65 勇者
『二人の戦いはデットヒート! お互いに一歩も引かない激戦だぁ!』
「まさか生きている間にこんな戦いを見る事が出来るとは……」
「シャイニングソーサラー」
「シャイニングスラッシュ」
二つの斬撃がぶつかり、またも衝撃波が広がる。
「君との戦いは本当に楽しい。だが次で終わりにしよう」
言ってルイが剣を構えた。最初の同じ構えだ。つまり放つのはあの技。
「最後は真っ向からって事か。なら僕も、乗らない訳にはいかない」
これを躱して試合に勝っても、本当の意味でルイを超えた事にはならない。ナルヤもまた剣を構える。
二つの剣に光が集中し、眩く輝く。二人はそれを確認すると、勢いよく振り下ろした。
「「シャイニングブレイク!」」
奔流が再びぶつかり、眩い光を放つ。最初の挨拶代わりの魔法ではない。全身全霊をかけた、相手を倒す為の魔法である。
現状は全くの互角。この状況を打開するには、もう一押し必要だ。
「どうしたナルヤ君、君の力はこんなものじゃないだろう!」
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
更に力を増し、ルイの光を押し返した。光はルイを飲み込み、舞台端まで追いやる。
「今だぁ!」
最大のチャンス。これを逃さない手はない。ナルヤは勢いよくルイへと突撃し、一閃。ルイはそのまま舞台から落ちていった。
『ナイスファイトだぁ! この激戦を手にしたのは、ヘルイス代表、ナルヤ選手だぁぁぁ!』
『まさかあのルイ選手が敗退するとは。これは予想外の結果です』
ナルヤは剣を地面に刺し、それに持たれながら勝利の余韻に浸る。会場中から拍手が送られ、彼を祝福した。
そんなナルヤの頭に、ある疑問が浮かんだ。
ナルヤは舞台を降り、ルイの元へ向かった。彼は地面に敷かれているマットの上で寝そべっていた。ナルヤと違い、あまり疲れているようには見えない。
「ルイさん……どうして最後、手を抜いたんですか?」
「……気付かれてしまったか。出来るだけバレないようにするつもりだったんだけどなー」
ナルヤの思った通り、彼は手を抜いていたようだ。しかし何故? ただの組み手ならともかく、この舞台でそんな事する理由は……
ルイは立ち上がり、ナルヤの方へ向いた。
「俺に勇者をする資格なんてないんだ。これから国の未来は、君に託した」
「どうして⁉︎ ルイさんは立派な……」
それを言い終わる間もなく、ルイはその場を去っていった。
カウントダウン
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