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遅くなってすみません。
モチベが下がっているのでしばらく週一投稿無理そうです。
モンスターズナイトの夜が明け、朝日に照らされた海岸線には倒したもの、打ち上げられたもの、おびただしい数のモンスターの死骸が転がっている。
海に沈んでいるものや漂っているものも含めれば数千は下らないだろう。
…はぁ……
闇の魔力を帯びたモンスターの死骸をそのままにすれば土地が穢れて汚染される。徹夜明けで処理を考えると…なんとも頭の痛いものだ。
「おお、これは大漁大漁。思わぬ臨時収入でございますね。」
「コタロか。」
ホクホク顔のコタロが、マルコの元へとやってきた。
マーダーキングクラブの殻は鎧の材料、ダーツの口吻は銛先や矢じり、その他色々、そして何より水棲モンスターの持つ水属性の魔石はポンプの燃料として重宝される。
確かに需要が一番大きいのは無属性の魔石ではあるが、ポンプは上下水道という都市機能に関わるものとして大口の需要がある。
「とはいえこの量…処理するだけで何日かけるかわからんぞ?」
「ご心配なく。防衛の援軍には間に合いませんでしたが、じきに九尾商会の者たちが参りますので。」
「ありがとう、すまんな。」
「いえいえ、お気になさらず。」
どうやら防衛の支度にいっぱいいっぱいだったマルコに変わり、後処理についてはコタロがすでに裏で手を回していてくれたようだ。
「あっ、そうだ。サハギンのエラだけ回収しておいてもらえないか?」
「サハギンのエラ、ですか??」
「前に話した水中呼吸のポーションの材料になるからな。」
「なるほど。では大量に必要ですね。」
「ああ、保存も考えて干物にしておいてほしい。」
「かしこまりました。他に九尾商会を通して何か手配しておいたほうがよいものはございますか?」
そうだな…
「ケルピーの肺胞とオオガマガエルの皮をお願いしようかな。どちらもできるだけ多く。ただ何かが多すぎても困るからサハギンのエラも合わせてなるだけ質量比1:1:1で調整してほしいな。」
「かしこまりました。」
ケルピーもオオガマガエルも水棲モンスターなのでワンチャン出てくれればいいなと思っていたが、残念ながらここではでなかった。
まぁ水棲といっても、ケルピーは川棲でオオガマガエルは湿地棲だ。仕方がない。
両方とも錬金術以外では使わない少し特殊な素材ではあるが、ケルピーの馬油もオオガマガエルの軟膏も美容品として取引されているものなので調達はなんとかなるだろう。
「マルコ様〜。」
と、そこへミャアが走ってやってきた。
「どうしたの?」
「マルコ様、水龍様が目を覚まされました。」
以前のクウガ同様に聖水を飲ませて穢れを払った水龍だったが、戦いでのダメージか意識を失ったままだったのだ。
「わかった。すぐに向かうよ。
と、いうわけだからコタロ、悪いけどあとは…」
「はい。万事おまかせください。」
こうしてマルコはミャアと家に帰る。
「はっはっはっ! 今回の件、間違いなく我の勝ちだな。」
「そっちには仲間がいたじゃないか。ふぇあじゃないよ、のーかんだよのーかん!!」
「何をいうか。お前だってモンスター共を率いていたではないか!!」
「あんなの仲間にかうんとしないでもらえるかな!!」
ぐぎぎ、ぐぬぬ…
「何をやっているんだ??」
家に帰ると何故かクウガと水龍が言い争っていた。
「あっ! ぼくに雷叩き込んだ人っ!!」
「ん? ああ戻ったか。なぁに、コヤツに聖獣としての格の違いを…なっ。」
「だ〜か〜ら〜っ! ぼくはくーがに負けたわけじゃないからっ!!」
「はっはっはっ! 負け犬の遠吠えか?みっともないぞ??」
「むぅぅ~……っは! そう!!ぼくが負けたのはそこのきみ!くーがに負けたわけじゃありませ〜ん。」
水龍はマルコを指すが…
おい、俺を巻き込むな。
「んなっ! 大波を止めたのは我だぞ!?」
「…気を失ってたから知らないもん。」
「おまっ!その反応絶対に覚えているだろっ!!」
ぷいっとそっぽを向く水龍にクウガは抗議した。
「知りませ〜ん。」
ぐぎぎ、ぐぬぬ…
…はぁ。
「とりあえず話をしていいか?」
「は〜い。」
「ちょまっ!我はまだ大事な話をだな…」
話題をそらしたいのか水龍が素直に返事をしたので、クウガを無視して話を進める。
「俺はマルコ。この地の領主をさせてもらっている。」
「しぃろん。海神の聖獣だよ。」
シィロンはマルコへ向き直り、そう名乗る。
口調は親しみやすく、力を失ってサイズも30cmほどの小さな蛇位、怪我のためにヒレもボロボロ。
だが穢れを払われた蒼白の鱗は美しい貴金属のような光沢を放ち、澄んだ水色のヒレは透明感素晴らしい宝石のよう。
力強い生命感のクウガとはまだ異なる芸術品のような神々しさがシィロンには感じられた。
しかし、海神の聖獣とは……
これから水運で利益を上げたいローグにとってなんともご利益のありそうな存在だ。
「シィロン。もしよかったら俺たちの仲間に…」
「待った!」
なってくれないか? その言葉をシィロンが遮る。
「ごめんね。その言葉はぼくから言わせて? …っとその前に確認なんだけど。マルコがぼくの眷属のみんなを受け入れてくれた、でいいのかな?」
水龍の眷属、蛇人族のことだ。
「俺だけの力じゃ無理だった。仲間たちの助けがあったからだよ。」
「…その反応。みんなをただ受け入れるだけじゃなくていっぱい苦労してくれたんだね。」
「だから俺のおかげじゃなくて、仲間の力あってのことだし…まだ終わった話じゃない。」
奴隷にされていた獣人族たちを助け出してのバルドルとの争いはむしろこれからだ。
「…うん。それでもマルコはぼくを助けてくれたし、みんなも受け入れてくれた。だからまずこれだけ言わせて? ありがとう。」
「いや、…どういたしまして。」
ペコリと頭を下げるシィロン。
改めてまっすぐに謝意を伝えられると、なんとも気恥ずかしい。
「それで、ね。ぼくも仲間に、マルコと契約を交わしたいんだよ。」
「えっ!?」
複数の聖獣と契約を交わした話なんて聞いたことないんだけど… いいの??
「…我がいれば十分だが……まぁコヤツの能力は役に立つからな。」
ちらりとクウガを見ると別に複数の聖獣との契約を気にしている素振りもない。
「それじゃあ、お願いしようかな。」
「うん。よろしくね。」
こうしてマルコは海神の聖獣シィロンと契約し、シィロンが仲間になったのだった。
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