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もうけばなし ~無限ババ抜き編~

作者: ほんの未来

 間に合った! 色気のないチョコレートの話! どうぞお楽しみください!

 今日はバレンタインですね!


 いくつ貰えるかなーとか。浮ついた心じゃ、ダメ、絶対!

 こちらから、獲りにいかなくちゃ!


 さぁさ、毎度いつもの悪い冗談(バッドジョーク)

 サブタイトルでもう何となくお分かりかと思いますが。

 絶賛ババ抜きの真っ最中。お相手はこちら。


 最悪の魔王、カネガス=ヴェーテ。

「ふはははははっ、そら、ダイヤのKが揃ったぞ!」


 最低の魔王、(なや)――っと、ああちょっと、ちょっと待って、本名ばらそうとしたら、すげぇ睨まれた。はいはい、超絶美少女ナヤミンちゃんですね。

「きゃははははっ、分かればいーの! ハートのQそーろい!」


 最弱の魔王、D。

「だから嫌だって言ったのに……(ぶつぶつ)」

 テンションだだ下がりな、(見た目は)少年魔王。カード、揃わなかったみたい。ババ引いたのかも?


 最近の魔王、シャベツ≒クベツ。

「まぁ、そう落ち込みなされずとも。なるようになりますよ。ああ、スペードの6が揃いましたね」

 こちらは執事然とした片眼鏡の男。1番まともそうで、実際1番まともなのだが……他の魔王とタッグを組ませると大変酷いことになる。ここ、魔王ばっかりなんだけど!?


 ロクなメンツじゃないですね!


   †


 ゲーム名は『無限ババ抜き』

 無限とはまた、大袈裟ですが、場に出ている既に揃ったカードは300枚を優に超えています。


 え? ババ抜きのトランプは53枚(=数字13種×絵柄4種+ババ1枚)だろって?

 そうそう、そこがこのゲームのキモってやつ。

 さっきの、魔王たちの発言、ちょっと変だったでしょ?

『ダイヤのK』『ハートのQ』『スペードの6』が揃う?

 同じカードが何枚も入ってないと、揃うはずがありません。

 なんと、使ってるトランプは10組。

 520枚にジョーカーを1枚だけ混ぜての521枚でのババ抜き。

『クラブのAとダイヤのA』で揃えたりできないルールなんで、ここ注意ね!


 ふあ……と欠伸が漏れる。っとと、いけない、いけない。集中しないと。

 いや、いかんせん魔王たちの時間感覚はイカれている。

 勝負は1回こっきりとは言え、もうそろそろ開始から2時間が経過。


 え? ああ、13種の数字だけ揃えるより、52種の数字と絵柄の組み合わせを揃える方がよっぽど大変なんで。そりゃあ、時間も掛かりますって。


 それ、どこが楽しいのって? 面倒なだけじゃないのって?

 あー、いや、これがポーカー的な面白さと言いますか。


 景品は板チョコである。

 あー、繰り返す。景品は板チョコだ。文字通りの意味で、万札の隠語ではない。

 メーカーに関しては割愛するが、筆者は『きのこ党ガーナ派』だ。異論反論は尊重するが、思想の強要は世界平和のために推奨しない。好きな銘柄を想像したらいいんじゃないかな。


 金を賭けてるワケでもないのに、本当に面白いのかって? あ、私の番。


「よし、クラブのJが揃ったぞ!」


 場にクラブのJを2枚出す。

 すると、どこからともなく板チョコが現れる。22枚。


「むっ……揃ったのはダイヤの9か」

 最悪の魔王、カネガス=ヴェーテの前に、18枚。


 そう、揃った数字によって、貰える板チョコの数に差が出るルール。


「くぅー、揃わなかったわ! 次、アンタの番よー」

 最低の魔王、ナヤミンちゃんは揃わず、0枚。


「クラブのA。……、もうやだ……」

 最弱の魔王、Dは板チョコ2枚を受け取る。枚数少ないのばっかり揃ってる。


 こんな具合。

 トランプ10組分、板チョコ3640枚を奪い合う、それが『無限ババ抜き』である。


 なお、板チョコ代の請求書だが、最後にババを持ってた人が、その枚数に応じて割り勘するのだが……。


「くく……ふふふ……あーっはっはっは! リスクが怖いかね? ジョーカー10枚ぐらい入れてやろうか?」

「は? 1枚で充分だし、何言ってんの???」


 筆者(わたし)は魔王の挑発に乗った。救いようのない馬鹿である。

 ちなみに、ジョーカーは揃っても場に出せない。

 まぁ、今回は1枚しかないので揃いようもないのだけれど。


 とはいえ、魔王が相手では、対等な勝負になりません。

 前段階の取り決めが大変でした。


「ええと、まず、全知や全能は禁止。自身の手持ちのカード以外を把握したり、存在確率をいじったりするのは厳禁。あと未開封トランプの初期配列を知っていて、シャッフルしてるはずのカードの順番変更を全て目で追って……みたいなこともダメだからな?」

「ふむ……いいだろう、マクスウェル! いるか?」


 カネガス=ヴェーテの配下、マクスウェル。

 どこからともなく現れ……たワケじゃないのか。最初からそこに居たと。どうやら微小な『誰にも見つからない確率』を必然にねじ曲げていたみたいだ。油断ならない。


「変に気を回して忖度するでないぞ?」

「委細承知致しました。他の配下にもそのように伝えましょう」


 ふっと、また消える。移動したの? 見えないだけ?


