幕間 メイド修行
アルジェントがメイド修行をし出して数日が過ぎたある日。
私が部屋で読書をしていた昼下がり、扉をノックする音が私の耳に届く。
「どうぞ。」
「失礼いたします。」
部屋に入ってきたのは、フリエラであった。フリエダは私達がお世話になっているアインザック邸のメイド長をしている女性である。
「セリア様、少しお時間をよろしいでしょうか?」
「フリエラさん、どうかしましたか?」
「アルジェントさんの事でご相談があります。」
「アルの?」
アルジェントのメイドとしての働きは目を見張るものがあり、次のステップとして料理の勉強を始めたらしい。そして、いざ料理を実際に作った結果、出来上がった料理は筆舌に尽くしがたい見た目と味をしていた。
当の本人はまだ修行が足りないだけ、と思っているらしくやめる気が一向にないらしい。そこで私に何とかして欲しい、と思い今に至る。
私はアルの料理を食べていないので判断に困る。そこで私はフリエラさんに提案をした。
「明日、アルの料理を味わう会を催しましょう。出席者はアインザックさん、シルクさん、キースウッドさん、そして私。そこで判断しましょう。」
斯くしてアルジェントの料理を味わう会の開催が決定された。
そして翌日、一堂が会した。セリアも含め集まった皆は緊張の面持ちであった。多分、料理長やフリエラさんからこの会の説明を受けた際に聞いたのであろう、アルジェントの料理について。
しばらくするとアルジェントがワゴンを押し部屋に入ってきた。料理を運ぶアルジェントの顔は自信に満ちていた。
そして目の前に並んだ料理に一同は顔を見合わせた。そして誰一人手を付けようとしなかった。その料理は何をどうしたら、と疑問がわく色をしていた。どのような食材を使ったら青色に?誰一人言葉を発していなかったが、その表情からお互いに分かり合った。
そんな中アルジェントは、さぁ、早く食べてください、といった顔をセリアに向けていた。そんな顔を向けられれば、食べない訳にはいかない。セリアは意を決してすくい上げたスープを口に運ぶ。
セリアは一瞬、意識を手放していた。口の中には、何とも言えない味わいが広がり、粘度の高さからまとわりつき一向に味が消えて行かない。
「セリア様、如何ですか? 自信作です!」
アルジェントの言葉にセリアは、アインザック、シルク、キースウッドの顔を順々に確認する。返ってきたのは、一皆、顔を横に振るという回答であった。
セリアも流石にこの料理を旅の最中に出されたては、モチベーションが保てる気がしない。心を鬼にしたセリアはアルジェントへ伝えた。
「アル、料理修行はしなくてよいので、他の事を極めてくれ。それと冒険に出た際の料理は私が担当する。」
その言葉を聞いたアルジェントは膝から崩れ落ちていた。
その姿を目の当たりにしたセリアは、「アル、申し訳ないが、こればっかりは任せられない・・・」、そう心の中で呟いた。
そして、その翌日、セリアは迷惑をかけたお詫びとしてカレーを作り皆に振舞ったのだった。
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