67 来訪者
「うっ……う……」
朝日に当てられ、ゆっくりと意識を起こす。ここは宿にあるベッドの上だ。そうか、さっきまで見ていたのは夢だったようだ。通りでおかしいと……
「ナルヤ! 目を覚ましたのか!」
ユノが声を掛け、焦った様子で近づいてくる。
「どうしたのユノ?」
「どうしたもこうしたもねぇよ! どうなってんだ一体」
「どうなってるって、いや、一旦落ち着こう。順序立てて話して」
詰め寄ってくるユノを静止する。彼女は落ち着きを取り戻したのか、深く深呼吸をした後、話を始めた。
「昨日騎士団を名乗る奴が、ボロボロになって倒れているお前を連れてきた」
「⁉︎」
「そして、『ミユキは国で預かる事になった』とだけ言って帰ってたんだ。あたしの言葉には一切反応せずな」
ユノの話を聞き、昨日の出来事が思い返される。アレは夢なんかではなかった。ミユキは、本当に……
「一体何がどうなってんだナルヤ。知ってる事を話してくれ」
「僕も……わからないんだ……」
コンコンコン
扉を叩く音が聞こえる。扉が少し震えている事から、叩かれているのはこの部屋の扉だ。
「俺だ。ナルヤ君、開けてくれないか?」
「ルイさん⁉︎」
ナルヤはベッドから飛び退き、すぐに扉を開いた。
「やあ、お邪魔するよ」
ナルヤに有無も言わせぬままに、一人の男を連れて入ってくる。大柄の男だ。
「自分、カルロスと言います。あの時は失礼しました」
「あの時……?」
ナルヤにこの男と関わった記憶はない。冒険者時代もこんなにガタイのいい男はいなかったし、その後も……
「まさか!」
そこで思い出す。確かに一度会っていた。面接の帰り道、悲鳴を聞きつけたすぐ後に。
「ミユキを襲っていた人……ですか?」
「ええ、その通りです」
「どういう事だ?」
とユノが聞いてくる。分からないのも無理はない。彼と会ったのは、ユノと出逢う前なのだから
「僕とミユキが初めてあった時の話はしたよね?」
「ああ、確か、ミユキが襲われてた所を、ナルヤが助けたんだろ?」
「その襲ってた人がこの人だよ」
「はあ⁉︎」
ナルヤも分からない。何故そのような人が、勇者と共に行動している。どうして……
ナルヤは思考を巡らせる。それを見てか、ルイが一歩前に出た。
「今日は君達に真実を伝えにきた。ただ話す前に問いたい。例えそれがどれだけ残酷な真実でも、知る勇気が君達にあるかい?」
ルイの言葉を聞き、二人は押し黙った。残酷な真実、彼がそう言うからには、それ相応の事実が突きつけられる筈である。それが何なのかは検討もつかないが、でも……
「聞かせて下さい」
「このままミユキと別れるなんざ。絶対にごめんだぜ」
「覚悟は決まったようだね。なら話そう。何があったのか、そしてこれから何が起こるのか」
カウントダウン
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