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「よし、それではダンジョンへ案内するぞ。」


 収穫した野菜の漬け込みも終わり、畑の修復も終えたある日、クウガは言った。


「身体の方はもういいのか?」


 マルコは訪ねる。

 クウガはだいぶ大きくなり、普通のヒョウの一回りも二回りも大きなサイズになっているが、最初に見た馬車ほどのサイズと比べるとかなり小さい。


「問題ない。前のは闇の魔力が身体に合わず風船のように無駄に膨れていただけだ。密度良く魔力が貯まっているので総量的にも今のが上だし、動きやすさ的にもこれがベストだ。」


「なるほど。」


 クウガがそういうのならそうなのだろう。

 それよりも……


 マルコはミャアを見る。


「俺とクウガはダンジョンに行くけど、ミャアはどうしたい?」


「え、……?」


「もしついてきてくれるのなら索敵とかすごく助かるし、もし残ってくれるのなら家の安全を任せられるからすごい有難い。

 どちらを選んだとしても俺たちにとって大切なことだし、ミャアが選んで。」


「えっと…」


 ミャアは頭を抱えてチラチラとこちらを見る。


「ミャアも、行きたいです。」


「よし、じゃあ準備しないとね。」


「はいっ!」


 荷物をまとめに行ったのだろう。ミャアはパタパタと走っていった。


「よかったのか?」


「ん?」


 ミャアの背中が部屋の扉で見えなくなると、クウガが聞いてきた。


「わかっていると思うが、ダンジョンは危険だぞ。」


「ああ…」


 過保護なマルコを思ってのことだろう。

 本音をいえば、ミャアには安全な家で留守番をしていて欲しい。


「獅子の子が小さいからと言って猫と見誤るな、だろ?」


「ははっ、その通りだ。」


 前に言われた言葉を返すとクウガは痛快に笑った。


「まあ、俺たちがちゃんとカバーすればいいだけの話だ。それに子供がやりたいって言ったんだ、俺たち大人が頑張らないでどうする?」


「ふふ、そうだな。」


「マルコ様っ! 準備できましたっ!!」


 ガチャっと扉を開けてミャアが戻ってきた。


「それじゃあ行こうか。」


「はいっ!」


 こうしてマルコたちはクウガの案内でダンジョンへと向かうのだった。




 家を出て、1時間と少し過ぎたくらいだろうか。


「ここだ。」


「あの… 何もありませんが……?」


 ミャアが不思議そうに声をこぼす。

 クウガが案内してくれた場所は森の中の少し開けた何もない場所だ。踏み荒らされた形跡はあるがそれはこの前のモンスターズナイトや野良モンスターの影響で、ここまで来る前にどこでも見られた。


 …いや……


「菌輪、か。」


 踏み荒らされたせいでわかりづらいが、なんとなくキノコが円形に群生して輪を作っていることにマルコは気付く。


「そうだ。この輪の中へ入ればダンジョンへと転移出来る。」


 菌輪は『妖精の輪』とも呼ばれ、森で迷った木こりが妖精の国に行くおとぎ話があったりするのだが…


 まさかダンジョンに繋がっているとはな。


「準備はいいか?」


「いや、ちょっと待ってくれ。」


 クウガに促されたマルコだったが一度遮り、そしてミャアを向く。


「一応、これ預けとくよ。」


 マルコはミャアにナイフを渡す。

 リーチはないが軽い分、ミャアなら剣より扱い安いだろう。


「でも戦闘に参加しろってことじゃないからね。あくまで護身用だと考えてね。」


「えっ……はい…」


 ミャアは耳をパタンと畳み、しゅんとする。


「ハッハッハッ! しょげるなしょげるな。ちゃんと訓練していないんだ、仕方がないだろう。なんなら我が見てやるぞ?」


「本当ですか!?」


「ああ、まぁ心配性な保護者がなんというか、だが…」


「マルコ様……」


 クウガの言葉にミャアが不安げにマルコを見る。


 …はぁ……


「無茶なことはさせるなよ?」


「わかっておる。獅子でも子供は大切に育てる、だろ?」


「ありがとうございますマルコ様っ! クウガ様、よろしくお願いしますっ!」


 2人の言葉にミャアは嬉しそうにペコペコお辞儀した。


 っと…


「とりあえず訓練の話は帰ってからで、ミャアにはダンジョン内で魔石の回収をお願いしたいんだ。」


「魔石の回収?」

「なぜだ?」


 マルコの言葉に2人は疑問を浮かべる。


「今回は下見のつもりだけど、できればついでにモンスターの間引きもしておきたいからね。」


 ダンジョンのモンスターは倒しても魔石を回収しないとすぐに復活して個体数が減少しないと言われている。

 というものその昔、あるダンジョンでは他のダンジョンと同じようにモンスターを倒していたがモンスターの個体数が一向に減少しないということが起こっていた。

 何が違うのかギルド職員が調べたところ、そのダンジョンでは魔石よりも高額で取引される素材があったため、冒険者たちが魔石を回収していないことが判明した。

 なので魔石の回収を義務付けたところ、モンスターの個体数はどんどん減少して最終的には他のダンジョンと変わらなくなった。


「…というわけで、今では冒険者ギルドは可能な限り魔石の回収を義務付けているんだ。」


「なるほど、な…」


 マルコの説明をクウガは興味深く聞いていた。

 これは魔石を資源として利用する人間だからわかったことで、何より聖獣とはいえヒョウであり魔石の回収が難しいクウガが知らなかったのは無理もない。


「だからミャア、魔石の回収をよろしくね。」


「はいっ!任せてくださいっ!!」


 やる気いっぱいなのはいいけど… だからこそ不安だなぁ。


「無理はしなくていいからね。無茶するのが一番ダメだからね。」


「は、はいっ。」


「おいっ、過保護もそのくらいにしておけ。

 …行くぞ?」



 こうして3人は菌輪をくぐり、ダンジョンへと入っていくのだった。

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