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74 ミユキの独白

 王城に設けられた部屋で待機しているミユキは、窓から夜空を眺めていた。


 やはり今日も眠る事が出来ない。最近はいつもこうである。眠ろうとすると、死への恐怖で寝付けなくなる。


 人肌に触れると幾分かはマシになるものの、それでも睡眠時間は三時間あれば良い方だ。


「ナルヤ……どうしてるかな?」


 空に浮かぶ月を見ながら、ミユキはそっと呟いた。


 さっきルイから聞いた事だが、ナルヤ達に全てを話したそうだ。一応国からは漏洩を禁じられているが、彼の良心がそれを許さなかったのだろう。


 ミユキは小さな村の出身である。同年代の人間はおらず、両親と村にいる老人達と過ごす日々だった。


 そんな生活が変わったのは十五になった時。【聖なる者:聖魔法】を授かり、それを理由に王城に呼ばれた時だ。


 両親は最初こそ反対していたが、最後は渋々了承した。そしてミユキは、残りの人生をどうしたいかという選択を迫られた。


 そこでミユキが出した答えが、旅をする事だった。ほとんど村から出た事がないミユキは、今から守る世界の事を知らない。死ぬ前にどうしてもそれを知りたかった。


 後は好きな本の影響もあるだろう。『白馬の勇者』のように、冒険したいという願望は昔からあった。


 ただ旅の仲間は慎重に決めなければならない。どうせなら自分の事情を全く知らない人と旅をしたい。しかし、その相手がもし悪党だったら。それを見極める事は出来るのか。


 それを話した時にルイから提案されたのが、白馬の勇者作戦だ。騎士団の人間にミユキを襲わせ、助けに来た人物に旅のお願いをするという作戦。


 しかし、こんな作戦が上手くいく筈もなく、時間を変え、場所を変え、町を変え行っても助けに来る人物は現れなかった。


 半ば諦めかけていた時、助けに来たのがナルヤだ。最初は強いスキルでも持っているのかと思ったがそうでもなく、足をプルプルと震わせながらも守ろうとした姿を見て、この人だと思ったのだ。


 まさか渡した聖剣のせいでスキルが発現して、勇者を目指す事になるのは予想外だったが。でもそのお陰で楽しい旅が出来た。


 風龍に襲われた時には死に物狂いで救ってくれただけでなく、ミユキを守る為に危険な賭けに出ようとまでしてくれた。


 予選の時には自らの殻を破って、一段とカッコよくなった。そんな彼に、自然と惹かれていったのかもしれない。


 でもミユキは振ってしまった。本当は側にいたかった。ナルヤとユノと、ずっと旅をしていたかった。


 でもそれが運命。ミユキが生きれば、何万人という人が死ぬ。世界中の人間が被害を受ける。もし自分一人の不幸でそれらの人が助かるのなら、ミユキは犠牲になる道を選ぶ。


 聖剣があればナルヤが負ける事はない。もしミユキが生きながらえば、聖剣は効力を失うだろう。そうなれば、二人の夢も叶えられなくなってしまう。それを守る為にも、ミユキは逃げる訳にはいかない。


「でもやっぱり…………」 

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