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蛇人族の特徴で尻尾があることを追加しました。というか書き忘れてました。ごめんなさい。
「みなさまお集まりっすねっ!! それじゃあダンジョン攻略記念釣り大会を始めるっすよ~!!!」
「「うおーーっ!!」」
「「わーーっ!!」」
なぜかノリノリで司会をするタイガに参加者たちは大歓声をあげる。
「ルールは簡単っす! 制限時間内に一番大きい魚を釣った人の優勝っす。大きさは重さじゃなくて長さで決めるっすけど、毒魚やモンスターなど食えない魚は除外っすからね!食える魚釣ってくださいっすよ!!」
「「当たり前だろ~。」」
ガヤガヤ
「モンスター対策でクウガ様が見回りしてくれるっすから、クウガ様の目の届かないところに行くのは禁止っす! あと夕方になったら終了の合図を俺が叫ぶっすから声の届くところにいてくださいっすよ!!」
適当だなと思うがそういえば仕方のない話だった。
普通、町などでは教会の鐘が時報の役割を担っている。しかし現状、ここローグの地には教会はない。
かといって…な……
教会を建てれば済む話でもない。そもそも獣人族は宗教が違う。じゃあクウガの神殿でも造れば良いかと言えば、それはそれで本国の宗教家たちに要らぬ誤解を招く恐れがある。
物見櫓に鐘楼を建てて、それを時報に利用するか? …いや、生活システムに軍事拠点を利用すれば、余所から見たとき軍事色が強くなりすぎる。
いずれはバルドルと戦争することにもなるだろうが、それまでは先にこちらが刺激したなどという謂れのない非難は避けたい。
「なんとマルコさんから優勝者には賞品もあるっすよ~!」
「「うおーーっ!!」」
マルコがそんなことを考えている横でタイガの司会は進行していく。
「優勝賞品はなんとこの、この~?…なんか高そうなリールっす!!!」
うおい!!
あまりの雑な説明に思わず考えを止めて内心でツッコミを入れてしまう。
高そうじゃなくて実際それなりに高かった。
なぜなら内部機構にミスリルを使っており、錆びず壊れずなのに軽い逸品なのだ。
正直、現状の防犯面を考えるとあまり高価すぎる賞品はどうかと思ったが… 子供のように目を輝かせるヒューマに負けた。
「それじゃあ釣り大会、はじめーっす!!」
「「うおーーっ!!!」」
走行している間にタイガが開始の合図を告げ、参加者たちは一斉に駆け出すのだった。
さて…
今回の釣り大会にマルコは参加していない。見回りがてら住民たちと交流をはかるつもりだ。
「マルコさんどもーっす!」
「ん? タイガじゃないか、そういえばタイガは参加しないのか?」
「魚は好きっすけど釣りは苦手っす。どうも
じっと待ってるのとか繊細なアタリを見極めるのが性にあってないみたいっす。」
ああ、たしかにタイガはそんな感じだ。
「それより聞いたっすよ~。ひどいじゃないっすか、俺も誘ってくださいよ~。」
「なんの話だ?」
「コタロさんっすよ。准爵?に誘って仲間にしたそうじゃないっすか。一緒にダンジョン攻略した仲じゃないっすか、ショックだったんすよ~。」
ああ、その話か。
「いや、いずれはタイガたちも誘うつもりだったぞ? 騎士か衛兵としてだけど。ただ今は必要な時じゃなくてな。」
「騎士っすか!? 俺、騎士になれるんすか?? なんか凄そうっす!!」
「まあもっと人口が増えた時の話だけどな。とりあえず考えておいてくれ。」
現状ローグの地は顔見知りばかりの小さな村でそこまでの防犯力は必要ないし、それに割く人手のリソースもなければ彼らを養う経済力もない。
貴族の中には自分が騎士階級を授けるという名誉が報酬と考える者もいるが、あいにくマルコはそんなブラックな人間ではない。
「はいはい、俺騎士がいいっす!!」
「騎士がいいって…基本俺の雑用係だぞ?」
「それでも騎士がいいっす!!」
「はいはい、じゃあまたな。」
「絶対っすよ~!」
ブンブン手を振るタイガに見送られ、マルコは次に向かった。
少し歩くと猫人族の女性衆が集まって井戸端会議をしていた。今晩のご馳走の料理をお願いしているがさすがに調理を始めるには早すぎるということだろう。
「こんにちは。」
「あら、マルコくんこんにちは。」
「ダメじゃないマルコくんだなんて、ちゃんとマルコ様って呼ばないと。」
「あらやだ。ごめんなさいね、マルコ様。」
「いえいえ、様付けで呼ばれないのはまだまだ自分が未熟ということです。それは自分がちゃんと領主としての勤めを果たして尊敬できると感じられてからでいいですよ。」
あっという間にマルコはおばちゃんたちに捕まってしまった。
「そういえば、家の掃除ありがとうございます。」
一応ヒューマ経由でお礼は伝えてもらっていたが、せっかく直接会えたのでお礼を伝える。
「あらやだ、そんなこと気にしなくていいわよ。」
「そうそう、私たちもお野菜をもらったお礼にちょこっとしただけだから。」
おばちゃんたちは笑って答えた。
「おーい、釣ってきたぞ!測ってくれ!!」
その時、さっそく大きな魚を釣り上げた参加者が駆け寄ってきた。
「はいはい、じゃあちょっと待ってね。…ミケジさん、48cm。」
「かーっ惜しいっ!もっかい釣ってくる!!」
「はいはい、頑張ってね~。」
そして参加者はまた海へと駆けていった。
「さて。」
おばちゃんは残された魚を手早く鱗を剥がしてエラを取り、内臓を抜いて下処理した。
「どうしましょうかねぇ?」
「どうしたんですか?」
女性衆にはアイスクリスタルを入れた大きな木箱を預けてあり、鮮度よく保管することは問題ないはずだ。
「あのね、この魚は生で食べるのが一番美味しいんだけどねぇ?」
「でもそれだと寄生虫が怖いものねぇ?」
「「ねぇ。」」
そういえば猫人族には生魚を食べる文化があったなぁ。マルコたち人間種では寄生虫が怖くて生食する者はほとんどいない。
「そうだ。マルコくんは魔法が使えるんでしょ?氷魔法は使えるかしら?」
「ええ、まぁ。」
「よかった~。ちょっとこの魚を凍らせてくれないかしら?」
「魚を?」
「そうよ。魚を凍らせることで寄生虫を殺すことができるのよ。」
「へぇ、わかりました。」
生活の知恵と言うやつか?
マルコは氷魔法を使って魚を凍らせる。
「おーい!釣れたぞ!!」
「あらやだ。この子も生が美味しい子じゃない。マルコ様、この子もお願いね。」
「お願いね、マルコ様。」
「あっはい。」
こうしてマルコはしばらく魚を凍らせるのだった。
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