【プロット】交錯する野望
スマホに映し出されたのは、人気アイドルグループ「ルミナス」のセンター、星野ひかりの失踪を告げるニュースだった。
警察は事件性も視野に入れて捜査を進めているという。
同じ頃、新宿のバー「アトランティス」では、売れない小説家、水原蓮が酒をあおっていた。
彼はスランプに陥っており、新作のアイデアが全く浮かばない。
焦燥感に駆られる中、バーの常連客である謎の女、黒木沙夜から奇妙な話を持ちかけられる。
「星野ひかりの失踪には、裏がある。
彼女はある組織に監禁されている」
胡散臭いと思いつつも、蓮は沙夜の言葉に興味を惹かれる。沙夜は続ける。
「私は、彼女を救い出す計画を立てている。
あなたには、その計画を小説に書いてほしい」
蓮は沙夜の真意を測りかねながらも、この話が新作のネタになるかもしれないと考え、彼女の依頼を引き受けることにする。
沙夜から提供された情報をもとに、蓮は小説を書き始める。
それは、アイドル失踪事件の裏に隠された陰謀を描いたサスペンスだった。
蓮は、沙夜が語った「組織」の存在を疑っていたが、取材を進めるうちに不可解な点にいくつも遭遇する。
星野ひかりのマネージャーは、彼女の失踪について不自然なほど冷静だった。
また、ひかりの熱狂的なファンの一人である青年、工藤誠は、事件当日、ひかりと会っていたことを隠していた。
蓮は、沙夜、マネージャー、ファンの三者にそれぞれ話を聞き、彼らの証言を元に物語を組み立てていく。
しかし、それぞれの話には矛盾があり、蓮は誰が真実を語っているのか分からなくなる。
ある日、蓮は沙夜のアパートを訪れる。
部屋の中は荒らされており、沙夜は何者かに連れ去られた後だった。残されたメモには、
「もうこれ以上、首を突っ込むな」
という警告のメッセージが残されていた。
蓮は、沙夜の身にも危険が及んでいることを悟り、事件の真相を突き止めようと決意する。
彼は、これまで集めた情報を整理し、三者の証言の矛盾点を洗い出していく。
そして、ついに事件の真相にたどり着く。
星野ひかりの失踪は、実は彼女自身が仕組んだ自作自演だった。
彼女は、人気絶頂のうちに芸能界を引退し、海外で新しい人生を歩もうとしていたのだ。
マネージャーは、ひかりの計画に協力しており、ファンは、ひかりから口止めされていた。
そして、黒木沙夜の正体は、ひかりのライバルアイドルだった。
彼女は、ひかりの失踪を利用して、自分がトップに立とうと企んでいたのだ。
沙夜は、蓮に小説を書かせることで、世間の注目をひかりの失踪事件に集め、自分の計画を有利に進めようとしていた。
蓮は、すべての真相を明らかにした小説を書き上げる。
小説は大きな反響を呼び、星野ひかりは世間から非難を浴び、芸能界に復帰することはできなかった。
黒木沙夜は、計画が失敗に終わり、逮捕された。
蓮は、一連の事件を通して、真実と虚構の境界線があいまいになることを実感する。
そして、小説家として、真実を追求することの重要性を改めて認識する。
数年後、蓮は人気作家になっていた。
ある日、彼は街で星野ひかりと再会する。彼女は、過去の過ちを反省し、静かに暮らしていた。
二人は言葉を交わし、それぞれの道を歩んでいく。
蓮は、あの事件を題材にした小説を書き続ける。それは、偽りの物語に翻弄された人々の、真実の物語だった。