第百十七羽. セリア先生と少年と魔導銃
生徒が帰宅した放課後の学院は、徐々に静寂を取り戻しつつあった。廊下を進んでいたセリアは、ふと扉の前で足を止める。
魔導具工作実習室。
王立学院に併設されている別棟にある専門実習室で、術式媒体の加工、魔力回路の組み込み、簡易魔導具の試作などを行うための設備が整っている。
閉じた扉の向こう側から、人の気配と微かな作業音が聞こえた。
ーーー・・・今日は誰か使用申請を出ていたかしら。
使用には申請が必要で、今日の放課後の利用申請は無かったはずである。小さく眉を寄せ、セリアは静かに扉を押し開けた。
中には、一人の生徒。
セリアが担当しているクラスの生徒であるジーンが机に向かい、器具を並べ、黙々と何かを組み立てている。
「ジーン。」
少年は自分の名を呼ばれ、肩を跳ねさせて振り返った。
「うわっ・・・セ、セリア先生!? 驚かせないでくださいよ・・・心臓に悪いですってっ。」
「なにか起きてからでは遅いのよ。実習室を使うなら、最低限の報告くらいはしなさいっ。」
怒っているわけでも、責めているわけではない。セリアのその口調に安心したような表情を見せるジーン。そして気まずそうに頭を掻いた。
「すみません・・・。次からはちゃんと申請書を出します。」
「分かればいいわ。それで・・・いったい何を作っているの?」
そう問いながら静かにジーンに近づくと、セリアは覗き込むように作業台に視線を移す。そこで目に入った物に、わずかに目を細めた。
ーーー銃・・・?エーテル射出式の・・・。
それは形こそ粗雑だが、前世で何度も目にする機会のあった銃という構造を明確に想起させるものだった。そしてこの世界に来てからは、目にすることのなかった構造物。
「・・・ジーン、これは?」
「えっと・・・正式名称とかまだ無いんですけど・・・。」
ジーンは手にしていた工具を作業台に置き、肩を落とすように小さく息をついた。
「僕、魔法の制御が苦手で・・・もっと効率よくエーテル弾を撃てれば、戦えるかなって。でも、ぜんぜん上手くいかなくて。」
頬をかきながら、照れくさそうな笑みを浮かべるジーン。セリアはしばらく無言でジーンを見つめ、やがて口元をわずかに緩めた。
「・・・発想自体は評価できるわ。」
「それって・・・発想以外は全部駄目ってことですよねっ!」
「粗削りで、構造も危険だし、しかも・・・暴発寸前。」
セリアの言葉に気を落とし、小さく言葉が零れ落ちる。
「えぇ、そんな・・・。」
「でも、まぁ・・・伸びる余地はあるわね。」
その言葉にジーンはぽかんとしたまま視線をセリアに向ける。そこでセリアは、静かに言葉を継いだ。
「ジーン。よければ私が手伝ってあげるわ。」
「え・・・本当に? 先生が?」
「えぇ。興味もあるし・・・放っておいたら、そのうち本当に爆発させそうだもの。」
「よろしくお願いいたしますっ!」
大きな返事とともにジーンはどこか嬉しげな表情を見せた。
「さて、まずは設計図を見せて。設計図上からでも危ないところが山ほどあるわ。そこからひとつずつ潰していきましょう。」
「は、はいっ!」
ジーンが作業台の上に設計図を広げ、セリアはそれをゆっくりと全体を見渡した。紙の上には複雑な線と記号がびっしりと書き込まれていた。その構造はまだ未成熟で設計上の甘さが目立つが、方向性は悪くない。学生一人でここまで組み上げたこと自体、評価すべき努力だった。
ジーンは少し緊張した面持ちで設計図に指を走らせる。まず最初にジーンの指が止まったのは、銃のグリップに当たる場所。
「えっと・・・まずは、ここがエーテルの流入口になります。使用者から流し込まれるエーテルをこの部分から魔導具内に行き渡らせます。握る部分に置くことで、流れが安定するかと思って。」
セリアは視線だけで頷き、図面上の流入口とそこから伸びる流路を追う。
「なるほど・・・続けて。」
