【プロット】再会の約束
冷たい風が頬を刺す冬の夜、僕はあの場所へと向かっていた。
そこは、街外れの小さな公園。
古びたブランコと滑り台、そして砂場があるだけの、どこにでもあるような公園だ。
だが、僕にとってはこの場所が特別だった。
10年前、幼馴染のユキとここで将来の夢を語り合った。
医者になる、宇宙飛行士になる、世界一周をする ───
子供らしい無邪気な夢を、互いに笑いながら語り合ったのだ。
そして、10年後の今日、再びここで会う約束をした。
ユキは海外留学のため、長い間街を離れていた。
手紙やメールのやり取りはしていたものの、直接会うのは10年ぶりだ。
公園に着くと、懐かしい風景が広がっていた。
ブランコは錆びつき、滑り台の色は褪せていた。
10年前の記憶と変わらない風景に、胸が熱くなるのを感じた。
「久しぶりだね、ヒロキ」
聞き慣れた声が背後から聞こえた。
振り返ると、そこにユキが立っていた。
大人びた雰囲気になり、長い髪を後ろで一つに束ねている。
10年の歳月を感じさせるものの、あの頃の面影は残っていた。
「ユキ!」
再会の喜びに浸る間もなく、ユキは深刻な表情で話し始めた。
「実は、話したいことがあって ───」
ユキは、海外で出会った男性と結婚すること、そして、その国で暮らすことを決めたと告げた。
突然のことに、僕は言葉を失った。
「そうか」
絞り出すように答えるのが精一杯だった。
ユキは、寂しそうな顔で僕を見つめた。
「ごめんね、ヒロキ。
ずっと、あなたに伝えたいと思っていたのに ───」
ユキの言葉に、僕はハッとした。
ユキはずっと、僕に想いを寄せてくれていたのだろうか。
10年前、この場所で将来の夢を語り合った時、ユキの目はどこか切なげだった。
あの時、僕はユキの気持ちに気づくべきだったのだ。
「ユキ、僕は ───」
何かを言おうとしたその時、ユキは僕の言葉を遮るように言った。
「もう、いいの。
あなたの幸せを願っているわ」
そう言って、ユキは僕に背を向けた。
ユキの後ろ姿を見つめながら、僕は10年前の約束を思い出していた。
「10年後、またここで会おうね。
そして、お互いの夢を叶えて、またここで語り合おう」
あの時、ユキはどんな気持ちでこの約束をしたのだろう。
そして、今、どんな気持ちでこの場所を去っていくのだろう。
冷たい風が、僕の頬を撫でていく。
ユキは、もう公園にはいなかった。
残されたのは、僕と、10年前の約束の場所だけだった。