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「っ! 来ますっ!!」


「我に任せろっ!」


「ギョギョギョェェェエエエェェッ!!」


 突然現れたサハギンであったが、ミャアに奇襲を看破されクウガに一瞬で切り裂かれた。


「…流石だな……」


 その様子を眺めていたマルコは大釜をかき混ぜつつ独り言つ。

 マルコは今、海岸で塩の作成をしている。ミャアとクウガはその護衛だ。

 正直、ミャアに護衛をさせることには抵抗があった。しかし子猫ほどの大きさだったクウガは中型犬ほどの大きさまで回復しており、しかもクウガから聖獣の加護を受けたことでミャアの持つスキルは探知スキルを含め飛躍的に向上し、元々凡人のマルコでは足元にも及ばないほどになっている。


 …心配、なんだがなぁ……


 とはいえ今のミャアなら一方的に探知してモンスターに気付かれる前に逃げることが出来る。仮に気付かれたとしても確実に隠密スキルでやり過ごすことが出来る。

 クウガが言っていたようにマルコが過保護なのかもしれない。


 ……はぁ…


 急な成長に戸惑い、マルコは少しミャアとどう接すればいいのかわからなくなりかけていた。


「だいぶ水少なくなりましたね。」


 そんなマルコの気持ちを知らずか、ミャアがひょこっと大釜を覗く。

 ミャアの言う通り、海水は当初の10分の1くらいまで減り、色もだいぶ濁っていた。


「そうだね。そろそろ一回濾過しようか。」


「はいっ! お手伝いします!!」


 マルコはミャアに手伝ってもらいながら、炭やボロ切れで予め作っておいた濾過器を使い濾過する。


「…これが塩…ですか?」


 ミャアが濾過器や大釜に残った白い物体を目に、不思議そうに訪ねてきた。


「いや、これは石膏だよ。」


「石膏…?」


「塩より石膏の方が水に溶けにくいから、こうして煮詰めてやると先に固まるんだよ。」


「なるほど… マルコ様、これどうしましょうか?」


 集めた石膏を手にミャアが訪ねてきた。


 今回は塩が欲しいのであって別に石膏は要らないが…いや……


「家の竈は石を積んだだけだから石膏で固めてもいいし、耐火性の素材が手に入ったら混ぜて家の中にキッチンを作ってもいい。とりあえずすぐには手が回らないけど残しておこうか。」


「はい。わかりました。」


 マルコに言われ、ミャアが石膏をバケツに移す。


「さて、それじゃあ今度はこの濾過して綺麗になった海水から塩を取ろうか。」


 マルコは濾過を終えて澄んだ海水を鍋に移す。もちろん塩は大量に欲しいので再び大釜にも新鮮な海水をなみなみ注ぐ。


「ずいぶんと器用なのだな。」


「ん?」


 気付くとクウガも興味深げにその様子を眺めていた。


「鍋と大釜に火魔法、さらに両方ともに錬金術スキルだろ?」


「ああ、その事か。あいにく魔法の才能はなかったからこういった小手先の技術を身に付けたんだよ。」


 魔法の適正があればとても簡単なことだ。だがそうでないなら、同時に複数の魔法を使い、さらに別のことをするのはかなり技術の要ることだ。

 とはいえ鍛練を積み、技術さえ身につければ出来ないことではない。


「そうは言うがそれを身に付けるのは並大抵ではないだろ?」


「ありがたいことにこれでも貴族だからな。体面のためとはいえ学園に通わせてもらえたから、挑戦と失敗はいやと言うほど出来たんだよ。」


 貴族で学園に通わないのはよっぽどの馬鹿か金がない場合だけだ。両親からすればマルコを学園に通わせたかったのではなく、子供を学園に通わせない親になりたくなかっただけだった。

 とはいえ教授陣は真面目に指導してくれたし、学園に通ったことはマルコにとってなくてはならない経験となっている。


 いずれはミャアにも学園に通わせてあげたいな。


 マルコが通った学園は貴族の子息令嬢が通う学園なので身分制がある以上無理だが、それ以外に王都にはいくつもの学園がある。

 むしろマルコが通った学園は政治学がメインであったが、それ以外にもミャアの才能にあった学園や成りたいにあった学園はきっとあるので好きに選んでもらいたい。


 そうなると… 学費、寮費…うっ頭が……


 すぐにというわけにもいかないが、金を稼ぎ貯めることも考えないといけない。


「どうかしましたか?」


 ミャアが少し心配そうにマルコを見つめていた。


「いや、なんでもないよ。それよりそろそろ煮詰まってきたから気をつけてね。」


 鍋の方がだいぶ煮詰まり、塩が結晶化してきたのでかなりはねる。


 水分も少なくなってきたし、そろそろかな。


「それじゃあもう一回濾すから、ミャア手伝ってくれるかな?」


「はいっ!」


「? そのまま煮詰めて水気を飛ばしてやればいいのではないか?」


 クウガが不思議そうに聞いてきた。


「いや、にがりといって塩以外の苦味成分がまだ水の方に溶けているから濾過して結晶化した塩だけ集めた方が美味しいんだ。」


「なるほどな。」


 そんなことを話しつつ、再び濾過する。集まった塩は今日は天気もいいし、このまま干せばすぐに乾きそうだ。


「あの、このにがり?ですか? どうしますか??」


 瓶に集めたにがりを手にミャアが訪ねる。


 …う~ん……


「一応、泥水に混ぜると泥を沈殿させる効果はあるんだけど…」


「そうなのですか?」


「ああ、ほら、すごく汚れた河の水が海に流れ込んでも海が綺麗なのは、海水にこのにがりが含まれているからだし…」


 とはいえ、ぱっと使い道は思い付かない。


「とりあえず、何かに使えるかもだし取っておこうか。」


「はいっ!」



 そして1日塩を作り続けたマルコたちは、錬金術スキルの効果もあってか、目的通り大量の塩を手に入れたのだった。

ブクマ、評価、いいね、ありがとうございます。

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