表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

88/89

英雄

 時計の針が十二の文字に差し掛かり、各地に異変が起き始めた。


 魔力が消失し、王都に聳え立つ王城は音を立てて崩れていった。

 それだけではない。魔力の消失により魔道具の一才が鉄屑と化した。電気は消え、通信は途絶え、物流は滞り、世界中がパニックへと陥った。


 回復魔法が使えなくなった事により、治療中だった多くの患者が死に絶え、その犠牲者は数百人に及んだという。そしてその数はこれからも増え続ける。


◆◆◆◆◆


 それから数日、私とナルヤはどこかも分からない平原を歩いている。


 今は国の追手から逃げると共に、立ち寄った町村で復興の手伝いをする日々。国もナルヤを追いかけるどころじゃないから、暫くはこの生活を続けられそうかな。


 前を行くナルヤの後ろ姿を見たら考えちゃう。もし彼ではない誰かと旅をしていても、こんな結末になっていたのかなって。


 多分違っていたと思う。どこまでも誰かを守る事に真剣で、その為の努力を惜しまない。そんな彼が、他の多数ではなく、私だけを選んでくれた。


 自分が死ぬしかないと思っていた私に、生きていて良いんだと言ってくれた。…………それに本当に救われた。


 きっと多くの人は認めないだろう。彼自身もそれを認めないだろう。でも、彼がそうしてくれたように、私が何度でも肯定する。彼こそが……


「ナールヤ!」

「ん? 呼んだ?」


 私が呼びかけるとナルヤは振り返った。そんな彼に、私はとびっきりの笑顔で言う。


「ありがとう────私の英雄」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