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 ザシュッ


「ギグアァァァァァァア!!」


 断末魔の叫びを上げてゴブリンが倒れる。


「…ふぅ。」


 周囲に他にモンスターが居ないことを確かめるとマルコは剣を納めた。


 ローグの地の境となる峠を越えてからもはや何回目かもわからないエンカウント。


「一応集めとくか。」


 マルコはゴブリンから魔石と呼ばれる魔力の結晶を抜き取る。

 魔石は魔力で動く様々な道具の燃料として重宝される。しかしながらすでに集まった数は10や20どころではなく、このペースで集まればすぐにマルコ1人では一生使いきれなくなりそうだ。


「これなら冒険者を奨励してローグの地で活動させるのも悪くなかったかもな。」


 普通、冒険者はダンジョンと呼ばれる魔力が溜まってできた空間の歪んだ場所で活動するものだ。

 というものモンスターはダンジョンでしか発生せず、ダンジョンの外に溢れた、いわゆる野良モンスターは繁殖しない。そのため普通は圧倒的に個体数の差と効率の差があるのだが、ここローグの地ではちょっとした産業としてなら十分成立していただろう。


「とはいえ、アランがどんな反応をしただろうか…想像するまでもないな。」


 長兄のアランは騎士として誇りを持ち、冒険者を馬鹿にしていた。かといって騎士たちにモンスター狩りで稼がせようとしても、「誇りある騎士に汚らわしいモンスターを狩らせ、それどころか小銭稼ぎをしろだとぉ!!!」とか何とか言ってきたことだろう。

 アランにとってセーフとなるのは名誉となるダンジョン攻略、直接感謝と称賛を受け取れる集落を襲った野良モンスターの討伐。

 アウトは騎士の必要性を問われる冒険者の使用、人目につかないところでの騎士たちによる野良モンスターの討伐だろう。


 本当に面倒くさかったな。


 思えば次兄のロレンソも面倒くさかった。

 ロレンソは魔法の研究をしているのだが間違いなく彼は今、大量にあるゴブリンなどの雑魚モンスターの魔石には興味を示さなかったことだろう。

 マルコとしては安価で一般によく出回っているこういった魔石の使用用途を増やす研究をしてほしかった。なぜなら領民の生活向上にも繋がるし、特許料など収入の増加にも繋がるからだ。

 ところがロレンソは上流層の受けの良いレア素材の解析ばかりを好んだ。しかも研究を成功しても「魔法はそれをちゃんと理解できる者のみで独占すべき」として、湯水の様に金を使ったくせにそれを特許などで還元しようとはしなかった。


「はぁぁぁ… 自由だぁー!!」


 思い出せば腹立たしいが、今はそんな煩わしさからは解放された。

 確かに目の前には困難しかないが、領民の生活、さらには命といった重責はない。


「…っと、そろそろ日も暮れそうだな。」


 果たしてモンスターだらけのこの土地で夜を越えられるのか?


「ん? あれは聖光木じゃないか。」


 魔除けのまじないなんかに使われる木で、薪にするとモンスター除けの効果があるとか何とか。


「気休めでもないよりましか。」


 マルコは枝を1本もらうとそこで野営をすることにした。



 パチパチと焚き火から枝の爆ぜる音がする。


「暇だな。」


 簡素なスープが煮えるまで周囲を警戒しているのだが… 聖光木の効果か単なる偶然が、パタリとモンスターの襲撃が止んだのだ。


「そうだ!」


 確かお祖父様からもらった本の中に植物図鑑があったはずだ。

 ごそごそとリュックをあさる。


「…果樹の苗や大釜は… 無駄になりそうかな?」


 少しはついてきてくれる領民もいるかもと、外貨稼ぎになりそうな果樹の苗や染色用の大釜(大量錬金にも使えそう)を買ったのだが…


「あったあった。」


 ともあれ本を見つけたので暇潰しに読んでみる。


 聖光木

 あるいは聖香木とも呼ばれる。薪に使うことで光(香り)がモンスターを遠ざけるとされていた。実際は木がモンスターの嫌う聖属性の魔力を貯え、傷つけられることで放出するため、モンスター除けとなる。

 また、その聖属性の魔力を抽出、水溶することで擬似的な聖水を作り出すことができる。


「…へぇ、ちゃんと効果あるんだ。」


 これならぐっすり眠れそうだ。


「ん? あれは夜光草じゃないか。」


 マルコは少し離れたところに淡く光る花を見つけた。

 面白いそうなのでマルコはこちらも図鑑で見てみることにした。


 夜光草

 強い隠密効果の成分を持つため通常では見つけることが出来ない草。

 唯一花だけは発光成分を持ち、魔力に反応して夜間だけ光り、蛾等を誘き寄せて受粉の手伝いをさせる。


「へぇ、面白そうだ。」


 魔石は大量にあるし、うまく組み合わせれば照明の代わりになるかもしれない。


「何株かもらっていこう。」


 ガサッ


 突然背後から物音がした。


「くっ!」


 警戒はしていたつもりだが… 少し浮かれすぎていたのかもしれない。


 マルコはシャキンと剣を抜くのだった。

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