヴェインの処遇が即座に決定された。


 「陛下、発言をお許しください。」


 一人の中肉中背の貴族が皇帝へと発言の許可を求め、前へ歩み出た。


 「プロシリア卿か。予とてそれほど無慈悲な人間ではない。卿と息子の語り合いを許す。」


 「陛下、ありがたき幸せ。」


 皇帝へと深々と頭を下げると、ヴェインの方へ向き直る。そしてその顔にはヴェインに対して侮蔑の色が濃く出ていた。


 「ヴェインよ。この度の事、父として救いようがない、と考えている。次期当主として次男のハーミットを据える。そなたは潔く帝国のために身を捧げよ。」


 調査の過程で父の名前は上がっていなかった。だがここにいるという事は、そうなのであろう。その事実に言い返す気力する失ったヴェインはそのまま父を見上げていた。


 「陛下、機会を頂きありがとうございました。」


 そう言って皇帝に頭を下げるとヴェインの父は元居た場所へと戻っていった。


 「将軍、死刑執行は任せる。結果報告は怠るなよ。」


 「はっ。承知しました。」


 「陛下、でしたら大佐の処遇を私に一任させてもらっても?」


 将軍が皇帝に対して一礼をした時、突然、女性の声がその場に響き、玉座の後ろから黒衣を着た人物が現れる。


 「あぁ、構わん。将軍、聞いた通りだ。大佐については此奴に任せる。」


 「陛下、ありがとうございます。」


 「陛下のご随意に。」


 皇帝の前で一礼すると黒衣の女は、ヴェインへと向き直る。そして黒衣の女の手がヴェインへと向けられると、ヴェインの意識は一瞬にして沈んでいった。



 一通りの話がヴェインの口から語られると、サジが何か気になったことがあるのか質問を投げかける


 「ヴェイン殿、一つ確認したいことがある。話の中で皇帝の名前が出てこなかったが?」


 「何を言っている。ソルティア帝だろ。」


 「やはりのぉ。今の帝国皇帝はダリスじゃよ。即位したのは10年前のことじゃよ。ヴェイン殿、お主の知識は少なくとも10年以上前の知識じゃ!」


 サジの言葉に驚きを隠せないヴェイン。そんなヴェインの事を気にしながらもサジは話を続ける。


 「何せ先帝のソルティアは10年以上前に没しておる。そして、おぬしの色々な噂を良く聞いていたのも10年以上前じゃ。」


 ヴェインの記憶では皇帝はソルティアだ。それ以降の情報が無いので当然と言えば当然である。そして気が付いたら10年以上の月日が経ってるいる事にヴェインは事態を整理出来ていないでいた。


 「現皇帝がダリス様? ダリス様は確か三男では・・・」


 さらには現皇帝がダリスである事にも驚いていた。


 「たしかに現皇帝ダリスは先帝の三男じゃ。先帝ソルティアが無くなった際、帝国では一年ほど内乱が起きたんじゃよ。その内乱でダリスは兄弟、貴族を含めて自分の政敵を全て排除した上でその地位についている。」


 ここら辺の出来事は、セリアも自身で調べているのである程度は知識があった。


 帝国はエリトルスが接している国の中では一番建国が新しい国である。もともと帝国はエリトルスとは国境を接しておらず、東にある辺境の小さな国々の一つであった。そしてその当時はヒルクという国名を名乗っていた。


 現皇帝の祖父であるバーギンの時代に領土の拡大に向けて動き出す。その最中(さなか)、バーギンが病死すると、その後を継いで現在の帝国とほぼ同等にまで領土を広げたのが、先帝ソルティアだ。後を継いで僅か3年と言う短い期間で周辺諸国を平定をした。そして今に至るまでの帝国の基盤を築いた。その過程で国名をヒルクからオージストに変更し、帝国を名乗るようになった。


 現皇帝ダリスは3代目である。国名を変更し帝国を名乗ったのは実際には先帝ソルティアの御代だが、バーギンを初代皇帝と定めている。


 先程のヴェインの話が事実だとするとヴェインが調べた事柄は、領土を掌握して間もないか、少し経ってから始まったことになる。もしかしたら帝国の建国、領土拡大にも黒衣の連中が絡んでいるのか・・・今の状況では想像の域を出ないな。


 「自分が10年以上こんな所に閉じ込められていた事にも驚きだが、それ以上にあの心優しいダリス様が・・・」


 「ヴェイン殿、思うところはあるじゃろうが、今はこの迷宮(ラビリンス)を脱出に手を貸してほしい。」


 「そうだな、ここで項垂れても何かが解決するわけじゃないしな。俺にもここからの脱出を手伝わせてくれ!」


 ヴェインとサジのやり取りを黙って聞いていたセリアは、サジの後を引き継いで話を進める。


 「ここを攻略するには私の眷属になってもらう必要がある。」


 「その理由は? それと眷属になるメリットとデメリットを教えて欲しい。」


 「理由については正直、私にも分からない。ただ、それがここを攻略するためのルールみたいだ。メリットだが戦闘中やその他重要な会話を念話で行えること。あとは契約時に何らかの能力的な上昇があること。デメリットは能力的な面では一切ない。後は私に逆らえなくなることぐらいかな。と言っても私は奴隷みたいな事をするつもりはない。その点はアルやアヤメに聞いてくれ。」


