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【プロット】雨上がりのプラットホーム

雨上がりの匂いが、冷たい空気を満たしていた。

駅のプラットホームに、彼女の姿を探す。

遠くから聞こえるアナウンスと、足早に行き交う人々。

その喧騒の中で彼女だけが、まるで時間が止まったかのように、そこに立っていた。

「ごめんね、遅れた」

息を切らしながら、僕は彼女に駆け寄った。

彼女は少しだけ目を伏せ、小さく首を横に振った。

その仕草がまるで、もう何も言わないで、と言っているようで、胸が締め付けられた。

「もう、行っちゃうんだね」

僕は、そう問いかけた。

彼女は、ゆっくりと顔を上げ、寂しげな瞳で僕を見つめた。

その瞳には、言葉にできない感情が溢れていた。

「うん、さよなら」

彼女はそう呟き、小さく微笑んだ。

その微笑みがまるで、永遠の別れを告げているようで、胸が張り裂けそうだった。

僕たちは、何も言わずにただ、そこに立ち尽くしていた。

雨上がりの空は、嘘みたいに晴れ渡り、夕日が僕たちの影を長く伸ばしていた。

「あのさ……」

僕は、何か言わなければと思った。

けれど言葉は、喉の奥で詰まり、出てこなかった。

彼女もまた、何かを言おうとして、口を開きかけた。

けれど結局、何も言わずに静かに目を閉じた。

遠くから、電車の音が近づいてくる。

彼女はゆっくりと、その音の方へ歩き出した。

僕はその背中を、ただ見送ることしかできなかった。

「さよなら ……」

心の中で、何度もそう呟いた。

けれどその声は、電車の音にかき消され、彼女に届くことはなかった。

電車がホームに入り、彼女は扉が開くと同時に、中へと乗り込んだ。

僕は電車の窓越しに、彼女の姿を追いかけた。

彼女は窓際に立ち、こちらを見ていた。

けれど、その表情はもう、遠くを見つめているようで、どこか寂しげだった。

電車が、ゆっくりと動き出す。

僕は、必死に手を振った。

彼女も、小さく手を振り返してくれた。

けれどその手が、遠ざかるにつれ、だんだんと小さくなっていく。

電車が完全にホームから離れ、彼女の姿が見えなくなった時、僕は、ようやく、彼女と永遠に別れてしまったことを悟った。

雨上がりのプラットホームには、遠ざかる電車の音だけが、静かに響いていた。

僕は、そこに立ち尽くし、空を見上げた。

夕日がまるで、涙で滲んだように、赤く染まっていた。


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