【プロット】いちごの涙
初夏の陽光が降り注ぐ、緑豊かな丘陵地帯。
その一角に広がる、小さなイチゴ農園。
瑞々しい赤い実が、緑の葉の間から顔をのぞかせている。
そこで働く少女、あかりは、イチゴをこよなく愛していた。
真っ赤に熟れたイチゴを頬張る時、甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がり、至福の喜びを感じるのだった。
あかりは、農園のオーナーである両親と共に、毎日イチゴの世話に励んでいた。
土壌を耕し、苗を植え、水やりをし、丁寧に実を摘み取る。
一つ一つの作業を、愛情を込めて行っていた。
しかし、その年は、あかりにとって試練の年となった。
長雨の影響で、イチゴの実が腐ってしまう病気が蔓延してしまったのだ。
「せっかく育てたイチゴが…」
あかりは、病気で傷ついたイチゴを見るたびに、胸が締め付けられる思いだった。
両親も、懸命に対策を講じたが、病気の勢いは止まらなかった。
収穫量は激減し、農園の経営は苦しくなっていった。
あかりは、両親の疲れた顔を見るたびに、自分が何かしなければと焦る気持ちでいっぱいだった。
そんなある日、あかりは、農園の一角で、一粒のイチゴを見つけた。
それは、病気にかからず、見事に真っ赤に熟れたイチゴだった。
あかりは、そのイチゴをそっと手に取り、じっと見つめた。
すると、不思議なことに、イチゴの実から、一粒の雫がこぼれ落ちた。
それは、まるでイチゴが流す涙のようだった。
「どうして…?」
あかりは、驚きと戸惑いを隠せない。
しかし、次の瞬間、彼女はハッとした。
「そうか…これは、希望の涙なんだ!」
病気で苦しむイチゴたちの中で、たった一つ、健気に育ったイチゴ。その姿は、あかりに勇気を与えてくれた。
「諦めない…絶対に諦めない!」
あかりは、涙を流しながら、力強く誓った。
そして、両親と共に、再びイチゴの世話に励み始めた。
病気の対策を徹底し、新しい品種の導入にも挑戦した。
あかりの懸命な努力は、少しずつ実を結び始めた。
数年後、農園は再び活気を取り戻し、あかりの顔にも笑顔が戻った。
そして、あの日見たイチゴの涙は、あかりの心を支え、彼女をイチゴ作りへと駆り立ててくれるのだった。