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細かな装飾なども終わり、ついに公園が完成した。
今日はそのお披露目式である。
「それじゃあみんな、思う存分遊んでおいで!!」
長ったらしい挨拶で子どもたちを待たせても悪い。マルコの簡潔な挨拶で子どもたちはわーっと走り出す。
その光景にマルコは心がほっこりする。
そんなマルコのミャアが尻尾を振ってソワソワしている。
「ミャアも遊んでおいで。」
「でも…」
ソワソワと遊んでいる子どもたちを眺めるミャアだが、やはりマルコを1人放置するのは抵抗があるのだろうか。
どうしたもんかな… ん?
ソワソワしているミャアの後ろ、もっと遊びたくてウズウズしているシィロンを見つけた。
「クスッ、それじゃあミャア。シィロンが遊びたいみたいだし、連れて行ってくれないか?」
「えっ!?」
「やったっ! じゃあみゃあ!まずはあっちからだっ!!」
「ちょっ!シィロン様っ!?」
シィロンはミャアの手を取るとひゅうと飛んでいった。
「やれやれ、まったくあやつは子供だな。」
「ん? クウガはいいのか?」
「まぁ我は大人だからな。…それより……ジュルリ…」
クウガの視線の先の広場では、大人たちがバーベキューで酒盛りをしている。サンドウィッチなんかも用意してあり、ピクニックを楽しんでいる様子だ。
「ははっ、クウガは遊びより食い気か。どっちも子供じゃないのか?」
「んなっ!? 我は育ち盛りなだけだっ!!」
「はいはい。そういやクウガたちって幾つなんだ?」
「ん? 我らか? …う〜む……歳なんぞ数えてはおらなんだからな。まぁ聖獣としてはかなり若い方で間違いないぞ?」
聖獣としては、か…
聖獣はいつどのように生まれたかははっきりしない。ただほとんどの場合ダンジョンの側で生まれることから、神が遣わした地上の守護者や防衛者とされている。
そして現状、ダンジョンはダンジョンコアを回収する事によりモンスターの発生を抑制して管理下に置くことはできるが、門を閉ざすなどダンジョンそのものをなくすことはできない。
そのせいか、聖獣には自然死の事例の報告は無く、記録がある中で最も古い聖獣だと有史以前、数千年以上生きているのではとされている。
…うーん…… 物差しがでかすぎてわからんな。
「まぁそれでもお前よりはだいぶ年上だからな…敬えよ?」
「はいはい。我らが聖獣様はご飯をご所望ですしお裾分けをねだりに行きますか。俺もみんなに工事のお礼を言いたいし…」
マルコたちは2人して茶化しつつ、皆の下へと向かう。
「やあ。」
「これはマルコ様っ。」
現れたマルコたちに皆が手を止め頭を下げたが、マルコはそれを制す。
「いやいややめてくれ。皆にはお礼を言いに来たんだ。」
「お礼、ですか??」
「ああ。皆の努力のおかげでこんなにも素晴らしい公園が出来た。
本当にありがとう。」
マルコは深々と頭を下げる。
「そんなっ、頭を上げてくださいマルコ様っ。」
「そうですよ。俺達だって納得して手伝ったんですから。」
「みんな…」
「それに見てくださいよ、あの子どもたちの嬉しそうな顔。マルコ様が公園を作ろうと言ってくださらなかったらピリついた空気の中、暗い顔ばかりさせてたんですよ。」
「そうですよ。だからむしろ俺達からありがとうって言わせてください。」
マルコは顔を上げた。
ここからだと芝生で駆け回る子どもたちがよく見えた。林のアスレチックエリアにはリオやタイガたちが、池の方はコウやパイソンたちが見てくれているが、きっとそちらでも子どもたちの笑顔が広がっているだろう。
楽しそうな子どもたち。それを見て嬉しそうな大人たち。
ああ…
あの日、誇らしげだった祖父の気持ちが少しだけわかった気がした。
