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間に合った!褒めて!!

 泣き疲れてしまったのだろう。マルコはミャアをベットに寝かしつける。


「…マルコさまぁ……おいて、いかないで………」


「大丈夫だよ。」


 嫌な夢でも見ているのだろうか? マルコはベットに腰掛け、ミャアの髪を優しく撫でる。


「……すぅ、すぅ…」


 安心して落ち着いたのだろう。しばらくすると、その呼吸は落ち着いて穏やかな寝息に変わった。


 …


 ぱたん。


「…ミャアちゃんは?」


「…眠ったよ。」


 マルコが静かにミャアの部屋を後にすると、心配して待っていたリオに声をかけられた。


「そう… お祭りまでに元気になってくれるといいのだけれど……」


「…そうだな。」


 きっとそれは大丈夫だ。

 ミャアは賢い子だ。落ち着けばいつものように元気に明るく振る舞うだろう。


 いや、それは大丈夫と言えないのではないか。


「…少し、話をしないか?」


「そうね。」


 マルコはリオを連れてリビングへと移動する。



「ほら。」


「ありがと。」


 テーブルにつき、マルコは淹れたお茶の片方をリオに渡した。お茶と言っても高価な茶葉を使ったものではない。野草を使ったハーブティーで気分を落ち着かせる効果がある。

 領主という立場上、不安な姿を見せたくないマルコが気分を落ち着かせたかったからだ。


「…どうしたらいいのかな?」


「…そうね。」


 少し悩んだ後、結局マルコの口から出たのは素直に不安を吐露したそんな言葉だった。


「…ねぇ、マルコはミャアちゃんにどうなってほしいの?」


「俺はただ、ミャアには子供らしく楽しく過ごしてもらいたい。そうして自分のやりたいことを見つけて、自由に生きてもらいたい。それだけだよ。」


「そう…」


 シンプルかもしれないし、とても難しい願いかもしれない。現に今ミャアのためにできていることは、将来の選択肢が増えるように勉強を教えているくらいだ。


「…マルコはどうだったの? 子供の頃、夢とかあった?」


「俺? …俺は貴族の生まれだからなぁ。領民を守り王に尽くすことは土地を与えられて税を集める者として最低限の責務だったし…」


 別にそれを嫌だと思ったこともない。それが貴族の誇りであり、そんな祖父をマルコは誇らしく想い憧れていた。


 ミャアとは違う。

 たしかに役に立とうとしてくれることは家族として領主として嬉しいことだ。

 だがミャアは役に立ちたい、ではなく役に立たなければいけない、と縛られているだけだ。


「…リオは?」


「私?…私は……ほら、隠れ里の出身でしょ?そんなに自由を感じていたわけでもないし、夢に希望を持てる環境でもなかったかな…」


「あっ……ごめん。」


「ふふっ、いいのいいの。」


 慌てて謝るマルコだが、リオは笑顔で答えた。


「あの頃窮屈だった分、今は自由だぁ〜って思えるし、村が大きくなっていくことに幸せを感じている。そして、そんなここを守りたいって夢も持てているわ。」


「リオ… ありがとう。」


「こちらこそ。素敵な街にしてくださいね、領主様。」


 少しいたずらっぽく言うリオだが、こうまっすぐ面と向かって言われると、なんともこそばゆい。


「とはいえ、ミャアはどうしたらいいのか…」


「そうね… あっ! そういえば大きな街には公園っていうのがあるんでしょ?」


「公園?」


「そう、公園! …隠れ里ではあまり自由に遊べる場所ってなかったから… 話を聞いたときは憧れたなぁ……」


 リオは懐かしそうに言った。


 それにしても…公園か……


 そういえば昔、祖父の視察に着いて領内にある公園を見に行ったことがある。それほど大きなものでもないし、王都や他の大きな街のものと比べれば貧相なものだった。

 それでも楽しそうに駆け回る子どもたちを見て微笑む祖父がなんとも誇らしげだった。


「…いいかもな、公園。」


「でしょ?」


 リオと顔を合わせて笑う。

 その後、方針が決まって安堵したのか。マルコはお茶を一口すするとほっと一息つくとなんとなく窓の外を眺めた。


 大空を舞う1羽の鳥がどこか近くへ降り立つのが見えた。


「って、あれはタビガラスじゃないか?」


「タビガラス? 珍しいわね。」


 別にタビガラスが珍しい訳では無い。タビガラスは大陸全土に分布する渡り鳥であり、人里近くで生活する。

 ただ、タビガラスは季節の変わり目で大きく移動する習性があり、今は渡りの時期ではない。


「…嫌な予感がする。」


「?」


 タビガラスは非常に頭がよく過去に優しくしてくれた人間の元を目指して移動する。しかも個人の魔力を記憶、検知することで仮に引っ越してもその個人の元を訪れる。

 そのため、よく訓練されたタビガラスは古くから手紙のやり取りに用いられていた。


 時期外れのタビガラスの訪れ、それを送らねばならない事態。


「大変ですっ!」


 案の定、コタロが家へと飛び込んでくる。


「どうした?」


「はいっ、バルドルの司祭団がこちらへ向かっていると…」


 …


 はぁ……


 奴隷港を襲撃したので覚悟はしていたがこのタイミングか…

 いや、モンスターズナイトが起こり得る新月の夜を超えたのでこのタイミングなのか……


 ともかく大きな厄介事が舞い込んできたのだった。

ブクマ、いいね、ありがとうございます。


なろうコンは一次は突破しましたが二次で落ちました。節操なくオーバーラップの後期に応募したんで頑張ります。

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