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【プロット】黄昏の駅舎、二つの影

黄昏色の空が、古びた駅舎を静かに包み込んでいた。

()びついたレールの上を、遠ざかる電車の音が寂しく響く。

僕は、その音を背に、彼女の小さな背中を見送っていた。

「さようなら、元気でね」

彼女は、いつもと変わらない笑顔で、そう言った。

けれど、その瞳の奥には、ほんの少しの寂しさが(にじ)んでいるように見えた。

僕たちは、この場所で出会い、共に笑い、泣き、そして、それぞれの道へと歩み出すことを決めた。

僕たちの物語は、この駅舎から始まった。

偶然隣り合ったベンチ、同じ本を手に取った奇跡、夕焼け空の下で交わした最初の言葉。

思い出は、まるで、古びたフィルムのように、僕の心の中に鮮やかに映し出される。

「また、いつか会えるよね」

僕は、そう問いかけた。

けれど彼女は、ただ静かに微笑むだけだった。

その微笑みが、まるで、もう二度と会えないことを告げているようで、胸が締め付けられた。

電車の音が遠ざかり、駅舎には、僕たち二人の影だけが残された。

彼女は、ゆっくりと背を向け、黄昏色の道へと歩き出す。

僕は、その小さな背中を、ただ見送ることしかできなかった。

「さようなら」

心の中で、何度もそう呟いた。

けれど、その声は、黄昏色の空に溶け込み、誰にも届くことはなかった。

駅舎のベンチに腰を下ろし、彼女が読んでいた本を手に取る。

それは、僕たちが出会ったきっかけとなった本だった。

ページをめくるたびに、彼女との思い出が蘇り、胸を締め付ける。

「いつかまた、この場所で会えたら」

そう願いながら僕は、黄昏色の空を見上げた。

空には、一番星が静かに輝き、まるで僕たちを見守っているようだった。

僕たちの物語は、ここで終わりを迎えた。

けれど彼女との思い出は、僕の心の中で永遠に輝き続けるだろう。

そしていつかまた、この場所で彼女と再会できることを信じて、僕は、それぞれの道を歩き出す。

黄昏の駅舎には、遠ざかる電車の音だけが、静かに響いていた。


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