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 釣り大会から数日後。

 気分転換がてら錬金術の実験をしているマルコの元にリオとタイガが訪れた。


「…ねぇ、蛇人族を助けに行くって話だけどいったいいつになったら出発するのよ!」

「そうっすよ!」


「んー、準備が済んでからだな。」


 詰め寄せる2人にマルコは答える。


「準備ってなに? あれから私たち野良モンスターの駆除やらされてばかりなんだけど!」

「こうしてる間にも奴隷にされてるみんなはひどい目見てるっすよ!」


「うん、ごめん。きちんと説明するね。」


 マルコは2人に向き直り座り直す。


「まず、野良モンスターの駆除を頼んだ理由は2つ。

 今回の救出作戦ではできれば全員助けたい。だからダンジョン攻略みたいに少数精鋭じゃなくて大人数で向かうつもりなんだ。1つ目の理由ってのがそのための戦力の底上げ。

 そして大人数で向かえば当然村の防衛が手薄になる。だからあらかじめ周囲の野良モンスターは狩り尽くしておきたいってのが、2つ目の理由。」


「そんな意図があったのね、ごめんなさい。」


 マルコの説明を聞き、リオは素直に頭を下げた。


 長い間アーニエルで1人で仕事をしていたせいだろうか? きちんと説明をするという当たり前の基本がおろそかになっていたようだ。

 マルコは反省する。


「ん? でもクウガ様が戦えばバルドルの連中くらい楽に皆殺しに出来るんじゃないんすか?」


「いや、クウガにはついて来てもらうけど最悪の事態にならない限り隠れていてもらって、基本救出作戦は俺たちだけでやるつもりだ。

 それに、今回の目標はあくまでも救出。だからバルドルの連中も極力殺さないでもらいたい。」


「…どういうこと?」


 マルコの答えに2人はピクリと眉をひそめた。

 復讐の機会だというのに殺すなと釘を刺したのだ、無理もないのかもしれない。


「クウガに手伝ってもらえば俺が領主になりここローグに聖獣がいると知れ渡った時に、今回の襲撃が俺たちのやったことだと即バレする。

 必要以上に殺せばバルドルから強い恨みと警戒心を買ってしまう。」


「だからって!!」


「…ごめん。」


 リオの強い憤りに、不信感に、マルコは謝ることしかできない。


「もしバルドルが本気で軍を起こしたら、俺はみんなを守りきれない。だから戦争の口実になるようなこちらが攻め込んだ証拠を見せるわけにはいかないし、戦争をしたくなるような恨みや危機感を抱かせるわけにはいかない。」


 マルコははっきり告げる。

 クウガはいるがバルドルは超大国だ。防壁もなければろくな装備もない。国に救援を求められる関係性も構築できていない。戦士たちは一矢報いれば満足かもしれないが、戦えない子供や老人だっている。


「っ~~……」


「ごめん、俺にもっと力があれば話は違ったんだけど……」


「…ふんっ、別にあんただけが悪いんじゃない。あたしたちに力がないのよ、謝らないで!!」


 怒りを飲み込み、リオは納得したようだ。


「まっバルドルの連中をぶっ飛ばすのはまたの機会にとっとけってことっすね。そういやマルコさんはなにやってるんすか?」


 場の空気を変えようとしてか、タイガがことさら軽く訪ねてきた。


「俺か? 助けて連れてきて、でも食料足りませんなんてわけにはいかないだろ? だから畑の拡張の手伝いをしてるよ。」


 まぁ今日は働きすぎだとヒューマに追い返されたのだが…

 クウガから魔力を借りているし、大丈夫だと思うんだが、ミャアとヒューマは許してくれなかった。


「今っすよ。錬金術やってるみたいっすけど、なにやってるんすか?」


「ああ、前に採った霜降り草の実験だな。」


「…それって働いてない?」


「いや、趣味だな。」


 リオが鋭くつっこむ。確かに魔力は消費するがこのくらいは勘弁してもらいたい。


「へぇ~、具体的にどんなことやってるんすか?」


「んー、そうだな。…見てもらった方が早いな。

 ミャア、さっきの持ってきて。」


 はーい、とミャアが何本かの耐寒ポーションと紙切れと蝋燭を持ってくる。


「まずこれが前と同じようにとろ火で抽出した物。でこれが沸騰させて抽出した物。最後にこれが熱を加えず水で抽出した物だ。」


 マルコはそれぞれ紙切れに吸わせて蝋燭の火につける。

 水で抽出しているので当然ながら沸騰させた物は火がつかずなにも起きない。だがとろ火で抽出した物は水で濡れているにもかかわらずブスブスと小さく火が灯り、熱を加えなかった物に至っては一瞬ボッと大きく火柱が立ったかと思うと燃え尽きてしまった。


「まあこんな感じだ。やっぱり火耐性を下げる効果は熱を加えることで損なわれるということがわかる。」


「ほへぇ、なんかすごいっす。」


 マルコとしてはすごく楽しいのだが、理解の追い付いていないタイガのこころには今一つ刺さっていない様子だ。


「で、次はこの加熱せずに抽出したポーションを凍らせてみようと思う。」


「それまたなんでっすか?」


 タイガはヤベェ捕まった、といった雑な相づちだが熱の入ったマルコは気付かず続ける。


「氷耐性を上げる成分は凍らないが火耐性を下げる成分は凍るはずだ。つまりうまくいけば2つの成分を分離させることが出来る。」


「えっと、それはなんの目的でっすか?」

「現状の耐寒ポーションだと確かに熱吸収の効率は上げるけど明確な弱点も1つ増やしてしまっているわけで……」


「あの、沸騰させたらいいんじゃないすか?」

「それじゃつまらんだろ!!」


「…楽しそうなとこ悪いけどあたしはお暇させてもらうわ。…ミャア、あいつ無理しそうならホント止めてね?」


「はい、お任せください!!」


 そんな中、リオはタイガを生け贄にそそくさと退散するのだった。

ブクマ、いいね、ありがとうございます

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