【プロット】白い鳩
冬の朝。まだ薄暗く、吐く息が白く煙る中、古びたアパートの一室で、男は目を覚ました。
男の名は、木崎透。
40代半ば、くたびれた風貌の中年男だ。
部屋の中は冷え切っていて、暖房器具もない。
窓には薄い氷が張り、そこから差し込むわずかな光が、部屋の中を青白く照らしている。
透はベッドから起き上がり、重たい体を引きずって窓辺へ寄った。
窓の外は、一面の銀世界。昨夜からの雪が、静かに街を覆っていた。
しんしんと降り積もる雪を見つめながら、透は深くため息をついた。
「今日も、何も変わらない一日が始まるのか…」
透は無職で、ここ数ヶ月、仕事を探しているが見つからない。
日々の生活費にも困窮し、アパートの家賃も滞納している。
孤独と不安が、透の心を蝕んでいた。
そんな透にとって、唯一の楽しみは、近くの公園で鳩に餌をやることだった。
彼は毎朝、パンくずをポケットに詰め、公園へ向かう。
鳩たちは、透の姿を見ると、一斉に集まってくる。
透は、鳩たちに餌をやりながら、束の間の安らぎを感じていた。
その日も、透は公園に向かった。
雪が降る中、いつものようにベンチに座り、鳩たちに餌をやる。
すると、一羽の白い鳩が、透の足元に舞い降りてきた。
透は、その白い鳩に見覚えがあった。
それは数日前、怪我をして飛べなくなっていた鳩だった。
透はその鳩を家に連れて帰り、手当てをしてやったのだ。
白い鳩は、透の足元で、何かをついばんでいる。
透が近づいてよく見ると、それは、小さな銀色のペンダントだった。
透は、ペンダントを拾い上げ、手のひらに乗せてみた。
ペンダントには、見慣れない模様が刻まれている。
その瞬間、透の頭の中に、不思議な映像が流れ込んできた。
それは、雪に覆われた山奥の風景、そして、美しい女性の姿だった。
透は、その映像に心を奪われた。
「これは、一体…?」
透は、ペンダントを握りしめ、家に帰った。
そして、ペンダントについて調べ始めた。
するとペンダントは、遠い国の王家に伝わる秘宝であり、不思議な力を持っていることがわかった。
そして、映像の中の女性は、その国の王女であることも。
透は、ペンダントの力を使って、王女を助けなければならないという使命感に駆られた。
それは、彼の人生を変える、大きな転機となる出来事だった。
透は、白い鳩を道案内に、雪深い山奥へと旅立つことを決意する。
それは彼にとって、人生で初めての、そしておそらく最後になるであろう冒険の始まりだった。