促され、ジーンは流入口から延びる細い流路に指先を移した。
「流入口からこっちにエーテルが流れて・・・ここで一度整えて、その先のエーテルを圧縮する場所に送ります。圧縮は術式に任せていますが、圧縮率や出力については使用者が調整できるようにしたくて・・・。」
「・・・そこは悪くない発想ね。」
その説明を聞きながら、セリアは静かに口を開いた。ジーンはセリアの反応にほっと息をつくと、困った様な表情を浮かべて設計図のある部分部分へ指を動かす。
「術式を起動するエーテル量は少量で問題無いので、流路が細いままで構わないのですが・・・ここが問題で。エーテルの圧縮部分への流路を太くすると術式が上手く発動しないし、細くすると圧縮するのに必要なエーテルが供給されないしで・・・。」
セリアは図面と組み込む術式を見比べて設計図の一点を指先で軽く叩く。
「組み込む術式が不安定だから流路に干渉している可能性があるわね。」
「そうなんですね・・・。参ったな、そこら辺は不得意なんですよね。」
「ジーン、興味のない科目もきっちり勉強しなさい。魔導具作成には、何が役立つのか分からないのだから。」
「はい・・・。」
セリアの言葉に、ジーンはばつの悪い表情を浮かべて小声で返事をした。
「今回は、私が術式を手直しするわ。」
「ありがとうございます、セリア先生っ。」
「ここ以外にも問題点がいくつもあるから、ひとつずつ整理していきましょう。」
セリアは設計図を見ながら、次々と問題点を指摘していく。エーテルを圧縮するチャンバーの材質、余剰エーテルの逃し方、エーテル弾を射出する際の反動処理など指摘は多岐にわたっていた。
ジーンは次から次へと挙がる問題点を丁寧に設計図へ書き込んでいた。そんなジーンの姿を見ながらセリアは、ふと思い浮かんだ疑問を投げかける。
「ねぇ、ジーン。」
ペンを動かしていたジーンの手が止まり、顔を上げる。
「何ですか?セリア先生。」
「属性魔法が不得手なのは分かるわ。でも・・・あなた、自分で言っているほどエーテル制御が下手なわけでもない。それに、エーテルをそのまま使用する無属性魔法なら、他の学生と比べても変わらないくらいの実力があるしょう?制御も悪くないし、戦うこと自体に困るほどでもない。」
セリアは少しだけ姿勢を変え、足を組み直しながら言葉を続ける。
「なのに・・・どうして、魔導具にこだわるの?」
ジーンは視線を設計図に戻し、すぐに返事をしなかった。セリアはそんなジーンの姿に、そっと言葉を添える。
「いいのよ。これは極私的な質問。答えたくなければ、無理に答えなくていいわ。」
ジーンは小さく目を瞬かせ、それからゆっくり首を振った。
「いえ・・・大丈夫です。ただ・・・こういう理由って、誰かに話したことがなくて。ちょっと、気恥ずかしくなっただけで。」
照れ隠しのように鼻先を触りながら、ジーンは苦笑する。
「・・・うち、家族が誰も魔法を使えないんです。」
その声は、作業の手を止めた空間に静かに落ちた。
「父は僕が小さい頃に事故で亡くなったので分からないけど、母は生まれつきエーテル操作ができなくて、魔導具って魔法が・・・正確に言えばエーテルが使える人を前提に作られてるじゃないですか。だから・・・日常の、ほんの小さなことでも困るんです。」
セリアは静かにジーンの言葉に耳を傾ける。
「だから・・・僕は作りたいんです。魔法が使えるとか使えないとか、そういうのに左右されない、誰にでも扱える道具を。そうすれば日常が楽になって、色んな人の役に立てるのかな、と思って。」
ジーンはぎこちない笑みを浮かべた。
「まぁ・・・僕自身、魔導具を触っているのが好きなのもあるんですけど。」
ジーンの言葉が途切れると、実習室の中は水を打ったような静けさに包まれた。セリアは何も言わずしばらくジーンを見つめていた。そして、ゆっくりと口を開く。
