82 魔王vs勇者
「なんでテメェは毎回毎回、あたしの邪魔をすんだ!」
「理由はないさ。ただわたしの野望の前に君がいるだけの事」
「ああそうかよ!」
二人の攻撃をいなしながら、ザイは次なる策を巡らせていた。
あくまでナルヤの元へ行かせないのが条件な以上、彼女達を倒す必要はない。後は彼がやってくれる筈である。
「ならばこれを試してみますか」
ザイは距離を取り、両手で何かを掴む動作をした。そこから黒い槍のようなものが現れる。
「ダークネスランス」
「テメェも武器を出しやがったか」
こういう戦闘は得意ではないが、人数不利のこの状況では仕方がない。
「さあ、本当の戦いはここからです」
「上等だ!」
「絶対に突破してやるぜ!」
◆◆◆◆◆
「ダークネスエッジ」
闇の刃を繰り出したナルヤは、城を守護していた兵隊を次々と切り倒した。一応死なないようにはしたつもりだが、もしかすれば死んでしまった者もいるかもしれない。
さっきから何人も斬っているものの、この感覚には未だに慣れない。一昨日までは、人を殺す戦いをするなんて考えもしなかった。今も逃げられるなら逃げたい。
だが、逃げればミユキが死んでしまう。ならば進むしかない、例えどれだけ罪を重ねたとしても。
階段を登ると、その階一帯に広がる巨大な部屋へ辿り着いた。確かここは、何か偉大な事を成した者を表彰する為の部屋だ。グランドマジックもここで表彰される筈だった。
王や家臣等は退避しただろうが、儀式は二十四時前になると自動的に開始されるらしい。つまりミユキはまだ城内に残っている。
だがこの部屋にはいないようだ。もっと上の階か、もしくは地下か。
その答えを表すように、一人の人物が上から降りて来た。魔剣と対になるデザインをした二つの剣を腰に携えた金髪の男である。
「待って……はいなかったかな。ここに来ない事を願ってた」
「ルイさん。やはりあなたはここに居ましたか」
勇者ルイ。王国最強の剣士にしてかつての憧れ。一応グランドマジック一回戦で勝利してはいるが、あれは彼の全力ではない。
大方、ミユキを奪ってしまうのだから勇者の座は譲ろうという考えなのだろう。本当に優しい人である。
「ナルヤ君、今引き返せばそこまで大きな罪にはしない。国家反逆罪として牢には入れるが、刑が最小限になるように交渉しよう。約束する」
つまりこれ以上進めば容赦しないという意。彼からの最後の情けだ。だが、ナルヤに引き返すという選択肢は残されていない。
「すみませんが遠慮させてもらいます。行かなければいけない場所があるので」
「…………そうか。ならば仕方ない」
ルイは剣を手に持った。彼が元々持っていた聖剣と、ナルヤから回収した聖剣だ。
二人は武器を構え、お互いに睨み合う。
「「はぁぁぁぁぁ!」」
そして勇者と魔王、二つの力が今激突した。
カウントダウン
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