64 ナルヤvsルイ
『一回戦第二試合に出場する選手は、入場ゲートまで移動して下さい』
「そろそろか」
ストレッチを終え、談笑していたナルヤだったが、アナウンスを聞き立ち上がる。時間だ。
「ナルヤ!」
それを見てか、ミユキが強めに声を上げ、ナルヤの前に移動した。
「いよいよだね。今まで色々な事があったけど、私、すっごく楽しかった。だから、その……ありがと。絶対に優勝してね」
「ああ、絶対に勇者になって、そして英雄になってみせる。それと……」
ナルヤはミユキを見つめた。思い付いたのはついさっきだ。少し恥ずかしいが、意を決して言う。
「この戦いに勝ったら、伝えたい事がある。町の外れにある、結縁の丘まで来てくれないか?」
「えっ……ナルヤそれって!」
結縁の丘は恋が成就すると言われている恋愛スポット。流石のミユキもその意味が分かったらしく、珍しく狼狽えている。
「それじゃあ行ってくるよ」
剣を持ち、入場口へと向かう。負けられない理由が一つ増えた。この戦いは、絶対に負けられない。
◆◆◆◆◆
『さあ、両者入場です』
実況の言葉で、二人は舞台へと上がった。心臓がバクバクと鳴っている。
目の前にいるのはかつての救世主。ナルヤは彼を見て英雄に憧れ、この十二年間を過ごしてきた。今その人物と、剣を交えようとしているのだ。この緊張は、今までの比ではない。
「楽しみにしていたよ。君と戦える日を」
「それは僕の台詞です。あなたと戦えるなんて夢みたいだ」
お互い剣を構える。
『試合開始です!』
「「シャイニングブレイク」」
光の奔流が双方から放たれ、ちょうど中庸の地点でぶつかる。凄まじいその輝きに、観客の誰もが目を押さえた。
ナルヤは体勢が整うや否や、すぐに追撃を仕掛けた。が、それは相手も同じ。二人は剣をぶつけ合い、至近距離での斬撃戦へと移行した。
相手は十年以上勇者をしているベテラン。だがナルヤも、十二年間剣を振り続けた。魔法を使わない剣術であれば、ルイよりも経験している。
剣を、拳を、足を使い、攻撃を仕掛けるが、お互い有効打は出ない。距離を取った方が有利だと判断したのか、ルイが後ろへと下がった。
その隙を逃さない。
「シャイニングスラッシュ」
ナルヤが光の斬撃を放ち、ルイの元へと向かう。それが直撃し、ルイは大きくのけぞった。
「それを食らってもそれだけか」
とは言え、ダメージを与えられたのは事実。戦況はこちらの有利である。再び追撃を仕掛け、また剣を交わらせた。
カウントダウン
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