【プロット】冬の贈り物
カーテンの隙間から差し込む朝の光で、目が覚めた。
まだ薄暗い部屋の中、白い息が冬の訪れを告げている。
布団から抜け出すと、足の裏にひんやりとした感触が伝わってきた。
窓の外を見ると、一面の銀世界。昨夜降った雪が、静寂の世界を作り出していた。
今日は、12月24日。クリスマスイブだ。
いつもなら、街の喧騒に包まれる日だが、今年は違う。
私は、この静かな朝を、一人きりで迎えている。
恋人と別れて、1週間。
3年間付き合った彼は、私の全てだった。
一緒に過ごす未来を夢見ていたのに、彼は突然、「他に好きな人ができた」と告げてきた。
クリスマスのイルミネーションも、街に流れるクリスマスソングも、今はただ、私の心を締め付ける。
ため息をつきながら、コーヒーを淹れる。
温かいコーヒーを一口飲むと、少しだけ心が落ち着く。
窓の外を眺めていると、小さな影が目に留まった。
それは、一羽の小鳥だった。
雪に覆われた木々の上で、羽を休めている。
その姿は、どこか寂しげで、私の心に重なった。
小鳥は、しばらくすると、どこかへ飛び去っていった。
私も、この場所から、飛び立ちたい。
そう思った私は、厚手のコートを着て、外に出た。
雪を踏みしめる音だけが、静寂の世界に響く。
誰もいない公園を、ゆっくりと歩く。
冷たい風が頬を撫で、涙がこぼれそうになる。
そんな時、公園のベンチに、赤いマフラーが置かれているのを見つけた。
誰かが忘れていったのだろうか。
マフラーを手に取ると、まだ温かさが残っていた。
その温かさに触れた瞬間、涙が溢れ出てきた。
ベンチに座り込み、赤いマフラーを顔に埋める。
マフラーから、ほんのりとした石鹸の香りがした。
それは、かつて彼が愛用していた石鹸の香りだった。
まさか。
顔を上げると、そこに彼が立っていた。
「……なんで?」
私は、驚きと戸惑いを隠せない。
彼は、少し照れたように笑って、こう言った。
「やっぱり、君じゃなきゃダメなんだ。
やり直したい」
彼の言葉に、私は再び涙が溢れてきた。
今度は、嬉し涙だった。
彼は、私の隣に座り、赤いマフラーを私の首に巻いてくれた。
「クリスマスプレゼント。
気に入ってくれるかな?」
私は、マフラーに顔を埋め、彼に抱きついた。
「ありがとう。
最高のプレゼントだよ」
雪が降る静かな公園で、私たちは、再び愛を確かめ合った。