80 戦争
闇魔法により身体能力が上がったナルヤ達は、三時間程で王都近くの山頂まで移動した。まだ遠目だが、城壁の辺りにかなりの数の人が見える。
「王城には魔力を探知するレーダーがある。それで察知されたのだろう」
「なら我等が有象無象を引き受けよう。ナルヤは周り道で先に進むがいい」
「ふむ。直接手を下せないのは惜しいが、それが一番得策だ」
「分かった。三人とも頼む」
◆◆◆◆◆
「我は、魔王軍幹部ザードである! どれだけでも相手をしてやる。かかってこい!」
敵陣のど真ん中に立ったザードが冒険者と騎士団の注目を集める。
「やれー! 魔王軍だ!」
「ぶっ殺してやる!」
「賞金は貰った!」
見事に釣られ、敵の視線はザード達に向いた。その隙にナルヤは反対に移動し、裏から一点突破を狙う。
裏にも人手はいるものの、主戦力が正面に引きつけられているため、ナルヤの進撃を止める者はいない。
(時間はない。悪いが最速で通らせてもらう)
「ダークネスオーバーランス」
頭上に巨大な漆黒の槍が現れ、それを城壁にぶつける。見事に壁が崩れ去り、豪勢な都の中が露わになった。
「ダークネスドライブ」
闇を纏い、超速で突撃する闇魔法だ。その突撃を止められる者は居らず、兵士達を薙ぎ倒し進んでいく。
このまま進めば簡単に城内に……
「像炎剣!」
突撃するナルヤの前に炎で作られた像が形成され、ナルヤを阻んだ。そして魔法の主が立ち塞がる。
「……ユノ」
「悪いがここは通せねぇ。出直してくんねぇか?」
「それは出来ない相談だ。無理矢理にでも突破させてもらう!」
「円炎剣」
炎がナルヤを囲い、逃げ場を無くす。昔はよく苦しめられていた。だが今は違う!
「はあっ!」
ナルヤは両手に持つ魔剣で空を切る。すると黒い風が巻き起こり、たちまち炎を消していった。
「だがこれで魔法は使えねぇ! 空炎剣!一点集中バージョン!」
「いいや、さっきのは魔法じゃない。ダークネスオーバーリバース」
闇に覆われた鏡のようなものが出現し、空炎剣を吸収する。
「発射!」
その言葉と共に、さっき吸収された空炎剣がユノへと返された。
「ぐっ!」
ユノはなんとか剣で逸らし、ダメージを最小限に抑える。
「炎斬剣!」
「ダークネスオーバーバースト」
ユノの着地と同時に、二人は魔法を放つ。だが、力の差がありすぎた。ナルヤの放った闇は炎ごとユノを飲み込み、近くの家屋へと打ちつけた。
「今度こそ」
「いーや。俺を忘れてもらっちゃ困るぜ!」
後ろに振り返ると、赤髪の男が見えた。ナルヤの元同僚、マルクスだ。
カウントダウン
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