「読心術を使ったり、精神操作したり、変な魔法やら奇術の類、マジシャンズセレクトやフォースみたいな……思ったカードを相手に取らせるようなのも禁止、いいな?」

「はーい、そんなのするワケないじゃーん♪」


 と、最低の魔王、ナヤミンちゃん。小馬鹿にしたような煽りもやめい。精神操作に含まれないのかそれは。


「あー。うん、お前はいいや。そのままで」

「どういうこと? ねぇ? どうせ負けるって思ってる?」


 最弱の魔王、D。いやだって、ああうん、その通り。


「その他、カードのすり替えや事前の打ち合わせ、通しのサイン諸々も禁止。あとは――」

「それなら、イカサマ禁止の結界を張りましょうか?」

「結界?」

「あとから、イカサマをしたかどうかで勝負は無効だと言い争う……。それは興ざめだと思いませんか? せっかくの交流の場なのですから」


 最近の魔王、シャベツ≒クベツが指を鳴らすと、球状の立体魔法陣が私たちの周囲を覆った。なんでもありだな。


「どんな効果なの、これ」

「たとえば、こんなふうに」


 シャベツが油性ペンでトランプの裏側にマークを描こうとしてみせる。しかし、まったく印を付けることができない。私も手に取り、試しに1枚を折りたたんでみようとしたが、しなるだけで折り目を付けるのさえ無理。ありとあらゆるイカサマが絶対にできなくなっている。


「おい、シャベツ? もし、戯れの最中に、配下などから緊急で連絡がきたらどうなるのだ?」

「ええ、ご心配なく。その配下が他のプレーヤーのカードを覗き込んだりしていない限り、普通に話すことができますよ。部外者を介したイカサマにならない範囲であれば、なんら制限は掛かりませんので」

「ふむ。ならば良いか」


 カネガスの確認に、問題ないと返すシャベツ。

 私もようやく、まともな勝負になりそうだと思えた。

 このゲームに必勝法はなさそうだ。詰まるところ、純粋な運ゲー。5回中4回勝てるなら、いけるいける! なんて思ってた。


 そして、現在。


 今のところの板チョコ数。

 1位はカネガス=ヴェーテ。572枚。

 2位はナヤミンちゃん。418枚。

 3位は私。370枚。

 4位はシャベツ≒クベツ。324枚。

 5位はD。80枚。


 さすが、最弱の魔王、D……純粋な運ゲーのはずなのに、ここまで弱いとは……。

 このゲーム、大量のデックを使っているので、最初の配られた手札でガンガン揃うはずで、それで板チョコ300枚以上手に入るのが普通、のはず。

 なにせ、初期の手札が1人当たり104~105枚。カードが53種しかないのだから、最初から揃ってるカードを除外するだけで50枚以上が確定で消えるはず。


 マジでイカサマしてないの? さっきから、Aと2とたまに3しか揃ってないんだけど?


 なんて、思ってたのに。


「……あがり。ふう。もう二度とやりたくない……」


 なんと、最弱がいち抜け。裏切ったな! 信じてたのに!

 受け取ったチョコの枚数は184枚。

 え? 3640枚を5人で山分けだよな? 期待値728枚のはずなんだけど??


「すみませんな。ワタクシもこれであがりです」


 続いたのがシャベツ。614枚。


「アタシもあがりー♪ きゃはは、後は頑張ってね~☆」


 ナヤミンちゃん。888枚。


 えええええ。結局カネガスと一騎打ち!?


 現状。

 私、手持ちカードは12枚。ただしババがある。板チョコは752枚。

 カネガスの手持ちカードは15枚ぐらい? 少し私より多い。チョコは980枚。


 ジョーカーが残る私か、やや手持ちが多い最悪の魔王か?


 そんなとき。


 君が現れた。


 え? 私の驚きを余所に、カネガスが君に声を掛ける。


「おお! いやはや、君は運がいい!」


 最悪の魔王、カネガス=ヴェーテは両手を広げ、この場に訪れた君を歓迎した。


 私も声を掛けようとして、絶句。声が出せない。あ。イカサマ禁止結界!?


「今、ちょうど絵合わせのゲームをやっておってな! 見ていると良い、こうやってカードを引くだろう? ほら、ダイヤの10が2枚揃った! するとだ、板チョコが20枚貰える! 素晴らしいと思わないかね?」


 君はその気前の良さに大いに驚いた様子。


「いやぁ、我はこれで板チョコ1000枚も手に入れてしまったしな! キリがいい、この残ったカードは君に譲ろうじゃないか!」


 やめてやめてやめて! 叫ぼうとするが、声はおろか、表情ひとつまともに変えられない。身振り手振り? 不可能。第三者を介した意思疎通の全面的禁止! ああもう!


 勝ち逃げとか卑怯だぞ! ああもう本当に最悪だ!

 君と請求書(ババ)の押し付け合いなんて、私はしたくないんだよ!

 最初から最後まで参加してたら、確かにフェアなゲームだったんですけどね。もう懲り懲りだよ。

 なお、最初は皆が儲かっているように見えるところや、最後はババの押し付け合いになるところ、あとから参加しようとすると既参加者の勝ち逃げを許すかたちになるところ。

 傍からみれば悪い冗談、世にありふれた「もうけばなし」の一例として……まぁ、引っかからないよう注意していきましょうね!


 さて、1ヶ月後のホワイトデーにも「お返し」をテーマに「もうけばなし2 ~必勝ギャンブル編~」を予定。その前にも何か上げたいところですが、はてさて。

 あとがき下のところから、評価を頂けると作者のテンションが爆上がります。よろしくね!^^

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