79 覚悟【ユノ】
『王都にいる全民に告ぐ! 魔王が復活し、王都に侵攻中! 武力を持つ者は城壁の防衛、持たない者は避難を開始せよ!』
緊急時のみ使用される国王通信である。それを聞いたユノは、戦闘の準備を始めた。風龍といい魔王といい、最近はビッグイベントがよく起こる。
前はナルヤがなんとかしていたが…………
準備を済ませたユノは隣にあるナルヤの部屋を開けた。まだ戻っていないようだ。
昨日、結局修練場にナルヤは現れず、宿に戻った時には居なくなっていた。今どこでどうしているのか。心配だが、探しにいく暇はない。
相手は魔王。人類の最大の仇敵だ。それを倒したのならまさしく英雄。案外、城壁の前で鉢合わせるかもしれない。
それにしても、このタイミングで復活するとは魔王も運が悪い。今王城を攻撃すれば、被害を受けるのは魔王の方だ。
魔王の力は強大だが、その源はほとんどが魔力。魔力が消えれば、ただの魔族と大差ない。復讐でもない限りここを襲うメリットはない。
だが、復讐目的で襲ってきているのなら全力で防がねば……いや、もう一つ可能性がある。
前にナルヤが言っていた。ザイの目的は、魔王の力を手に入れる事ではないかと。そしてそれにはナルヤの力が必要だと。
「まさか!」
浮かんだ一つの可能性。だが状況証拠から考えると、これが最も納得がいく。今侵攻している魔王はもしや……
「ナル……ヤ?」
もし本当に彼だとしたらどうすれば良いだろうか。自分は彼を切れるだろうか。
今までのような模擬戦ではない。今から行われるのは殺し合いだ。もし彼がミユキを取り戻す為に魔王となったのなら、自分は…………
戦うしかない。ナルヤもミユキも、ユノにとって大切な人物だ。だが、それ以上に大切な人がいる。
「ユウ!」
ユウの呪いを解くには、魔法の力を頼るしかない。だからこそ、今魔力に消えられる訳にはいかない。
(例えアイツらを殺す事になったとしても。あたしはユウを守り抜く!)
カウントダウン
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