【プロット】失われた記憶を届ける旅人記憶を届ける旅人
古びた革鞄を肩にかけた男、エルリックは、記憶を届ける旅人だ。
彼は、依頼人のもとを訪れ、 "記憶の種" と呼ばれる小さな球体を受け取る。
その種には、依頼人が誰かに届けたい記憶が封じ込められている。
エルリックは種を掌に握りしめると、目を閉じ、記憶の世界へと入り込む。
記憶の世界は、いつも生々しく、鮮やかだ。
ある時は、初恋の甘酸っぱい記憶。桜の花びらが舞う中で、少女は恥ずかしそうに微笑む。
またある時は、深い悲しみに暮れる記憶。
最愛の妻を亡くした男は、彼女の遺影を抱きしめ、慟哭する。
エルリックは、依頼人の記憶を五感で追体験し、その感情を自分のものとする。
そして、記憶の世界から戻ると、依頼人が指定した人物のもとへと旅立つ。
彼は、記憶を受け取る相手に、その記憶の世界をありのままに伝える。
相手の心に、直接語りかけるように。
時には、言葉では言い表せないほどの喜びを。
時には、深い悲しみと向き合う勇気を。
エルリックは、記憶を届けることで、人々の心を繋ぎ、癒していく。
ある日、エルリックは、一通の手紙を受け取る。
差出人は、かつて彼が記憶を届けた女性だった。
彼女は、エルリックが伝えた記憶によって、亡き夫の深い愛情を知り、前を向いて生きていけるようになったと綴っていた。
エルリックは、手紙を読み終えると、静かに微笑んだ。
彼は、今日もまた、記憶を届ける旅に出る。
人々の心に、希望を灯すために。