「・・・とても、いい理由だと思うわ。」
暖かさの籠もるその声にジーンも自分の中に自信が湧くのを感じていた。
「自分のためじゃなくて・・・他の誰かのことを考えて行動に移すことは、簡単にできることじゃないわ。まして学生の段階で、そこまで考えて動ける人は多くない。」
ジーンは照れたように視線を落とした。
「でも・・・僕なんか、まだ全然で。」
セリアはゆっくりと首を振った。
「そうね。未熟なのは確か。でもね、誰だって最初から上手くできるわけじゃないわ。誰にでも未熟な時はあるわ。いまの段階でできないことが沢山あるのは、当たり前のことよ。」
わずかに表情を和らげて言葉を続ける。
「それに未熟っていうのは欠点じゃないの。これからどれだけ育つか・・・その余地のことを言うのよ。」
セリアはそこで一旦言葉を区切ると、ジーンに温かな視線を向ける。
「つまり・・・未熟とは可能性の塊のこと。」
ジーンは目を見開き、そして嬉しそうに笑った。
「・・・分かりましたっ。これからも頑張りますっ!」
セリアも小さく、ふっと微笑を返す。
「じゃあ、続けましょう。あなたの作ろうとしている物は、誰かの力になり、きっと誰かを救うわ。そのために必要な技術なら、いくらでも教えてあげる。」
「・・・はいっ!」
ジーンは力強く返事をすると、再び設計図へ視線を落とした。止まっていた手が再び動き始め、ペン先が紙の上を滑っていく。
その横顔を見つめながら、セリアはこの世界の科学技術について思考を巡らせた。一概には言えないけれど、この世界の科学技術はセリアの前世での世界と比べると格段に低い。この世界にも物理現象は当然のことながら存在する。手を離せば物は落ちるし、熱エネルギーも存在する。
その理由は明らかで、魔法の存在である。それは確かに便利で、強力で、生活のあらゆる問題を即座に解決してしまう力だ。
ただその代償として、本来なら積み上げられるべき自然科学や工学の基礎がごっそり欠けている。そして付随して磨き上げられる思考が抜け落ちている。
本来なら道具を作る際には、かかる圧力、発生する熱、生じる摩擦を計算することで使用する材質を選ぶ。最適な材質が存在しなければ、既存の金属を組み合わせることで新たな材質を生み出す。こうやって有りと有らゆることを考慮して生み出され、そして洗練されていく。
だが、この魔法が満ち溢れた世界では違う。エーテル伝導率の高い材質を使用すれば、術式で耐圧耐熱は問題なく補える。そしてそこには、どのぐらいの圧力が発生するから、術式でどのくらいの構造を補強すれば良いのかという計算は存在しない。
それで道具が動いてしまう。その結果、自然科学も数学的工学も発展しないまま置き去りにされてきた。魔導具は発展しているが、その土台にある理論が未熟という歪な構造が出来上がっていた。
「先生・・・セリア先生っ。」
考えに耽っているセリアにジーンの控えめな声が届いた。その声にふと我に返ったセリアが、ジーンの呼ぶ声に反応する。
「・・・どうかした?」
「どうしたんですか、セリア先生。先ほどから声をかけているのに返事がありませんが・・・。」
「何でもないわ。それで、なにかあった?」
「色々課題はありますが、もう暗くなってきたので帰りませんか?」
ジーンの言葉に外に視線を向けると、もう既に窓の外は暗くなっていた。
「そうね。今日はここまでにしましょう。」
セリアがそう告げると、ジーンはほっとした表情で道具を片付け始めた。
◇◇◇◇◇◇
それからの日々、ジーンは毎日にように放課後は魔導具工作実習室にこもり続けた。その様子は静かだが確かな熱を帯びていた。
授業終わり生徒たちが帰路につき校舎が夕暮れ色に染まる頃、魔導具工作実習室の一角だけが、規則的なペンの音と金属を扱う小さな音で満たされていた。
ジーンは設計図を広げ、毎日のように修正を加えた。前日の修正点を加味した設計図を描き、そこに新たな案を書き込んでいく。
