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 モンスターズナイトの夜が明けた。


「ふぁあぁ……」


 マルコは1つ大きなあくびをする。

 いくら聖光木の家ならば大丈夫だろうとはいえぐっすり熟睡することも出来ず、結果マルコが眠りについたのは明け方、モンスターたちが引きだしてからのことだった。


 …眠い。とはいえ、な……


 マルコは窓の外を眺める。昨夜と比べればほとんどいないと言えるが、普段と比べればまだかなりの数のモンスターが徘徊していた。


 なるほど、ここうやって野良モンスターは増えているのか。


 ダンジョンの外では繁殖せず、モンスターズナイト以外では外に出たのはそれこそ伝説とされつつある魔王の襲撃くらい。そんなモンスターが野良化するのをマルコは今実際に見ている。通説通りではあったが、ここからさらにモンスターズナイトでダンジョンから出たモンスターの内のどのくらいの割合が野良化するのか、どういった個体郡が野良化するのか、そんなことを調べてまとめればマルコは学会で称賛されることになるだろう。


 ロレンソの悔しがる顔が拝めそうだが……そうも言ってられないな。


 このままでまともに外へ出られない。とにかく今は駆除を優先すべきだろう。

 マルコは剣を腰にはく。


「ミャア、俺は少し外のモンスターを狩ってくるからお留守番お願いしてもいいかな?」


「ミャアも戦えます! 手伝います!!」


 マルコはミャアに留守番を頼むがミャアは焦ったように言い返してきた。

 確かに獣人種は戦闘能力が高く、マルコのような人間種の90点100点クラスの戦闘能力であれば素で超えてくる。

 とはいえそれは大人の話。ミャアはまだ子供でステータスは低く、何より役に立つことに焦って心に余裕がなくて危なっかしい。


 でも、な……


 戦闘には参加させたくないがかといってなにもさせずに留守番をさせれば余計に精神的に追い込みはしないだろうか?


「…なら、ミャアは家の周囲を警戒してもらえるかな?」


「でもっ!!」


 言い方を変えただけで留守番と変わらない。そう感じたのかミャアは力強く反論しようとする。


「ミャア、しっかり聞いて。昨夜の件でわかったけどやっぱりモンスターは聖光木には近付かないみたいだ。だから俺はヤバくなったらすぐに家に逃げ込むつもりだ。」


「……」


「ミャアが家の周りを警戒してくれれば俺は目の前の敵に集中できる。ミャアには退路を、…背中を預けようと思うんだけど、ダメかな?」


「っ! 任せてくださいっ!!」


 最初は納得しなかったミャアだか背中を預ける、という言葉に喜んで返事をした。




 数時間後。

 狩りは順調に進んでいたがマルコの心は晴れなかった。


 …あれでよかったのだろうか……?


 マルコを悩ませるのはミャアのことだ。

 先程は詐欺師のように言い方で誤魔化しただけだ。根本にある役にたたなければならないという脅迫感や命令されて束縛されていないと感じる不安を解決したわけではない。


 ミャアが元居たバルドル教の教義には人間以外の種族は全てが邪悪であり、人間に尽くすことで来世は人間に生まれ変わることが出来るという教えがある。

 そのために魂の浄化という名目の元に奴隷狩りが行われ、文字通り死ぬまで酷使されているという話だ。

 マルコがその話を聞いたときは、非道を正当化するための都合の良い物に感じていた。しかし奴隷の中でも心の折れた者や物心ついた時から奴隷でだった者はこの教えにすがるとも聞いたことがあった。


 …どうしたものか……


 ミャアの出来ることを増やして自分で今何をやればいいのかを判断出来るようにすれば、命令を必要とすることはなくなるだろう。

 幸いにもマルコは器用貧乏を自称できる程度にはあらゆることを極めている。そのため教えてあげられることは多い。

 だが食料は多くても保存のための方法を何とかしなければならない。モンスターの方もモンスターズナイトが起こる度にこの有り様だと生活にならないのでダンジョンを何とかしなければならない。

 いや、それ以前にマルコはミャアが歳相応に遊んでいるところを見たことがない。自由時間に好きに過ごさせても大人しくしているだけ。それはのんびりするのが好きという感じではなく、こちらを気にして邪魔にならないようにしている感じだ。


 くそっ……!!


 安全と安定が確保されておらず、人手も時間も足らない。


「マルコ様っ!!」


 ミャアの声で我に返る。

 数匹のゴブリンたちに裏回られ退路を断たれようとしているところだった。


「くっ… ファイヤーボール!!」


 魔法を唱えてゴブリンたちを蹴散らしたマルコは、ミャアの手を取り家へ入る。

 それでモンスターたちは追ってこなくなる。息を整えたり、ポーションを飲んだり、少し時間を置けばまた散っていくだろう。


「ありがとう、助かったよ。」


「い、いえ、ミャアは言われたことをやっただけで…」


 そういいつつもミャアははにかみ笑う。


 パンっ!


 マルコは気合いをいれるように自身の頬を叩く。


 なにやってんだ、自分は!


 器用貧乏なことは自覚している。なら考え事をしながら片手間で何かをなせるわけがない。

 まずやるべきは安全を確保することだ。



 その後黙々とモンスターを駆除し、日が真上に登る頃には家の周囲からモンスターはいなくなった。

 しかしそうしてマルコたちが目にしたのは、無惨にも荒らされた畑の姿だった。

ブクマ、いいね、ありがとうございます。

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