7 栄光の兆しと倒産の兆し
「あなたに将来の夢はありますか?」
「えっ英雄になることです」
神父からの突然の問いに慌てて答えるナルヤ。それを聞いた神父はニヤリと口を歪める。
「英雄、つまり勇者になりたいってことですね」
「ま、まあそんな感じです」
実際は勇者となる事がゴールではなく、勇者として皆を守る事が夢なのだが、細かい事なのでツッコまないことにする。
「なら是非今すぐ勇者になりなさい、グランドマジックまでまだ時間はあります、今すぐ予選会場へと向かうのです」
やたらと早口で催促する神父。その理由は、そのすぐ後に明かされた。
「あなたが勇者になれば、それを見出した私の評価は鰻登り。いやー人生って素晴らしい」
「聖職者なのにバリバリ欲ありますね」
「まあスキルが人柄まで決める訳じゃないからね」
ミユキの言葉にナルヤは苦笑する。ナルヤにとっての聖職者のイメージがどんどん変わっていく。
「ということで今すぐグランドマジックに「お断りします」そうそうお断りって……えっ⁉︎ 今なんと」
「お断りします」
「あなたは勇者になりたいんですよね? ならなんで」
「約束したんです、ミユキと旅に出るって。だから今すぐには出られません」
「私はいいけど」
「いいの⁉︎」
「旅の目的を、ナルヤが勇者になることにすればいいだけでしょ?」
「いや、元の目的はどうするんだ……ってそういえば旅の目的って何?」
「ないけど」
「ないの⁉︎」
では何の為に旅に出るのか。謎は深まるばかりである。
神父はナルヤの混乱など気にも止めず、「進級だ! 進級だ!」とはしゃいでいる。
「本当にいいの?」
「全然大丈夫だよ。なんなら旅に良い感じの目的が出来てラッキーって感じ」
「ありがとうミユキ」
「そうと決まればすぐに旅の支度をしてください。万が一にも出場出来ないなんてことがないように。ね! ね!」
「わ、分かりました……」
神父の圧から逃げるように、ナルヤ達はそそくさとその場を後にした。
その帰り道。たまたま通った魔道具屋のショーケースに、新商品が二つ飾られていた。
その説明にナルヤは驚愕する。
「嘘……だろ」
「解体マンとモンスターバスターXだって、何か凄いの?」
「まずモンスターバスターだけど、どんな人でも買える値段なのに、威力は最上位のモンスターバスターと変わらない。それに解体マン、今まではモンスターの解体は専門の業者に頼まないといけなかった。でも、これはその作業をこの道具一つでこなせるらしい。しかもこれも安い。従来ではありえないコストパフォーマンス、一体誰が……」
ナルヤは作者名を見る。意外なことに、二つとも同じ製作者のようだ。
「ザイ……この人がこれを作ったのか」
「ナルヤ、完全に自分の世界に入ってるね」
これが冒険者時代にあれば、どれだけスムーズに依頼をこなせただろう。後始末もギルドに頼む必要が……。とんでもない考えに至るナルヤ。
誰でもモンスターを簡単に倒す事ができ、その上後始末も魔道具が行ってくれる。つまり……
冒険者ギルド要らないんじゃ……
カウントダウン
29day