その繰り返し。
セリアは毎日顔を出すわけではないが、顔を出したときは必要な時にだけ言葉を添えるだけだった。基本的にジーンが自分で考え、自分で答えに辿り着くことを主眼に置いていた。
「ここ、術式が流路を圧迫してるわね。修正できる?」
「はい・・・あ、でもここを修正すると・・・。」
「ただ修正するのでは無く、どう修正したらよいかちゃんと考えてみなさい。負荷を逃がす為には、どうしたらよいか。」
「あ、そうかっ!」
セリアの意図を理解したジーンが、設計図に修正を加えていく。それを頷きながら見守るセリア。
そんな会話が、二週間のあいだ幾度も積み重ねられた。ある日は部品の溶接がうまくいかず、夜まで悪戦苦闘した。またある日は術式回路が暴走し、セリアが反応を抑え込んで事なきを得た。そしてある日は、二人して流路の分岐角度を変えては元に戻す作業を繰り返した。
毎日一歩ずつ進み、何度も戻りながら、銃型魔導具はゆっくりとその形を露わにしていった。
そして二週間が過ぎた、ある日の放課後。
夕陽が傾き、学院の敷地が橙に染まり始めた頃。魔導具工作実習室の前には、大切そうに黒いケースを抱えたジーンと、セリアの姿があった。
「・・・ついに、テストですね。」
緊張と期待が混じった声。セリアは小さく頷き、歩きながら答える。
「えぇ。組み上げは十分。あとは・・・実際に撃ってどうなるかを確認するだけよ。」
二人が向かったのは学院裏手にある訓練場。遠距離にある対象物に魔法を正確に当てる練習をする際に使用する場所で、土壁で囲まれた直線的な路がまっすぐ伸びている。そしてその先には標的を模した鎧が設置されている。
ジーンは深呼吸し、黒いケースを開けた。そこには二週間の試行錯誤の結晶、漆黒の銃型魔導具が、静かに存在感を放っていた。
「・・・セリア先生。ぼ、僕が撃っていいんですか?」
「もちろん。あなたの魔導具でしょう?自分を信じなさいっ。何かあれば、私が補助するわ。」
ジーンはごくりと喉を鳴らし、銃型魔導具を両手で構えた。引き金にかけた指がわずかに震えている。
セリアは横に立ち、支えるような声で告げた。
「焦らないで。エーテル制御の練習の時のように、まずはゆっくり少しずつ。術式は勝手に動くわ。あなたが無理に調整する必要はない。」
「・・・分かりました。」
夕風が吹き抜け、二人の髪を揺らした。
ジーンは息を整え、銃型魔導具の エーテル流入口 に意識を向けて、そっとエーテルを流し込む。
「先生っ! 回路が・・・。」
「落ち着いて、問題ないわ。流量を一定に。ほら、術式が応答してる・・・撃てるわよ、ジーン」
ジーンは頷き、照門の中心に照星を合わせた。そしてその先にある標的に照準を合わせる。そのまま息を止めると、ジーンは引き金をそっと絞った。
次の瞬間、空気が震え、淡い光の粒子をまとったエーテル弾が一直線に走った。エーテル弾は標的の横を通過し、背後にある土壁に衝突するのと同時に小さな光の散華を残して消える。
「・・・撃て、た・・・。」
ジーンの肩がわずかに跳ね、ほんの一瞬遅れて顔に喜びが広がった。
「撃てたっ! 本当に・・・僕の魔導具がっ!」
セリアは横でその反応を見て、小さく頷いた。
「えぇ、おめでとう。あなたが設計して、組み上げた魔導具よ。偶然でもなく、間違いでもない。あなたの成果よ。」
その言葉に、ジーンの胸が熱く震えた。ジーンの手にしている銃型の魔導具を見つめ、ひと呼吸置いてセリアは口を開く。
「そうね・・・これからは、この魔導具を“魔導銃”と呼ぶことにしましょう。」
「ま、魔導銃・・・!」
ジーンは感激したように名称を反芻し、大事そうに銃身を握りしめた。そのままジーンは意を決して、再度構える。
「もう一度・・・撃ってもいいですか?」
