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【プロット】屋根裏の日記帳

ある年の夏、僕は祖母の家の屋根裏部屋で古い日記帳を見つけた。

それは、生まれる前に亡くなった祖父の日記だった。

祖父は寡黙な人で、生前の彼について僕はほとんど何も知らなかった。

日記を読み進めるうちに、僕は祖父が若い頃、激しい恋をしていたことを知る。

相手は、祖父が通っていた大学の図書館で働く女性だった。

日記には、彼女の名前は「雪子」と書かれていた。

雪子は知的で美しい女性で、祖父は彼女に夢中だった。

しかし、雪子は病弱で、長く生きられない運命だった。

二人は、限られた時間の中で精一杯愛し合った。

雪子は、自分の死期が近いことを悟ると、祖父に「私のことを忘れないで」と懇願した。

祖父は「忘れるわけがない」と答えたが、雪子はそれを信じなかった。

雪子が亡くなった後、祖父は深い悲しみに暮れた。

日記には、彼が毎晩のように泣いていたことが記されていた。

しかし、彼が泣いていた理由は、雪子の死だけによるものではなかった。

ある日、祖父は雪子の遺品を整理していた。

その中に、彼女が書いた手紙の束を見つけた。

雪子が祖父に宛てて書いたラブレターだった。

しかし、その内容は、祖父が想像していたものとは全く違っていた。

手紙の中で雪子は、祖父への愛情を綴っていた。

しかし、同時に、彼との未来がないことを悲観し、彼を苦しめることへの罪悪感を吐露していた。

そして、最後の手紙には、こう書かれていた。

「あなたと出会わなければ、私はこんなに苦しまずに済んだでしょう。

でも、あなたと出会わなければ、私は本当の愛を知ることもなかったでしょう。

だから、私はあなたに感謝しています。

そして、あなたを許してください」

祖父は、雪子の手紙を読んで、初めて彼女の本当の気持ちを知った。

彼は、自分が雪子を苦しめていたことを悟り、激しい後悔に襲われた。そして、彼は雪子の墓の前で、泣き崩れた。

彼が泣いていたのは、雪子の死を悲しむと同時に、彼女を苦しめていた自分自身を責めていたからだった。

僕は、日記を読み終えて、祖父の涙の理由を知った。

それは、愛する人を失った悲しみと、愛する人を苦しめていた自分自身への後悔が入り混じった、複雑な感情だった。

祖父の日記を屋根裏部屋に戻し、静かに部屋を後にした。

夏の午後の日差しが、僕の頬を照らしていた。


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