85 ミユキ
「ミ……ユキ……」
消えそうになる意識をなんとか繋ぎ止めながら、ナルヤは腰に付けた剣を引き抜き、よろよろと立ち上がった。
魔剣により体はボロボロになり、さっきの激闘によって精神的にも疲労が溜まっている。
剣を松葉杖代わりにしなければ、歩く事もままならない。
そんな彼を突き動かすものは、ミユキへの想いのみである。時間が残りどれだけあるかは分からない。だが、世界を治療する程の魔法の発動を、間近にいるナルヤが感じ取れない筈はないだろう。
まだ儀式が開始されていない事を信じ、ナルヤはルイが降りてきた階段へと向かった。足元がおぼつかず、まともに歩く事すら出来ない。
剣に体を預けながらも、一歩一歩と前に進んでいく。
階段を登り切ると、大きな扉が見えた。
「ここ……なのか?」
ナルヤは扉に体を預け、無理矢理押し開ける。今のナルヤには、普通に扉を開ける力すら残されていないからだ。
ギギギと音を立てた扉は徐々に開いていき、開き切ると共に倒れ込んだ。
「ナルヤ……」
聞き慣れた声が耳に入る。ナルヤはゆっくりと顔を上げた。
「ミユ……キ」
そこには最愛の人。複雑そうな機械の上に設置されたガラスケースの中に入ったミユキがいた。
カウントダウン
10minutes