 「軍人なんでね、そう簡単に尻尾を振る気はない。」


 セリアの説明にきっぱりとノーを突き付けるも。


 「とは言え帝国では10年以上前に死んだことになっている。しかも皇帝直々に執行を宣言しているからな・・・帝国にこれ以上義理立てする必要もないか」


 肩をすくめて、やれやれといった顔を見せるヴェインはさらに言葉を続ける。


 「と言う訳で、セリア、あんたの所で厄介になるかな。」


 「ヴェイン、よろしく頼む。」


 その言葉にセリアは右手を出し握手を求める。


 「あぁ、こちらこそ。セリア、あんたの目でも耳でなってやるよ。」


 差し出された手を握り返しすヴェイン。今まで同様に契約の履行と共にヴェインの身体が光に包まれる。そして光の収まったヴェインの姿は・・・全体的若返った感じである。


 元々も黒髪ではあったようだが白髪の割合が大きかった。今は黒メインで白髪がメッシュのようにみ見える。そして三十代後半ほどの外見となっていた。


 セリアから手渡された鏡で自分を見るとそこには10年位前の自分が映っていた。ただ身体の軽さや調子の良さは外見以上に若返った気がした。


 「若返った感じはするけどさぁ、おじさんはおじさんだよね?」


 「お嬢ちゃん、おじさんなのは自分でもわかってんだ。それでもおじさんと面と向かって言われると傷つくな。」


 アヤメの言葉に若干ダメージを負いながらもヴェインは演技じみた口調で言い返す。


 「あははっ、ごめんごめん。それとなんでお嬢ちゃんなの? サジのじいちゃんもそう呼ぶし!」


 「まぁ、俺らからすると子供にしか見えないかならなぁ。どうしてもそうなるな」


 ヴェインの返答にアヤメは頬を膨らませているが、それがなおさら子供っぽくヴェインにからかわれている。


 アヤメとヴェインが取り留めのない会話している中、セリアがヴェインのステータスを確認する。


 名前:ヴェイン・プロシリア

 種族:人族

 性別:男性

 年齢:52歳

 レベル:82

 エーテル値:183000

 職業(ジョブ)上位暗殺者(アークアサシン)

 スキル:隠形術、気配察知、闇属性魔法、闇属性耐性、二刀流、

     短剣術、体術、歩法術

 称号:永遠を生きる者、狂乱の開催者、陽光と影の支配者

 加護:陽炎の加護

 その他:元帝国陸軍将校


 ジョブが上位へと変化しているが能力値はそれほど変わっていない。むしろ目を見張るのは称号と加護だ。明らかに諜報や襲撃に特化した構成になっている。


 「ヴェイン、後でで構わないから自分のステータスを確認してくれ。」


 「あぁ、わかった!」


 セリアの言葉に頷きながらも、ヴェインはアヤメとじゃれ合っている。


 そんな二人を眺めてセリアはアヤメも年は離れた兄が出来たみたいで嬉しいだろうな、と感想を抱いていた。


 「みんな、もうそろそろ次の階層へ向けて出発しよう。」


 セリアの言葉に各々準備を開始し、闘技場の出口へと向かい始める。


 当初セリア達が入ってきた場所の丁度反対側に同じような格子状の扉がある。そこが出口だとあたりを付け向かい始めた。そもそもそれ以外に出口らしきも物が存在していなかった。


 セリア達が格子戸の前までただり付くと、闘技場全体に空が落ちてくるようなプレッシャーが襲う。そして地面を叩くような音が闘技場を包み込む。


 辺りを見渡すと誰もいないはずの観客席はいつの間にか無数の骨人(スケルトン)によって埋め尽くされていた。地面を叩くような音は骨人(スケルトン)達が地面を足で叩いてる音であった。


 『高濃度のエーテルが中央に集まっています。』


 観客席に目を奪われていたセリアは《オモイカネ》の言葉で視線を闘技場の中央に移す。


 そこには黒っぽい球体があり、そこから一体の魔物が姿を現す。


 その魔物はドラゴンが二足歩行したような姿をしており、手には鋭い爪が3本、丁度胸のあたりには赤黒い球体が存在していた。大きさはセリアより一回り大きい程度で剥き出しの骨で形作られていた。


 鑑定で表示された名前は竜牙兵(ドラゴンウォーリア)


 今までの敵を考えると脅威度としてそれほど危惧する必要はない。セリアは見た瞬間にそう判断を下した。


 「ガァァアアアアアッ!」


 セリアが駆け出そうとしたその時、竜牙兵(ドラゴンウォーリア)が咆哮を上げる。


 地面を叩く音が止み、観客席にいた骨人(スケルトン)が次々と崩れ落ちていく。そして骨人(スケルトン)を構成していたエーテルが竜牙兵(ドラゴンウォーリア)に集まり、赤黒い球体が点滅しだす。


 球体は徐々に大きくなり、それに従い竜牙兵(ドラゴンウォーリア)の身体も大きくなり、その姿が変貌していく。


 全長20メートルを超える程に巨大化した威風堂々な姿。そして背には2対の羽があり、エーテルで膜が形成されている。何より肩口から砲門らしきものが姿を見せている。


 再び咆哮を上げると、その凶悪な牙をセリア達に向けた。



誤字・脱字等ありましたら、よろしくお願い致します。

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