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 さらに数日、洞窟の迷宮ダンションを進んだ一行はようやく出口へとたどり着いた。


「やぁ~っと出口っすか。暗くはないけどないっすけどじめじめしてるし、景色も代わり映えしないから正直飽き飽きしてたっすよ。」


 タイガがぐぐーっと伸びをした。

 マルコとリオが2人でアーティファクトを手に入れてしまったことに少し不貞腐れていたので、これで気分もよくなってくれるといいが…


「さて、それではここからは我がいくぞ。」


「ああ、頼むぞ。」


 張り切るクウガにマルコは頷く。

 ここまで猫人族の戦士たちに戦いを任せてクウガに戦わせなかったのは、彼らのレベル上げの目的もあるが、クウガの温存の意味合いが強い。そのためマルコもデーモン戦でクウガの魔力を使わなかった。


「おっ! クウガ様も一緒に戦ってくれるっすか? くーっ腕がなるっす!!」


「いや、ここからはクウガに任せて皆もお休みだよ。」


「えー、なんでっすか?」


 タイガは不満げな声をあげ、その後ろの戦士たちも同じく不満げな面持ちだ。


「ここから先はダンジョンの深部、上位のモンスターが出てくるからね。」


「でも、俺たちも連携も出来るようになってきたっすし、レベルもかなり上がったっすよ??」


「うん。皆の実力に不安がある訳じゃないよ。ただここからの相手には装備の方がついていかないんだ。」


「…あー……」


 デーモン相手にリオの剣が両断されたのは聞き及んでいたことなので皆納得する。


「ごめんね、俺が皆にちゃんとした装備を用意できたらよかったんだけど……」


「いやいや、マルコさんのせいじゃないっすよ。俺こそわがまま言ってすんませんっす。」


 タイガが頭を下げたことでこの場は丸く収まった。


「それではいくぞ?」


 クウガを先頭にマルコたちは洞窟を抜けて外へと出た。


 吹き荒ぶ猛吹雪、視界はホワイトアウトして数m先の仲間の背中がかろうじてぼんやりと見える程度。


 雪山の山頂近くと聞いてはいたが…ひどいなこれは……


「みんな!落ち着いて!! いったん戻ろう!」


「…っ!? な…すか??」


 マルコの呼び掛けにかすれきったタイガの返事がわずかばかり聞こえた。

 ゴォーーーッと唸り声をあげる暴風に阻まれて、声もろくに通らない。


 ヤバい、ヤバい!!


 既に誰か遭難していてもおかしくないし、この視界なら滑落だってありうる。


「この光嵐の聖獣クウガをなめるなよ。」


 グォーッと雄叫び1つ。クウガがそうしただけであれほど荒れきっていた吹雪はピタリと止んだ。


「ありがとう、助かった。」


「ふっ、このくらい感謝されるほどのことでもない。」


 口ではそう言うがクウガも尻尾を振って得意気な様子だ。


「みんな無事か!?」


「「おおーっ。」」


 知らず知らず散り散りになってしまった者たちもいたが、吹雪が晴れたおかげでなんとか無事だった。


 よかった……


「くちゅんっ。」


 ミャアが小さく生んでくしゃみをした。


「大丈夫? 寒くない?」


「あっマルコ様。ごめんなさい、大丈夫です。」


 そうは言うが、ミャアは小さな身体をさらに小さく抱き抱えてぶるりと震える。


「ちょっと待ってね。すぐに毛布を出すから。」


「あ、ありがとうございます。」


 ミャアにマジックバックから毛布を出してやると、猫人族の戦士たちも集まってきたので皆の分も出してやる。


 しかし、予想していたより寒いな…


「ん?」


 こんな深く積もった雪の上にちらほら植物が生えているのが見えた。


「これは…霜降り草じゃないか!」


「霜降り草?」


 白いフキノトウのような植物を手に取るマルコにミャアが聞く。


「ああ、氷耐性を上げる効果と炎耐性を下げる効果があるんだ。これがあれば耐寒ポーションが作れるよ。」


「作るんですね? お手伝いしますっ!」


 2人は霜降り草を摘み、鍋を出し、マルコは錬金術を始めた。

 するといつぞやのタイガのようにリオが後ろから眺めている。


「どうかした?」


「いや、氷耐性が上がれば寒さに強くなるのはわかるんだけど、炎耐性を下げるっていうのはどういうことかなぁって思って?」


「あっ、ミャアもそこは不思議に思いました。」


 リオの疑問にミャアも同意した。


「うん。炎耐性を下げるのは、例えば吹雪の間のちょっとした日差しでも暖かさを取り込めるようにする霜降り草の進化だね。俺らの場合はクウガが晴らせてくれたけど、食事で温かいスープを飲んだ後とかかなり長時間ぽかぽかしてられるはずだよ。」


「なるほど…」


 そんなことを話しつつ、マルコは火加減を気にする。炎耐性を下げるということは熱に弱いと言うことだ。あまりグツグツと沸騰させてはダメになってしまうかもしれない。


 そのためマルコは錬金術スキルを使いつつ、ゆっくりコトコト煮出す。


 とはいえ、どのくらい熱に弱いかはよくわからない。沸騰程度なら大丈夫なのか?そもそも火にかけ煮出すの自体ダメなのか?すり潰して水に溶かした方がいいのか?


 落ち着いたらいろいろ実験してみたいな。


 マルコはそんなことを考える。


「出来た。」


 時間は少しかかったが無事耐寒ポーションを完成させる。

 初めて作ったポーションということでマルコは試しに自分から飲んでみる。


 味は、お茶? いや、ハーブティーのような感じだ。じっくり煮出したせいか少し苦味とか渋味のようなえぐ味があるが、低温抽出のおかげかそこまで気になるほどではない。


「おっ?」


 試しの小さな一口であったが少し寒さは和らぐ。暖かさの方だがぬるかったせいかそこまで恩恵は感じない。


 もう一口。


 さらに寒さを感じなくなる。そして先程はぬるかったポーションも少し温かく感じる。


 さらに一口。


 ほとんど寒さを感じない。そしてポーションはほどよい温かさのように感じ、流し込んだ胃から熱が広がり全身がぽかぽかしてくる。


「よしっ成功だ!」


 出来た耐寒ポーションを皆に配る。


「ゆっくり飲んでね。」


「すげぇ!寒くねぇ!!」


「ほっ…温けぇ……」


 マルコが作った耐寒ポーションは大絶賛だった。

ブクマ、いいね、ありがとうございます

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