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 その夜。


「…ん?」


 夕食後、少し本でも読もうかとマルコだったが照明が少し暗いことが気になった。


 発光成分が薄くなったのかな?


 そう思いつつマルコたちの照明器具である夜光草で作った瓶を手に取る。


「…あちゃ~……」


 液体の入った瓶の内側には藻がはっており、おかげで光が少し遮られていた。


 なるほど、こういった問題もあるのか…


 とはいえ、これまでにもマルコは消灯点灯の切り替えが液体への魔石の出し入れと言う不便さから、発光成分を水から分離するのに挑戦はしていた。

 しかし、単に濾過しただけなら濾紙を通り抜けてしまって何も残らず、火にかけて乾燥させようとすれば焦げ、自然乾燥では時間がかかりすぎて水が腐るという大失敗を重ねていた。


「あっ、そうだ。」


 マルコは昼間にがりを手に入れたことを思い出す。


 もちろんうまく行く保証なんてない。これはあくまで実験だ。

 だが幸いなことに夜光草の栽培は順調な上、発光成分は想像していたほど消費されないことから材料は余りがちである。


 よしっ!


 実験や挑戦がわりと好きなマルコは必要なものを用意しに物置へと移動する。


「…マルコ様?」


 その物音に気付いたのか、ミャアがやってくる。


「あっミャア、また照明の改良に挑戦してみようと思うんだけど、手伝ってくれるかな?」


「はいっ任せてください!」


 頼られて嬉しいのか、ミャアは元気よく返事した。


 その様子に少し申し訳ないのだが、別にマルコは手伝いが本当に必要なわけではない。

 リスクが小さい、あるいはリスクに対する備えがあるという前置きはあるが、マルコはミャアに挑戦することの楽しさや大切さを知ってもらいたくて誘っていた。


 とはいえ、うまく行かないと楽しくはないもんなぁ…


 あいにく詐欺師紛いの扱いを受けている錬金術スキルにはまともな情報は少ない。祖父からもらった本もあくまで基礎的なものであった。

 マルコとしては新雪の上に道を作っているようなたのしさがある。しかしそれは後ろを着いてきているミャアに伝わっているかは甚だ疑問だ。


 いい加減、挑戦に成功する楽しさを教えてあげたいなぁ。


「できましたっ!」


 そうこうしている間にミャアは手慣れた早さで夜光草の花びらを洗い終え、鍋を準備していた。

 マルコもまた手早く照明液を作る。

 クウガの加護はその者が持つ特技を伸ばしているが、契約はクウガとの繋がりを持つものだ。そのためクウガの持つ風や光魔法の適正、素早さや斬撃強化などのスキルをマルコも得ていた。

 とはいえ、その素早さは主に戦闘面で機能するスキル。マルコが最初と比べて圧倒的に早く照明液を作れた理由はそんな格好の良い理由ではなく、単に失敗を重ねただけだったりする。


「それでマルコ様? 今日はどうしますか??」


「うん、これを使ってみようと思うんだ。」


 マルコはミャアににがりを見せる。


「にがり、ですか? 確か水に混ざっている不純物を沈殿させることが出来る、でしたっけ??」


「うん。発光成分を沈殿させられれば水を取り除けるかなと思ってね。」


 マルコはそう話しつつ、照明液ににがりを混ぜる。


 さて、どうなるか…


 錬金術スキルを使いつつ少し混ぜると、乳白色の照明液にモヤモヤと濃淡が現れる。さらににがりを加えて混ぜると乳白色の部分がモコモコと固まり、底に沈む。


「…濾してみようか?」


「はいっ。」


 ミャアの用意してくれた濾紙で濾す。澄んだ水だけが分離され、乳白色のモコモコはしっかり濾紙の上に残っている。


 …さて、


 マルコは濾し出た澄んだ水の方に魔石を浸す。

 光ったりなどはせず、特になんの変化もない。


「よしっ!」


「あの、マルコ様? 何も起きていませんが??」


 その様子を見ていたミャアが不思議そうに聞いてきた。


「何も起きないことを確認したかったんだよ。」


「?」


「乳白色の部分を分離させられたわけだけど、まだそこに発光成分が含まれているとは決まったわけじゃなかったからね。」


 今度は濾紙に残った乳白色のモコモコに魔石を刺す。

 するとモコモコが明るく光った。


「うん、よしっ!」


「あの、こちらを調べればよかったのではないですか? どうして水の方も調べられたのですか??」


「モコモコの方に結構水分が残っているからね。こっちを調べただけだとモコモコが光ったのか残った水分が光ったのかわからなさそうだから、両方調べたんだ。」


「なるほど。」


 マルコの説明にミャアも納得した様子だ。


 マルコは濾紙を搾り、モコモコからさらに水分を抜く。


「…う~ん……」


「どうしました?」


「いや、思ったよりボソボソした感じで、このまま乾燥させてもうまく固まらないなぁと…」


「あっ! それでは石膏を混ぜて固めてみては…」


「石膏、か…」


「ダメ、ですか?」


 マルコはあまり詳しくはないが、石膏は焼くと固まる。だが、煮詰めて焦がした経験から焼くことは出来ないだろう。


「ううん、ダメじゃないよ。とにかくやってみよう。」


「はいっ!」


 結果、単に乾燥させただけではあるが、石膏により照明器具をうまく固形化させることに成功したのだった。

ブクマ、評価、いいね、ありがとうございます

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― 新着の感想 ―
[一言] まだまだ始まったばかりだし、二人と一匹?なので少しずつって感じでしょうか。
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