『冒険者テスト・天乃』
原都が冒険者テストをしている時、実は天乃は同時進行で別の仮想空間でテストを受けていた。
「何!?いきなりみんないなくなったんですけど!?」
:::::::::::::::::::::::::::テスト終了後::::::::::::::::::::::::::::::
「君は不合格だ。お兄ちゃんの原都くんと同じで。」
「え、あーハンマー投げる能力の人?いきなりやめてよー!」
「怪我してるか?」
「いや、別にー?」
「そうか、冒険者テストは何回でもできるから合格するまで頑張れよ」
「はーい、まあ、よくわかんないけど。」
「それはそうと、自己紹介してやる。」
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「俺は風水時太郎だ。最大10秒時を止められる。」
「あ、おとーさんじゃん!区役所で働いてるって、ここだったんだね!知らなかった!」
「まあ、そうだ。」
「んじゃ、仮想空間消して元に戻すねー。」
“フッ”
「「わっ」」
「お前どーせ俺のこと見て爆笑してたんだろ!?」
「え?なんの話してるの?」
「あれ?まあ違うならいいんだよ、、、」
「で、テスト合格だった?」
「ん?な、なんのことかな?、、、」
「冒険者テストのこと!」
「な、な、な、な、何かなーーそれ?」
「落ちたんだー?誤魔化さなくていいのにー」
「お、落ちたよ!お前は?」
「落ちた!」
「落ちたのかよぉ〜」
「原都も落ちたなら人のこと言えないでしょ」
「ま、まあな。また今度受けにくる?」
「受ける必要性感じないんだけど。怪我までしてお金のためにする?そんなにお金に困ってたっけ?」
「確かに。怪我してまで受ける必要ないな。」
「え、お、おい!君たち!」
「どしたー?ローリープォップ?」
「今やめちまうのはまだ早いぞ!君たちには素質があるからな!」
「そうかよ。やる気がねえのにやらせて死んじまってもいいのかよ?大した絆もないやつに命かけられねえよ。」
「そ、それもそう、、、だな?まあ、せめて明日まで。考えてみるといいさ。それでもやりたくなかったら仕方ない。」
その後、家に帰り、土日だからと、出された修学旅行レポートを書いている。折角帰ってきたっていうのに。なんでこんなもの書かなきゃならない。その点では合法的に学校を辞められる冒険者はいいかもしれないが。
「はーあ。天乃ー、レポートパクらせてー。」
「私もパクらせて欲しいぐらいよ!」
「なんだよ。早くやれよー」
そうこうしてるうちに夜になり、父が帰ってきた。
「ただいまー」
「あ、おかえりー」
「テスト、ダメだったがそこそこ頑張ったと思うぞ!」
「あーやっぱり父さんが審査員だったんだ?」
「ああ。今回は役目がなかったがな!普段なら決着がつきそうな瞬間に時を止めて、『勝負ありー』ってやるんだけど、、、する必要がなかったというか?」
「ふーん」
「俺は怪我したんだぞ!」
「あんな怪我は怪我って言えないレベルの小さな怪我だぜ。男ならもうちょい踏ん張れよ〜」
「ちぇっ」
「なんだよ、『ちぇ』って」
「うるせーなー」
その瞬間、地鳴りがし、吊るしてある電気が揺れ、食器棚から皿が飛び出してパリンパリンと割れる音がした。地震だ。
ローリープォップは、地震は魔王の仕業だと言っていた。こんなことが頻繁に起きていたら命がいくつあっても足りない。
「なんだ、大きい地震だなぁ、」
「待って!ここからさらに大きい揺れがくる気がするわ…」
“き、緊急地震速報です!愛知県から千葉県あたりまでを震源とする『南海トラフ地震』と呼ばれるものだと思われます。自分の身を守る行動を…ぐわっ、、、”
「あ、、アナウンサーが!!なんかの下敷きに!!」
「危ない!!」
「え?」
“ピタッ”
そこには他の物が何も動かない静止した空間があった。そして、落ちてきた電球の下にいた俺を助けてくれたのだ。
約10秒の間に父さんは俺たちを危険なところから安全な所に移動させ、なるべく助かるようにと努力してくれた。
“フッ”
そうして時は再び動き出した。
しかし。父さんはギリギリ間に合わず、割れて飛散したガラスに目をやられた後、ピアノに踏み潰され、上からパソコンのモニターが飛んでくる始末。重体だった。しかし、あまりにも危険なため、助けに行くことはできなかった。
「お父さん!!」
天乃は飛び出した。
俺はそれを庇うように天乃の天井に慌てて鋼鉄を張り、なるべく落下物による怪我はしないようにした。
「お父さん!お父さん!返事して!」
天乃は泣き崩れていた。
気づいたら俺も、涙が止まらなかった。
そこには母はいなかった。遠くに出張に行っていたのだ。共働きだったから。生きてるかなぁ。
父さんは言った。
「能力は人のために使いなさい」
と。
今、父さんは立派に有言実行したと思う。
でも、父さんにはまだ死んで欲しくない。
しばらく経って、揺れは収まったものの、街は壊滅的な被害を受けていた。
街は心の天気とは裏腹にからっと晴れていた。