「もちろん。ただし流量は少しだけ上げてみなさい。圧縮術式の反応を見たいわ。」
「はいっ!」
ジーンは呼吸を整え、再びエーテルを流し込む。今度は最初よりも安定して、術式が銃身内で応答した。
二射目が放たれる。
一射目より鋭く、まっすぐに淡い光の軌跡を描きながら一直線に標的へと飛翔する。
ジーンは観察していたセリアに視線を向ける。
「先生、どうですか!?」
「いい感触よ。圧縮も安定しているようね。でも・・・射角がぶれているわね。」
「確かに・・・手にちょっと反動が来ます。」
セリアは頷き、遠くにある的を見つめながら言う。
「次は連射テストもしてみましょう。流量を一定に保ちながら、三連射。」
「わ、分かりました・・・!」
ジーンは緊張を飲み込み、引き金を一定のリズムで三度引いた。次々にエーテル弾が宙を走る。命中率は悪くないが、三射目だけわずかに軌道が逸れて標的に命中しなかった。
「・・・くっ。最後だけズレました。」
「いいえ、最初にしては、たいした命中率よ。ただ、熱が溜まると術式の伝導が鈍るみたいね。これは内部構造の排熱の仕組みを改善する必要があるわね。」
セリアの分析に、ジーンは真剣に頷く。
「先生、もう一つ試したいことがあります。これ、こっそりと組み込んだ拡散モードなんですけど。」
「拡散?」
セリアが眉を少し上げる。
ジーンは銃身側面の小さな術式スイッチを操作し、魔導銃を構えた。
「いきますっ!」
魔導銃にエーテルが流し込まれ、術式が一気に展開する。引き金が引かれ銃口から放たれた光が、三つの小さなエーテル弾に分裂して飛翔する。
「・・・これが、拡散です。」
セリアはしばし沈黙し、的に刻まれた三点の衝撃痕を見つめた。
「・・・悪くないわ。むしろよく考えてる。でもこれ、分岐の術式がまだ不安定ね。」
「たしかに・・・まだ制御しきれていません。」
ジーンは悔しさより、改善欲の方が強い表情で銃を見つめた。
「それと、これってどれくらい数を増やせるの?」
「そうですね。理論上は際限が無いですが、今の性能だと10が精々だと思います。」
「なるほど・・・まさか、こんな隠し球を用意しているとは。魔導銃は、もっと洗練できるわね。」
ジーンの胸がまた熱くなった。
それは成功の実感であり、同時にセリアの言葉によって灯された新しい期待だった。
「・・・十分ね。初回の試射としては上出来よ。ここまで形になるとは思わなかったわ。」
暫くの試射を繰り返した後、セリアのその評価に、ジーンの表情がぱっと明るくなる。
「本当、ですかっ!?」
「えぇ。改良点はまだあるけれど、動くものを作った、という事実は素晴らしいことよ。それに自信にも繋がるわ。」
ジーンは胸の奥で何度もその言葉を噛みしめ、両手で魔導銃を大切そうに抱えた。夕暮れの光が差し込む訓練場は、さきほどまでの緊張と熱気が嘘のように穏やかだった。
セリアは片付けをしながら、少しだけ柔らかな声で続ける。
「今日の結果は、あなたの努力そのものよ。誇っていいわ。」
「・・・ありがとうございます、セリア先生」
返事は小さかったが、その声音には確かな自信と喜びが宿っていた。荷物をまとめ終えたジーンは、魔導銃を専用ケースに収める。その手つきは慎重で、どこか宝物を扱うようだった。
空はすでに薄暗く、街灯が点り始めているのが訓練場からでも見て取れた。
「先生、僕はここで失礼します。」
「気を付けて帰るのよ。」
ジーンは頭を下げると、足早に帰路についた。遠ざかるジーンの背中を見つめながら、静かに呟く。
「さぁて・・・あとは、どこまで伸びるのか。」
冬の夜風を受けながらセリアの顔には満足げな、そしてどこか楽しげな微笑みが浮かんでいた。
こうしてジーンの魔導銃開発の第一歩は、一日の終わりとともに確かな形で幕を閉じた。
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