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「…行き止まりね。」


「ちょうどいい。今日はここで夜営しようか?」


 行き止まりはちょうどぽっかり拓けており夜営するのにぴったりだ。

 マルコは魔石で火を起こし、夜営の準備を始めた。


「マルコさん、ちょっといいか?」


 猫人族の戦士の1人が話しかけていた。


「さっきの戦闘、あいつがそこにいてオークがそこにいた。で、オレはどこに動くのが正解だった?」


「ちょっと待って。」


 マルコは適当な石やらを地面に置いてその状況を再現する。


「さっきは彼がこう動こうとしていた、でオークはこう。だからここに道が出来る。」


 石を動かし、枝で線を引き、マルコは説明する。


「なるほど。」


「あっじゃあオレも聞きたいんだけど…」


 続々と戦士たちが集まってきた。


「…だからその時はこうでこう。そうなるとここに穴が出来るからそこを塞ぐのが正解かな?」


「「なるほど~。」」


 輪になり戦士たちはマルコの説明を熱心に聞いている。


「しかし、連携とは難しいものだな。」


「猫人族は集団戦はしないのか?」


「ああ、狩りは1人で出来るし、里は隠されていてバルドルに見つかるまでは襲われることもなかったからな。」


「なるほど…」


 人間種の場合ゴブリン1匹相手でも一般人なら集団で挑む必要があるが、猫人族なら1人で済む。

 なまじ強かったせいで集団戦の経験も心得もないのか。


「基本は味方の邪魔をしないことかな。きちんと距離を取って邪魔にならない立ち位置を意識する。あとは積極的に声をかけあって意思の疎通をはかる。そんなとこかな?」


「声をかけあうって… いくら人語を理解しないモンスター相手でもそんなことしたらバレるんじゃないのか?」


「まぁバレるけど、変に同士討ちしたり、立ち位置ミスって相手の攻撃で一網打尽にされるよりかはましだからね。慣れるまでは声出しした方が断然いいよ。」


 マルコの言葉に戦士たちは納得したように頷いた。


「みなさーん、ご飯できましたよー!」


 声に振り返るとおたまを持ったミャアが手を振っていた。


「それじゃあ皆、ご飯にしようか?」


「「はいっ!」」


 マルコは猫人族たちと仲良く夕食をとるのだった。



 夕食後。


「いやー、腹一杯っす!」


 漬物野菜と干し肉と麦の粥を食べ終えた一向。タイガは膨らんだ腹をポンポン叩く。


「ちょっとおにい! 行儀悪いわよ!」


「なんっすかリオ。たくさん食べたらポンポンしたくならないっすか?」


「ならないわよ!!」


 いつもと違いタイガがリオに叱られていた。

 リオの方が真面目だし、マルコに見えていなかっただけで実はこちらが自然な姿なのかもしれない。


「はいはい。それじゃあこれも飲もうか。」


 マルコはそう言って錬金術で作った聖水を差し出す。


「うへぇ…今日もっすか……」


 タイガはぶう垂れる。

 一般的な聖職者が祈りを込めた聖水は無味無臭の水だが、聖光木を原料に作ったこの聖水はおが屑や葉っぱ臭くて苦い。はっきり言って美味しくはない。


「そうは言うが長期間ダンジョンに入るんだ。穢れ対策に闇や邪属性の魔力を中和する必要があるんだよ。一口でいいから大人しく飲む!」


「わかってるっすよ…でもデザートはやっぱ甘いもんが…スンスン。なんか甘い匂いするっす。」


「甘い匂い?」


 あいにくそんな食材はそもそも持ってきていない。


「スンスン、スンスン。やっぱするっすよ。」


 そう言ってタイガは通路の方へふらふら歩いていく。


 甘い匂い、甘い匂い… っ!!


「タイガ!ストップ!!」


「ほへ? …ふにゃぁ……」


 しかしそのままドサッとタイガは地面に突っ伏した。


「ちょっ!おにい!!」


「エアロ・ブラスト!」


 マルコは魔法を放ち、通路の空気を押し流す。


 コロコロ。


 スライム核がいくつも地面に転がった。


「マルコ様、これは…?」


「…ガススライム。強力な睡眠毒の身体で、さらに身体を気化させる能力を持っている。甘い匂いで獲物を誘い、気化した身体で獲物を眠らせ、粘体の身体に戻って溶かして食べる。スカベンジャーがほとんどのスライムには珍しい狩りをするスライムだ。」


 マルコはガススライムのスライム核を拾う。

 これは溶液を気化させる効果があり、錬金素材として使うことが出来る。


「おにいは!おにいは無事なの!?」


「毒といっても睡眠毒だから、ぐっすり寝ているだけだよ。」


「よかった……」


 タイガを抱き抱えるリオはほっと胸を撫で下ろした。


 一応ガススライムは気化してしまうと自力では移動出来ない。そのため風の吹かない洞窟に生息しているのだが… このダンジョンにもいたとは……


 しかも厄介なことにスライムなのでミャアの探知スキルでさえ引っ掛からない。


「皆、ここからはさらに注意しようか。」


 マルコの言葉に皆、こくりと頷くのだった。

ブクマ、いいね、ありがとうございます。

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