【プロット】ゲームパーティー
煌びやかなシャンデリアの光が、大理石の床に砕け散る。
華やかなドレスを身に纏った令嬢たちの嬌声が、軽やかな音楽と共にホールに響き渡る。
だが、俺――結城 拓也は、そんな光景をまるで白黒映画でも見るように、どこか冷めた視線で眺めていた。
ゲームのコントローラーを握る方が、よっぽど落ち着く。
パーティなんて、俺には場違いだ。
兄貴に無理やり連れてこられなければ、今頃は家で新作RPGに熱中していたはずなのに。
「拓也、ちゃんと周りを見てご挨拶しなさい。
せっかく伯爵家に招待されたんだから」
兄貴――結城 啓介は、相変わらず完璧な笑顔でそう言った。
社交界の華と呼ばれる男だ。
容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能。
俺とは正反対の、まさに絵に描いたような完璧人間。
「わかってるって。
でも、こんなとこに可愛い女の子なんているわけ ───」
そう呟いた瞬間、視界の端に、一人の少女が飛び込んできた。
吸い込まれそうなほど透き通った青い瞳。
絹糸のような滑らかな金髪。まるで妖精のような可憐な少女は、ホールの隅で一人、静かに本を読んでいた。
「─── っ 」
心臓が、バクバクと高鳴る。
こんな感覚、初めてだった。
ゲームのヒロインだって、ここまで心を揺さぶられたことはない。
「おい、拓也。
どうしたんだ」
兄貴の声が、遠くから聞こえる。
だが、俺はもう、少女の姿から目を離すことができなかった。
「─── あの子、誰」
思わず、そう呟いた。
「ああ、あの子はエリーゼ様だよ。
侯爵家のご令嬢で、啓介様の婚約者候補なんだって」
隣にいた令嬢が、親切に教えてくれた。
婚約者候補。
啓介の。
─── ダメだ。
この気持ち、抑えきれない。
俺は、エリーゼ様に近づくため、人混みをかき分けて進んでいった。
ゲームで鍛えた回避スキルが、こんなところで役に立つとは。
「あの、エリーゼ様、ですよね」
勇気を振り絞って、声をかける。
エリーゼ様は、驚いたように顔を上げた。
「はい ───
そうですけど」
「僕は、結城 拓也です。
こ、この度は、お会いできて光栄です」
緊張で、声が上ずってしまう。
だが、エリーゼ様は、優しく微笑んでくれた。
「結城、拓也様、ですね。
わたくしこそ、お会いできて光栄ですわ」
その瞬間、俺は決意した。
エリーゼ様を、絶対に、俺のものにする。
たとえ兄貴の婚約者候補であろうと。
このパーティ会場が、俺の新たな戦場になった。
そして、エリーゼ様は、俺が必ず手に入れるべき、最高のレアキャラだ。
ゲームで培った知識と経験を駆使して、俺はエリーゼ様の心を攻略していく。
ライバルは、もちろん、完璧超人である兄貴だ。
だが、俺は負けない。
だって、俺は ───
「キングだから」
そう、心の中で呟き、俺は不敵に笑った。