この光景こそ、領主としてマルコが守りたいものであり、守らなくてはならないものだ。そしてそれを守り抜いたのがあの日の祖父だ。
言葉ではわかっていたものが、言葉でしかわかっていなかったものが、光景として、マルコの胸の奥にじんわりと、熱く広がっていく。
「ささっ、マルコ様。肉も焼けましたしマルコ様もどうぞどうぞ。」
「ああ、ありがとう。」
そんなマルコを皆が優しく迎え入れる。
…っと……
「そうだ。お礼にと酒やなんやを持ってきたんだ。」
マルコはあらかじめ九尾商会で買っておいた酒樽やチーズ、ベーコンやハムなんかを取ります。
「いいんですか!?」
「ああ、お礼だからな。皆で仲良く分けてくれ。」
「「ありがとうございま〜す!!」」
そうしてマルコは大人たちとこれからの都市計画から近所のちょっとした悩み事まで様々なことを話し合った。
そうこうして…
「あーっ!みんなして酒盛りしてっ!ずるいっす!!」
タイガたちが子どもたちを連れて戻ってきた。
「まだまだあるから、大丈夫だよ。」
「うっす!じゃあ俺も…」
「こらっおにいっ!ちゃんと手を洗ってから!!」
「っと…そうっすね。」
サンドウィッチに飛びつこうとしたタイガだが、リオに叱られて子どもたちを連れて手を洗いに行く。
その間、マルコら大人たちもバゲットを半分に切って軽く炙ったり、肉やベーコンを焼いたり、チーズやハムをスライスしたり、野菜なんかをちぎったりして追加のサンドウィッチの用意をする。
「うわっ!うまそうっす!!」
「みんな〜、なに挟む??」
リオたちは子どもたちの面倒を見つつ、サンドウィッチを作っていく。
「デザートにフルーツもあるだよ~!」
そう言ってシロコロがフルーツを持ってくる。
「ふるーつっ!? わぁ〜いっ!!」
「あっシィロン様っ、ダメですよっまだ手を洗っていないじゃないですかっ!!」
その言葉に少し遅れて戻ってきたシィロンが飛びつく。
が…
「シィ〜ロ〜ン!!」
ガバッ
しかしフルーツまであと少しのところでシィロンはクウガに飛びかかられて捕まってしまった。
「くうが!?なんで??」
「我はなぁ~、ずぅっっっと、お前に話したいと思っていたことがあってなぁ〜……」
クウガはシィロンにしがみついて管を巻く。
「なんで?なんで酔っぱらってんの??」
「そりゃあ、酔っぱらっておらんとこんな話小っ恥ずかしくてできんからなぁ〜……」
本来神の加護を受けている聖獣は泥酔することはないのだが… クウガはマタタビ科のキウイを食べると酔っ払う。
まったく、程々にしろと言ったのに…泥酔してやらかして後で後悔するぞ。
まぁ、シィロンもちゃんと手を洗わなかった罰だな。少し酔っ払いの相手をさせよう。
マルコは少し放っておくことにした。
「我はなぁ~、一緒にこの地にいたのがお前で本っっっっ当に良かったと思っているぞぉ〜。まぁ、あった頃から幼くて子供っぽい性格は変わっておらんが、実力はちゃんと上がっておるし、お前がいたから我も切磋琢磨して成長出来たんだ。」
「わかった!わかったから!は〜な〜せ〜っ!!」
「子供っぽい性格って言ってもなぁ〜、その物怖じしない性にピンチの時にどれだけ勇気をもらったことか…… ありがとう、本っっっっ当にありがとう。」
「いいからは〜な〜せ〜っ!!」
「そうだなぁ〜、あれは…いつの頃だったかなぁ~……」
「た〜す〜け〜て〜っ!!」
さすがに酔っ払いの長話が始まりそうになって可愛そうになったのでマルコはシィロンを助けた。
その後、反省したシィロンはちゃんと手を洗い、クウガはしばらくこの時のことをシィロンに弄られることになるのだった。
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